3・11反原発行動へ福島からの訴え① 闘いはこれからが本番だ

週刊『前進』04頁(3182号03面01)(2021/02/15)


3・11反原発行動へ
 福島からの訴え①
 闘いはこれからが本番だ

 3・11反原発福島行動が郡山市で行われます。原発事故から10年が経ち、核惨事の深刻な現実が一層明瞭になっています。「復興五輪」など許せません。福島からの訴えを3回にわたり掲載します。(編集局)

ふくしま共同診療所院長
 布施幸彦さん

 2019年12月に中国で始まった新型コロナが全世界で猛威を振るっています。世界の感染者は1億人を突破し、死者も200万人を超えました。日本でも感染者40万人超、死者6千人超。第1波に比べ第3波では桁違いに感染者が増えています。日本の医療体制も崩壊状態。入院先が決まらず自宅待機している人が3万人以上います。
 このコロナ禍で、菅政権は政府の追悼式を「10年を区切り」として今年で取りやめ、内閣の基本方針から「震災からの復興」と「福島原発事故」を削除しました。「脱炭素」のためとして原発の再稼働を狙い、「コロナに打ち勝った証として五輪を開催する」と宣言。福島を切り捨て、原発再稼働とオリンピックを強行しようとしています。

甲状腺がんが多発

 東日本大震災と福島原発事故から10年。何も終わっていないし、むしろ問題は山積しつつあります。多発する小児甲状腺がんやさまざまな健康被害、増え続ける汚染水と海洋投棄の策動、「年間20㍉シーベルト以下は安全」という根拠のない基準での「強制帰還」、五輪に間に合わせるためのJR常磐線全線開通、帰還困難区域の除染なしでの避難指示解除、避難住宅の強制退去に応じない住民への県による親族を使った脅し、福島県内の各自治体が避難者とする総数は少なくとも6万7千人超。多くの人が裁判で闘っていますが国や東電は責任を認めません。これが10年経った福島の現実です。
 被曝による最大の健康被害は小児甲状腺がんの多発です。今年1月15日の県民健康調査検討委員会の発表では252人が甲状腺がんの疑い、そのうち202人が手術でがんと確定しています。また事故当時0歳と2歳だった女児2人が甲状腺がんと診断されたことも分かりました。この他にも、経過観察に回された「甲状腺がん予備軍」の人たちはすでに4千人を超えており、この中から何人ががんになったかはほとんど公表されていません。
 検討委員会は小児甲状腺がんの多発に関して「被曝によるものではない」と強弁し、委員の一部は「過剰診断」論を唱え、「学校検診がその元凶」と、学校検診の中止を画策しています。昨年度の学校での甲状腺エコー検査は、コロナを理由に対象者が約9万人から約2万人に減らされ、検査の「お知らせ文」に「検査のデメリット」が記載されました。県の担当者が小中高校合わせて28校を訪問し、検査現場の視察や学校担当者から聞き取りを行い「検査縮小」の口実を探っています。学校での甲状腺エコー検査の縮小は絶対に許してはいけません。

世界の人々と共に

 昨年の3・11反原発福島行動もコロナ禍の中での開催でしたが、今年は緊急事態宣言下での開催となるかもしれません。昨年は開催するかどうか悩みましたが、今年はどんな事態であろうと開催します。この1年間コロナ禍の中で多くの闘いが起こりました。アメリカを始め全世界で吹き荒れたBLM運動、フランスの医療労働者や全米看護師連盟の闘い、ロシアの反プーチンデモ、日本でも船橋二和病院労働組合が「医療は社会保障だ」と訴えストライキを行いました。
 コロナ禍の中でも感染者や労働者の命と生活を守るために、新自由主義・新型コロナ禍と闘っている全世界の人々と共に、ソーシャルディスタンスを取りながらマスクをしながら、声を上げ続けなければならないからです。しかし、体調が悪い人、コロナが心配な人は無理しないでください。まず自分の体を守って下さい。そして仲間の体と運動を守りましょう。
 闘いはこれからが本番です。ふくしま共同診療所は、その一翼を担って闘っていきたいと思います。

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ふくしま共同診療所とは

(写真 ふくしま共同診療所。写真下は診療所内)

 ふくしま共同診療所は2012年12月1日に開院した。それは放射線被曝から住民の命と健康を守るために始まった。
 11年3・11福島原発事故は大気中と海洋に膨大な放射性物質を放出し(現在も続いている)、子どもたちを始め福島県民の命と健康に深刻な被害を及ぼし続けている。これに立ち向かい「福島の子どもたちの命と健康を守ろう」と福島の人たちを中心に全国に基金が呼びかけられ、趣旨に賛同した医師・看護師・スタッフが参加して共同診療所が生まれた。
 共同診療所は「原発事故による健康被害はある」として、「避難できる人は避難を、保養にいける人は保養を、それが無理な場合は医療を」の「避難・保養・医療」の原則を掲げて地元の人たちに寄り添って活動を続けている。
 さらに共同診療所は、避難者が住む仮設住宅で健康相談を行い、全国を駆け巡って「ふくしま共同診療所報告会」や講演会で福島の現状を伝え支援・団結を訴えている。国際的な結び付きもめざして韓国やドイツの医師たちとも交流し、これまでに数回の「国際シンポジウム」を開催して大きな反響を呼んでいる。

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