改憲・戦争へ内閣独裁強める デジタル法案を廃案へ

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週刊『前進』04頁(3190号01面03)(2021/04/12)


改憲・戦争へ内閣独裁強める
 デジタル法案を廃案へ

(写真 デジタル監視法案の衆議院本会議採決に「デジタル庁はいらない」などのプラカードを掲げる「現代の治安維持法と闘う会」と「百万人署名運動」の人びと【4月6日 国会前】)


 4月6日、衆議院本会議でデジタル監視5法案の採決が強行された。デジタル監視法案をめぐる闘いは参議院段階に移った。闘いはこれからだ。闘いを爆発させ、絶対に廃案に追い込もう。職場で論議し、労働運動の力で阻止しよう。

委員会審議で明らかになった問題

 2日の衆議院内閣委員会でデジタル監視5法案の採決が強行され、6日に本会議採決となった。
 審議で明らかになった第一の最大の問題は、デジタル社会形成基本法第29条の「地方公共団体の情報システムの共同化又は集約」が義務だとされた点だ。
 地方自治体はそれまで作り上げてきたコンピュータシステムをすべてリセットして国のシステムに統合しなければならなくなる。そうなると地方自治体の独自の施策はことごとく否定され、地方自治とは名ばかりの、事実上国の出先機関化することになる。
 第二には、3本の個人情報保護法が統一される新たな個人情報保護法第69条(利用及び提供の制限)で行政機関などが「相当の理由」がある場合や、学術研究などに「特別の理由」がある場合には、本人同意がなくても個人情報の外部への提供を可能とする点だ。
 「相当の理由」や「特別の理由」などいくらでも拡張解釈が可能である。現在でも公安警察は、刑訴法197条の捜査事項照会なるものを利用して裁判所の令状なしに監視カメラの情報や携帯電話の通信情報を入手している。それがもっとおおっぴらに合法的に可能になる。これは元警察庁警備局長の杉田和博官房副長官ら内閣情報調査局による内閣独裁を狙うものであり、改憲・戦争攻撃そのものだ。
 転職時に転職先の企業に個人情報を提供することも可能になる。本人同意が条件というが、新しい企業の就職面接時に本人同意を拒むことなどありえない。

「データの利活用」は改憲攻撃だ

 デジタル監視法との闘いは労働運動の正面課題であり、その時のキーワードは「データの利活用」だ。
 この20年あまり、私たちの周りはネット抜きには仕事も市民生活もできないほどになっている。例えばJR東日本では、駅員・乗務員、保線・電気設備・土木・建設など各方面に計3万7千台ものタブレット端末を配布し、それを通して労働組合との交渉も無視して資本の施策が垂れ流されている。
 日帝にとって争闘戦で敗北し続け「失われた30年」から脱却できないのはなぜか。それはGAFAや中国のように個人情報保護など無視して膨大なデータを「利活用」できない日本の社会構造が原因だと言うのだ。これはコロナ下で暴露された新自由主義下で食っていけない労働者人民の総反乱を恐れ、監視国家化、内閣独裁を推し進めたい欲望と一体のものである。
 ビッグデータを「利活用」するという点で日帝は圧倒的に立ち後れてきた。 戦前の労働者人民を「天皇の赤子」として国家が使い捨てにするあり方への反省から、戦後は国家や地方自治体による個人情報の利用については厳しい制限が課せられてきた。むしろ制限することが当然のこととして受け入れられてきた。これは「すべて国民は個人として尊重される」と個人の尊厳を国家の上に置く戦後憲法の建前とも一体だ。
 この戦後のあり方と個人情報保護のための法体系全体が、データの利活用をもくろむ連中にはがんじがらめの障害になっている。彼らには戦後の労働者人民の闘いの地平を原理的に破壊するしかない。まさに改憲・戦争攻撃そのものだ。

デジタル法粉砕は労働運動の課題

 戦後の自治体では、思想信条や犯罪被害、病歴、犯歴、社会的身分など「センシティブ情報」と呼ばれる個人情報は原則収集を禁止してきた。これを情報システムの統合が義務化されることで否定され、自治体は国の出先機関と化してしまう。「赤紙を配らない」という戦後自治体労働運動の地平の否定だ。
 教育労働者にとってはどうか。児童・生徒1人に1台の端末が渡され、「個別最適化」と称してデータが吸い上げられ「利活用」される。教育労働者を事実上国家と教育資本の手先にし、IT能力が無いとして解雇=非正規化と教組を破壊して「教え子を再び戦場に送らない」闘いを一掃しようとするものだ。
 カルテの電子化を突破口に病歴を含む医療データがデジタル化され集中管理されることで、医療労働者が国家と医薬品資本のために患者データを提供させられる。それは戦前・戦中の戦争協力の医療を拒否して社会保障としての医療を求めて闘ってきた戦後医療労働運動の解体を意味する。
 デジタル監視法案粉砕の闘いは労働運動の正面課題だ。労働組合として国会に駆けつけ、デジタル監視法案を絶対に廃案に追い込もう。菅政権を打倒しよう。

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