「もうける医療」との攻防 韓国TVドラマ「ライフ」

週刊『前進』04頁(3189号04面04)(2021/04/05)


「もうける医療」との攻防
 韓国TVドラマ「ライフ」


 韓国の医療ドラマ「ライフ」(全20話)をネットで少しずつ見ました。韓国での放送はろうそく革命後の2018年夏。巨大財閥資本に買い取られた私立大学病院の現場での新自由主義医療への転換との激しい攻防が描かれていきます。
 赤字診療部門の切り捨て・配転攻撃に対するストライキをめぐる教授たちの駆け引きや権力争い、絶対反対で闘うのか否かの路線的対立、資本による懐柔・分断やスパイを使った情報収集、悪質なデモ妨害という場面も出てきます。終盤で攻撃の本質は「医療の民営化」であると明示され、さすがにろうそく革命後に作られたドラマだと実感させられます。
 資本の意思を体現する独裁者然として病院の社長となったのは、過去に物流をはじめ他業種で労働組合をつぶしてきた「実績」を買われた人物です。「効率」「もうけ」だけでのし上がってきた者であり、医療のことは全くの門外漢。この社長は、財閥の2代目会長(横暴そのもの)の指示を受けながら、閣僚への利益誘導と引き換えに法規制の緩和や抜け道を画策。あらゆる手を使って「もうける医療」への転換・変質を進めようとします。
■自らの医療の原点問う
 それに対して医師や看護師が、人の命にかかわる自らの医療の原点を振り返りながら、いかに抵抗し、「赤字か黒字か」を基準とする成果主義、賃金に連動する評価制度による分断やいがみあいを乗り越えて立ち向かっていくかが、このドラマのメインテーマとなっています。
 攻撃のやり玉に挙げられるのが「赤字」にならざるをえない小児科、産婦人科、救急医療部門で、この部門の廃止まで策動されます。また病院が得た全患者の医療データを財閥グループ内の保険会社に回そうとしたり健康食品の販売促進に使ったりする手口、再開発利権の問題も出てきます。これら総体がデジタル化と「もうける医療」への転換、医療破壊であると明らかにされていきます。
■職場が最大の激突点
 「(政権が代わっても)結局、何も変わらなかった」という言葉が看護師の労組活動家から語られ、ろうそく革命後も資本との職場攻防が最大の激突点であることが突き出されます。最後にこの社長は解任されますが、これで攻撃は終わるのではなく激しい攻防が続くことが示されます。
 もちろんドラマですから様々なテーマが重なり合って進行していきますが、このコロナ下で新自由主義による医療破壊・労組破壊に立ち向かっていく上で、多くの問題意識を与えるものとなっていると思います。
(大迫達志)

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