21春闘を闘いぬく動労千葉に続き 国鉄決戦を軸に新自由主義倒そう 革共同中央労働者組織委員会

週刊『前進』04頁(3191号02面01)(2021/04/19)


21春闘を闘いぬく動労千葉に続き
 国鉄決戦を軸に新自由主義倒そう
 革共同中央労働者組織委員会

(写真 CTS本社前に集まった動労千葉組合員と支援は、外注化撤回、就業規則改悪阻止、大幅賃上げ獲得へシュプレヒコールを上げた【4月8日 千葉市】)

 新型コロナウイルスの感染拡大が大きなきっかけとなって、JRの民営化体制が破綻・崩壊している。その象徴がJR北海道の現実だ。JR四国や貨物も多額の政府資金が投入されなければ維持できないような経営危機にある。さらに本州JRも巨額の赤字に陥っており、民営化体制の崩壊はJR全社に及ぶ。その中でJRは、「コロナ赤字」に便乗した新たな大合理化攻撃を始めた。特にJR東日本が突出している。JR東日本の合理化攻撃は国家戦略として位置づけられている。これと全面対決しているのが、動労千葉の今春闘の闘いだ。国鉄決戦は新自由主義攻撃と立ち向かう基軸に位置する。

JR民営化体制は破綻

 JR北海道は、コロナ以前から経営危機に陥っていたが、国土交通省は昨年12月、JR北海道に対して2023年度までの3年間に1302億円の国家財政を投入することを決定した。年平均で400億円となる大規模な資金投入は、JRに対する財政支援としては異例中の異例だ。さらに「新たな支援手法の拡充」と称して、青函トンネルの維持費・補修費をJRから切り離し、鉄道運輸機構が保証するなど、これから行われることは事実上の「再国有化」と言っても過言ではない。
 危機はこれにとどまらない。国交省によれば、2019年度のJR北海道の新卒採用者は265人だったのに対し、同年度に自己都合で退職した社員数は165人。うち96%に当たる158人が、10代から30代の青年労働者だったという。このことは国会でも大問題となり、赤羽一嘉国交大臣は「JR北海道は財政破綻した北海道夕張市より給与水準が低い」ことが青年労働者の大量離職の原因だと認めている。
 しかし政府は「再国有化」して鉄道を維持しようとしているのではない。この2年で夕張線、札沼線、日高線の廃線が強行され、留萌線も廃線が進められようとしている。さらに、すでに無人化された駅の大幅廃止など、「再国有化」のもとで鉄道と地域の切り捨てが始まっているのだ。
 それだけでなく民営化体制は本州を含む全JRで破綻している。

国家戦略としてコスト削減強行

 JR東日本も2020年度連結決算で5960億円の経常赤字を見込み、すでに「1500億円のコストカット(単体で1100億円、グループで400億円)」を打ち出した。巨額の利益をため込んできたJR東日本だが、コロナ禍を千載一遇のチャンスに、「JR発足以来最大の合理化」(動労千葉)に踏み出そうとしている。攻撃の規模や激しさだけではなく、JR東日本は国家戦略として構えて大合理化を進めようとしているのだ。

昇給制度解体の先頭に立つJR

 これはJR東日本で行った合理化を全産業、全労働者に直ちに波及させるということだ。かつての国鉄分割・民営化と同じことがコロナ下で行われつつある。
 例えば、今春闘でJR各社はコロナ赤字を口実にベアゼロに踏み込んだが、東日本だけはベアゼロに加えて定期昇給も止めた(昇給係数を4から2に削減)。これはJR西日本や東海もやってはいない。おそらく国鉄の歴史の中でも定期昇給を止めたことは一度もない。戦後の歴史から見ても重大な転換だ。JRの中で最大の利益を上げてきた東日本が、1年間赤字だったからと言って定期昇給まで止めた。許されていいはずがない。
 しかもこれは全労働者にとって重大な意味を持つ。「21年版経労委報告」で経団連は「昇給制度も検討すべき」と打ち出したが、JR東日本は、この経団連の方針をそのまま実施したものと見なければならない。

