極悪の入管法改悪許さない 難民・移民を強制送還するな

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週刊『前進』04頁(3190号01面02)(2021/04/12)


極悪の入管法改悪許さない
 難民・移民を強制送還するな


 3月6日、名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)で被収容者が亡くなったというニュースが飛び込んできた。「またか!」という衝撃が走った。
 スリランカ人女性のウィシュマさん(33)は、1月下旬から嘔吐を繰り返し、「食道炎のような症状がある」と診断されていた。体重が急激に減少、歩行困難になるほど衰弱していた。本人や支援者が「すぐに点滴を受けさせ、入院させてほしい」と申し入れていたが、医療放置のまま6日午後、居室内で倒れたまま発見され、救急搬送された病院で死亡が確認された。
 昨年8月、同居中の男性のDVから警察に保護を求めたが、ビザが失効していたため入管に収容されたという。保護より収容というこの国に殺されたのだ。

東京オリンピックで長期収容が激増

 東京オリンピック開催が決まった後、国内治安管理強化の一環として非正規滞在者への弾圧が強まった。全国の入管収容施設では仮放免が激減し、6カ月以上の長期収容が激増、2年、3年……5年を超える超長期の収容が現実となった。19年春、抗議のハンガーストライキが広がる中、長崎県大村市にある大村入国管理センター(大村入管)でナイジェリア人が飢餓死するという事件が起きた。
 事件直後の7月、入管庁初代長官・佐々木聖子は「帰国すれば収容者は明日にでも入管施設から出られます。送還を迅速に行うことで長期収容を解消したい」と言い放った。
 これが入管当局の立場であり、2月19日に閣議決定された入管法改悪案もこの立場が貫かれた極悪の人権侵害法案だ。絶対に廃案にしなければならない。

難民申請中も送還可能にする暴挙!

 現行法では、難民認定申請手続きの審査中には強制送還されない(送還停止効)と規定されている。しかし改悪案では、3回以上の難民申請者には例外を設け、送還を可能にする。
 この「送還停止効」は、強制送還を拒み、粘りに粘って生き抜こうとする難民申請者にとって唯一の命綱であり、入管を縛る縄だ。この縄を解き、入管にフリーハンドを与えることは、「難民条約から離脱することだ」という批判が法曹界からも上がっている。
 難民条約には、「締結国は、難民を……その生命または身体が脅威にさらされる恐れのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない」というノン・ルフールマン原則がある。この原則は難民認定を受けた人だけでなく、難民申請手続き中の人にもあてはまる。入管法でノン・ルフールマン原則の例外を設けるとは非常識にもほどがある。
 3月31日、発表された昨年の難民認定統計によると、申請者3936人に対し、難民認定47人(認定率1・11%)。難民認定はしないが「人道的配慮」で在留を認めた44人を加えても91人(2・3%)でしかない。

「監理措置」の狙いは送還拒否者追放

 これらの退去促進策に加え、新たな制度として「監理措置制度」が打ち出された。この新制度は、マスコミが入管の言うがままに報道した「一定の条件のもと入管施設外での生活を認める」などという改良・改善とは全く違う。
 監理措置制度には、①退去強制令書発付前の監理措置(収令監理措置)と、②退去強制令書発付後の監理措置(退令監理措置)の2種類があり、違反者には刑事罰が科される。
 ①収令監理措置は、逃亡、証拠隠滅の恐れ、「その他の事情」を考慮し、300万円を超えない範囲の「保証金」と「監理人」をつけて決定される。就労も「許可されうる」(第44条の5)とされるが、②の退令監理措置は、「送還可能のときまでその者を収容しないことが相当と認めるとき」に保証金と監理人をつけて決定される措置であり、送還が大前提だ。強制退去を拒み、日本での在留を希望する人などは、対象にならない。強制退去を拒み続ければ、「退去命令違反罪(送還忌避罪)」で刑事罰の対象となる。
 仮放免も制度としてあるが、健康上などの緊急措置に限定され、保証金はない。19年にハンストで衰弱した被収容者を2週間だけ仮放免し再収容するという残酷な仮放免の運用が思い起こされる。
 「長期収容の解消」と称してやることは追い出しであり、強制退去を拒否する被収容者と仮放免者など約3千人の非正規滞在者を最後の一人まで一掃することを狙っているのだ。
 「外国人は煮て食おうと焼いて食おうと自由」と外国人を迫害し、命さえ奪う入管法改悪攻撃こそ、労働者階級を分断する改憲攻撃だ。
 近日中にも衆院法務委員会での審議入りが狙われている。国会前で怒りの声を上げよう! 外登法・入管法と民族差別を撃つ全国実行委員会が呼びかける4・24入管法改悪阻止の法務省デモを闘おう!
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