反基地運動弾圧狙う菅政権 「土地規制法案」は新たな治安立法

発行日:

週刊『前進』04頁(3190号03面01)(2021/04/12)


反基地運動弾圧狙う菅政権
 「土地規制法案」は新たな治安立法


 在日米軍や自衛隊の基地周辺住民の動向を監視し、思想信条を調査し、土地取引を規制し、国の判断ひとつで土地の利用停止を命令できる——そのような驚くべき内容の土地取引規制法案を、菅政権は今国会で成立させようとしている。防衛関連施設の周辺や離島などの土地を外国資本(中国企業など)に買い取られることを規制するためだというが、本当の狙いは基地周辺住民をはじめとした全人民への調査・監視と反戦・反基地運動への弾圧、そして軍事目的の土地・施設の強制収用を合法化することにある。憲法上の基本的人権を著しく侵害する改憲攻撃であり、新たな治安維持法だ。絶対に許すわけにはいかない。

住民監視、罰則で制限も

 3月26日に「安全保障上の観点から重要施設及び国境離島の機能を阻害する土地の利用を防止」するという名目で閣議決定された土地取引規制法案の内容は以下のとおりだ。
 ①米軍、自衛隊、海上保安庁などの施設や原子力発電所といった重要インフラの周囲約1㌔と国境離島を「注視区域」に指定し、土地所有者の個人情報や利用実態の調査権限を政府に与える。そして政府が必要と判断すれば「利用中止」を命令できる。
 ②司令部機能がある基地や特に重要と判断される国境離島は「特別注視区域」とされ、土地売買時には売り手・買い手双方の個人情報や利用目的などの事前届け出を義務付ける。
 ③利用中止命令に応じない場合は2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処す。
 法案でいう「重要インフラ」が何を指すのかについては「政令で定める」としており、その対象を政令で無制限に拡大できる。また政府が収集する情報も、住民基本台帳や不動産登記簿などで知ることができる個人情報のほか「その他政令で定めるもの」「内閣府令で定める事項」とあり、政府の判断ひとつで個人の思想信条、所属団体、交友関係、海外渡航歴などいくらでも拡大できる。それらを土地所有者に申告させるだけでなく、近隣住民から聞き込み調査を行うなど、国があらゆる手段を使って住民を調査・監視することが可能となるのだ。
 沖縄国際大の前泊博盛教授は「罰則付きで基地周辺の使用制限を行うのは戦前回帰」であり、「基地反対派の小屋や監視のとりでといった『反対運動』の拠点を排除する」ことに狙いがあると指摘する(3月6日付琉球新報)。
 「安全保障」を口実に国が住民を日常的に調査・監視し、財産を統制する点でも、まさに「治安維持法の再来」(東京新聞論説委員・半田滋氏)というべきものだ。

排外主義をあおり国家統制を合法化

 この間、産経新聞などの右翼メディアや日本会議系の地方議員などは「日本の防衛のために必要な土地が中国人や韓国人に買われている」としきりに騒ぎ立て、排外主義をあおりながらこの法案を推進している。だが、外国人に限らず自衛隊などの施設周辺の土地売買や利用実態などは、国土利用法や森林法に基づいて地方自治体が調査済みであり、また外国人による土地取得はまったく取るに足らない面積でしかないことも判明している。例えば、問題視された長崎県対馬市の韓国人による土地購入は同市面積のわずか0・007%程度に過ぎない。
 今回の法案の本当の狙いは、単なる土地売買の調査や規制にとどまらず、戦前の治安維持法のような日常的な監視・弾圧と国家による財産統制を合法化することにある。まさに反基地運動つぶしの治安立法にほかならない。

対中戦争かまえる米日帝

 菅政権がこのような「現代の治安維持法」の制定を急ぐ背景には、米中対立の急激な先鋭化・非和解化のもとで、米バイデン政権が中国との戦争を本格的に準備し始めたという事実がある。だが、すでに没落・衰退を深め、国内に巨大な階級支配の危機を抱えるアメリカ帝国主義には、ただちに単独で中国と全面戦争を行う力も条件もない。それゆえバイデン政権は、何よりも日本帝国主義との関係を重視している。アメリカの有力シンクタンク・ランド研究所の研究員は「米国の対中戦略は日本なしには成り立たない」と主張し、特に台湾有事で日本が果たす「役割」に期待を寄せる(4月4日付朝日新聞)。沖縄をはじめ日本全土を対中戦争の出撃・補給基地として利用し、自衛隊を米軍と並ぶ実戦部隊として戦わせようとしているのだ。
 これに対し、日帝・菅政権もまた敗戦国としての戦後的制約を脱却して「戦争のできる国」へと転換することに帝国主義としての延命をかけている。そのために米軍と一体化した自衛隊の本格的な侵略軍隊化を急ぎ、ミサイル部隊や電子戦部隊などの新設を進めている。この間発覚した辺野古新基地への自衛隊の常駐計画も、従来の米軍・自衛隊の役割分担を大きく転換し、米海兵隊を代替する任務を自衛隊に担わせようとする動きの一環だ。
 だが日帝は、こうした日米安保の対中戦争同盟としての再編・強化を進めながらも、中国との経済関係をただちに断ち切るわけにもいかない。そのため、米中激突が進めば日米間の矛盾も激化せざるを得ない。4月8〜10日の菅の訪米は、こうした解決不能のジレンマを抱えた日帝の綱渡り的な延命策にほかならない。

米軍・自衛隊訓練激化で広がる怒り

 他方で、この間の米軍・自衛隊の一体化と軍備増強、訓練の激化により、沖縄をはじめ日本中の基地周辺で騒音や事故などの被害が深刻化し、怒りの声がかつてなく大きく広がっている。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の飛行差し止めと騒音被害の損害賠償を求める第3次普天間爆音訴訟は、3月25日の追加提訴で新たに1166人が原告に加わり、原告総数は過去最多の1946世帯計5347人となった。1972年の本土復帰後に生まれた人も多数加わっているという。さらに沖縄だけでなく全国各地で、米軍機の危険極まる超低空飛行とすさまじい騒音被害への抗議の声が急速に広がっている。
 沖縄をはじめ日本の労働者階級人民の反戦・反基地闘争は、戦後一貫して不屈に闘い抜かれ、今日まで憲法9条破壊を許さず、辺野古新基地建設を阻み続けている。この怒りと闘いは青年世代にも引き継がれている。ここに日米安保の最大の矛盾がある。
 改憲・戦争阻止!大行進を拡大し、戦争国家化を狙う菅政権を打倒しよう。
このエントリーをはてなブックマークに追加