ワンマン運転で車掌は自宅待機

 今年3月のダイヤ改定で、千葉では内房線、外房線、鹿島線でワンマン運転が強行され、水戸線の全列車(常磐線直通は常磐線区間を含む小山―勝田間)で5両編成のワンマン運転が強行された。それに伴い、千葉では24人の車掌が削減された。水戸運輸区では標準数(乗務)が32減らされた。この要員削減で、水戸では、車掌を廃止したその日から20人ほどが自宅待機、10人ほどが出勤予備を命じられている。これは、コロナによる列車の減便で「一時帰休」を行ったJR東海や西日本の対応とも全く違う。さらに言えば、機関助士廃止や国鉄分割・民営化の過程で5万人、10万人を合理化して職場に「余剰人員」を大量につくり出した時も、「出勤しなくていい」という扱いはなかった。これもまた歴史的な転換だ。
 JR東日本は、昨年9月から「業務量減少その他経営上の都合により休業を命ずる」という就業規則の改悪を行った。翌月の勤務指定と同じレベルで、発令行為を行うこともなく、1日単位から無期限までの休業を一方的に指定できるとした。JR東日本が今回の「自宅待機」の先に全面的な「休業指定」を狙っていることは明らかだ。

就業規則改悪で賃下げ

 さらに今年の4月から、「働き方改革」関連法の一環で「同一労働同一賃金」が中小企業にも適用されることに伴い、JR東日本のグループ会社のCTS(千葉鉄道サービス)が就業規則の改悪を提案してきた。
 これまでCTSでは、パートや契約社員が無期雇用に転換されると、無期転換から5年で班長試験、班長登用から4年で主任試験の受験資格があった。班長や主任に登用されれば20円、40円とそれぞれ時給が上がり、月に5千円や1万円の役職手当も支給されることになっていた。しかし、今回の就業規則改悪では、その項目が全面削除される。「期待される職務の内容が違うから、正社員と非正規の格差は正当だ」と居直ろうとしているのだ。
 しかも、これだけではまだ争いの余地があるので、就業規則からさらに「職務に対する知識習得、技能向上などの自己啓発、意見具申などの業務改善」の義務も、非正規職については全面的に削除した。しかし、CTSでは業務を担う3分の2がパートや契約社員など非正規職だ。それぞれが必要な知識や技能を習得し、責任ある仕事をしなければ実際に仕事は回らない。現実はそうであるにもかかわらず、就業規則上は「非正規は自己啓発する必要もない、仕事も覚えなくていい」とし、正社員とは「職務内容が違う」からと格差を正当化し、労働者を一生最低賃金に縛り付けようというのだ。絶対に許すことはできない。

運転士と車掌の職名なくし配転

 JR東日本は昨年4月1日から、現業の象徴的存在である運転士・車掌の職名を廃止した。運転士・車掌に対しては、「同一担務10年」としたジョブローテーションに基づく異動が発令されている。千葉支社は2月1日付けで13人の乗務員を駅に配転した。乗務員を片道切符で一方的に駅に配転するのは、国鉄分割・民営化攻撃の過程で労働組合つぶしのために行われて以来、はじめてのことだ。駅の外注化が激しく進められている現実を考えれば、これが早晩、転籍へとエスカレートしていくことは明らかだ。
 こうした攻撃のひとつひとつは本当に許せないが、その本質は、これまでの価値観を打ち砕き、鉄道の仕事を「全く価値のないもの」にして、そこで働く労働者を「使い捨てる存在」におとしめ、抵抗しても無駄だという諦めを強いることにある。こうしたことがJR東労組の解体、関西生コン支部への大弾圧から始まった「労組なき社会」づくりと一体で進んでいる。
 今JRで起きている事態は、単に一企業の労務政策の転換というレベルではない。新自由主義は「惨事便乗型資本主義」と呼ばれることもあるが、コロナに便乗して労働者が守り抜いてきた権利や労働条件を最後的に破壊する攻撃の先頭にJRが立っているのだ。

スト貫徹した動労千葉

 しかし、どんな攻撃にも必ず矛盾はあり、労働者が団結して立ち向かえば、必ず事態を打開できる。
 国鉄千葉動力車労働組合(動労千葉)は、今年の春闘過程で3波の闘争を構えて闘った。第1波は、ダイ改の第一の焦点であったワンマン化との闘いだ。3月12日から14日にかけて、動労千葉は48時間のストライキに立ち上がった。ワンマン化は運転士一人にすべての責任を転嫁し、労働を強化し、鉄道の安全を破壊する攻撃であり、廃線をも見据えた地方切り捨ての攻撃でもある。ワンマン化や駅の無人化に対して内房線、外房線沿線の住民、「障害者」団体などから意見が相次いで出され、「ワンマン運転導入の中止を求める署名」が館山市や鴨川市、南房総市など地域を挙げて取り組まれていた。今回の動労千葉のストライキは、こうした地域住民の怒りと広く結びつく形で闘われた。
 この闘いは、新自由主義に立ち向かう地域ぐるみの運動をつくり出すという点でひとつの可能性を示している。40年に及ぶ新自由主義攻撃は地方の切り捨てを極限まで推し進めた。その結果、「人口減少の防波堤になる中核都市以外は淘汰(とうた)する」という「選択と集中」が「成長戦略」にまで押し上げられて、地方の学校や病院、保健所や郵便局の削減、撤退が強いられた。コロナによって暴き出された社会の矛盾は、新自由主義によって生み出されたものだ。
 これに対し、鉄道や自治体、教育、医療・福祉、郵政などの労働者、労働組合が中心に据われば、職場の怒りと地域の怒りをひとつに組織して闘うことができる。動労千葉の闘いは、これまでの労働運動の限界を乗り越えようとするひとつの大きな挑戦だ。

