墨東病院を守れ!講演集会 医療破壊と労組つぶしの独法化

週刊『前進』04頁(3182号02面04)(2021/02/15)


墨東病院を守れ!講演集会
 医療破壊と労組つぶしの独法化

(写真 北健一さんが公立病院の独法化の問題点をえぐる講演【2月5日 東京・江東区】)

 2月5日、江東区の森下文化センターで、「墨東病院を守れ!小池知事は都立病院をなくすな2・5講演集会」が開催された。コロナ緊急事態宣言の渦中であったが、地域住民をはじめ七十余人の参加者が講師のジャーナリスト北健一さんの話に真剣に耳を傾けた。
 北さんは、独法化された大阪府、神奈川県の実態や医療現場の過酷な状況について明快に講演された。
 大阪府では2006年、都道府県立病院としては初めて五つの府立病院が独法化された。これは「成功モデル」とも言われたが、収支改善の理由は「業務運営の改善及び効率化」という名での大幅な人件費削減による「成果」だった。
 5病院を運営する地方独立行政法人・大阪府立病院機構の内部文書は「医師、看護師は聖域としてきたが看護師については生産性が低い」と職員数の削減を正当化し、職員給与比率(医業収益の中で職員給与費が占める割合)は下がり続けている。19年には12億円もの残業代未払いが判明し、府立病院機構は約3千人に支給したという。他方、患者の入院単価は直営最後の05年の3万7116円から18年度には6万5743円と、ほぼ倍増したという。独法化の本質が労働者と住民への矛盾の押しつけであることが明らかとなった。
 昨年12月に吉村洋文大阪府知事は「医療非常事態」を宣言し、現在も厳しい状態だ。医師・看護師の圧倒的不足は、医療・福祉などの自治体行政を「改革」の名で破壊してきた結果だ。
 墨東病院は、大病院が少ない東京東部地域で住民が安心して受診できる総合病院であり、貧しくても「墨東なら診てくれる」「保証金がなくても入院できる」と信頼されてきた。集会参加者からも「独法化後の医療費負担の増加や患者の選別が懸念される」という声が上がった。
 01年の小泉政権以降、政府は社会保障「構造改革」として国民健康保険の「都道府県単位」への再編をはじめ、病院(病床)の削減を進め、19年9月には424(翌年440に増加)の公立・公的病院等の統合・再編を求めるとして病院名を公表し、20年9月までに結論を出すように要請した。東京都は都立神経病院を含め10病院が指名されている。国の医療費削減政策を背景に公的病院では再編整備や業務委託が推進され、民間大病院も含め受診抑制のための初診料増額も実施されている。
 新自由主義が推進した医療・福祉の破壊、行政の民営化、そして都立病院独法化に反対する闘いは、労働者人民の命を守る闘いだ。
 また、都立病院約7千人の職員の多くは都庁職(東京都庁職員労働組合)に組織されている。独法化は、00年に清掃事業が都から区に移管されたことによる組合員約1万人減に続く都労連・都庁職に対する組織破壊攻撃でもある。
 質疑応答では多くの参加者から質問や意見が出され、議論が深められた。
 最後に、多摩連帯ユニオン根岸病院分会長の徳永健生さんが「都立病院なくすな2・21集会&デモ」への参加を呼びかけ、大きな拍手で確認された。
(集会実行委員会・吉澤類)
このエントリーをはてなブックマークに追加