3・11反原発行動へ福島からの訴え③ 子どもの未来奪わないために 福島診療所建設委員会代表 佐藤幸子さん

週刊『前進』04頁(3184号03面01)(2021/03/01)


3・11反原発行動へ福島からの訴え③
 子どもの未来奪わないために
 福島診療所建設委員会代表 佐藤幸子さん


 東日本大震災から10年の節目の年、私は3・11以前の生活へと戻すため、昨年11月から少しずつ荷物を運んでいました。引っ越し先は、震災前、研修施設として使っていた飯野町の築50年の平屋です。

自然界からの警鐘

 2月13日、最後の荷物を車に積み込み、午後10時過ぎまでかかって掃除を済ませ自宅に到着したのが午後11時。まきストーブに火を入れ、知人にメールを送信しようとしたその瞬間、ドーンと縦に揺れて、明かりが消えました。左手に携帯を握りしめたまま、右手でカラーボックスを支えていました。携帯からは緊急地震警報が鳴り響きました。縦揺れの後の横揺れがいつもより長く、10年前が頭をよぎりました。
 揺れがようやく収まり、情報を得るために携帯はテレビ受信機能に切り替えました。「震源地福島県沖、マグニチュード7・1、震度6」の声に体が震えました。その後「マグニチュード7・3、東日本大震災の余震」との発表に愕然(がくぜん)としました。
 昨年2月12日にも福島県沖震源地、震度4の地震が起こっていたことをすぐ後「前進」に書きましたが、それも余震だったのかもしれません。10年経っても余震と呼ぶのかと思いましたが、地球誕生からの歴史を考えると10年など一瞬に過ぎません。地球誕生から現在までを24時間に例えるなら、人類発生は23時59分だと言われていますから。わずか1分の間にとんでもないことをして来たのが人類の歴史なのだと思います。
 その行いに対して反省も改善も何もしない人間に対しての警鐘を、自然界は次々と目に見える形であらわしてくれていると思えるようになったのは、自然を相手とする農業に身を置くようになってからです。
 植物や動物がどうやって命をつなぎ、どういう状態の時に病気になるのか。それには、目には見えない微生物が大きく関わっていることを学んだ3・11以前の30年間でした。
 コロナ禍の1年でもあった2020年。オリンピックが延期になり、今年は「世界がコロナに打ち勝った証しとしてのオリンピック開催」などと明言している菅首相。誘致の際、福島第一原発の状況は「アンダーコントロール」と大うそをついた安倍前首相。どちらも、自然を人間がコントロール出来ると勘違いしての発言です。自然を人間がコントロールするなど、45億年経っても不可能です。

過ちを繰り返すな

 目に見えない微生物、菌、植物、虫たちは自分たちが生き残る為に人間よりもはるか昔から環境の変化に適応してきたのです。たった「1分」の新参者が何を勘違いしているのでしょうか。自然を軽視している人間に未来はありません。そのことに、今回のコロナで気が付くべきです。ワクチンを開発しても、そのワクチンに打ち勝つコロナが出てきます。既に変異型コロナが確認されています。そのようなことは、農薬をまけばまくほどそれに打ち勝つ強靱(きょうじん)な病原菌、虫が出て来ることを見れば明らかです。これだけ、世界中で農薬をまいても、絶滅させられないことがその証明です。人間の病気も植物と同じです。なぜなら、人間も植物も動物も同じ生き物だからです。
 原発事故で失った元の生活を取り戻すことは不可能かも知れませんが、それ以上の生活を作り上げて行くことも出来るはずです。微生物や虫たちに出来ることなのですから。そのためには、二度と同じ過ちを繰り返さないことから出発しなければなりません。人間が地震を止めることは出来ません。しかし、人間が原発を止めることは出来るのです。それは、人間が造った物だからです。今年も3・11でその事を世界に発信しましょう。子どもたちの未来を奪わないために。

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