外注化阻止闘争の再構築を決断

 動労千葉の春闘第2波闘争は、検修・構内業務の外注化阻止闘争の再構築を掲げて闘われた。千葉で検修・構内業務の外注化が強行されて8年半がたとうとしているが、この外注化は今、完全に破綻し、崩壊しようとしている。
 JR北海道のような現実は、実はJRの職場に無数にある。CTSでは、あまりの低賃金と劣悪な労働条件のため、CTSで採用されたプロパー社員58人のうち19人がすでに退職した。プロパー社員がまともに育たず、「10年で外注化を完成させる」という計画が破綻したことを会社も認めざるを得ない状況だ。こうした中で、業務を成り立たせている中心は100人規模のJRからの出向者だ。しかも、この出向者の多くがこれから65歳を迎え、大量退職が始まる。
 しかし、CTSは、今年4月から改定高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業の努力義務が課されたにもかかわらず、65歳以降の就労を希望した動労千葉組合員の再雇用を、団体交渉すら行わずに拒否した。このままいけば、この1〜2年で外注化は完全に破綻する状況にありながら、会社は何の責任もとろうとはしない。
 動労千葉は「すべての業務と出向者をJRに戻せ、CTSプロパー社員をJRで雇え、70歳まで働ける労働条件の確立を」と訴えて春闘第2波闘争に立ち上がった。
 JRが「変革2027」で始めた攻撃の最大の焦点は完全分社化だ。JR本体は持ち株会社にして、現業は全部分社化、労働者は全部転籍させて総非正規職化しようとしている。だがそこには必ず矛盾が生まれ、労働者の怒りが生まれる。
 外注化は雇用の破壊と安全の破壊をもたらすが、動労千葉はこのことに絶対反対で闘ってきた。「子や孫に非正規だけの社会を絶対に残すわけにはいかない。動労千葉の外注化阻止闘争は崇高な闘いだ」と絶えず確認しながら、組合員は自らのクビをかけて闘ってきた。単に出向に出された時の労働条件や賃金を問題にするだけではなく、「こんなことがまかり通れば社会が崩壊してしまう」という危機感と怒りに基づく絶対反対の闘いとして外注化阻止闘争は闘われてきた。
 動労千葉が目指す外注化阻止闘争の再構築は、これからJRで本格化する分社化、転籍、非正規職化に対する最大の抵抗となる。それは、新自由主義攻撃の核心的な攻撃である外注化を打ち破る闘いだ。動労千葉の20年に及ぶ外注化阻止・非正規職撤廃の路線と闘いは、今、新たな発展を遂げようとしている。

過半数労働組合めざす大決戦に

 春闘第3波闘争はCTS春闘として闘われた。前述のCTSの就業規則改悪に対して動労千葉は団体交渉などを展開し、4月1日の就業規則施行を阻止する画期的な勝利を勝ち取った。
 CTS幕張事業所では3期連続で動労千葉の関道利委員長が職場代表に選出されている。しかし、それでも幕張事業所の人員はCTS全体の4分の1強だという。CTSは様々な理由を付けて就業規則改悪を強行しようと思えばできたはずだが、強行できなかった。
 今回の就業規則の改悪には多くの不利益変更があり、職場代表や労働組合との十分な話し合いを行わず、職場への周知もなしに一方的に実施することは不当労働行為だ。例え少数でも労働組合が本気で闘いを構えれば十分に勝負になることをこの闘争は示した。
 これも、菅政権と経団連が進める「労組なき社会」化の攻撃を打ち破る大きな一歩だ。経団連労働法規委員会は、労働組合を無視して就業規則の不利益変更が自由にできるようにする「社員代表制度の法制化」を要求しており、その会長はJR東日本前社長の冨田哲郎だ。改憲と一体で「労組なき社会」のモデルをJRでつくり、社会全体に広げるためのその新たな手段としてJRで組織されているのが「社友会」だ。しかし、その社友会も「労組に代わる労務管理システムの構築には至っていない」(『選択』2020年9月号)と言われるように、いまだ新たな労務支配のあり方は確立されてはいない。
 動労千葉は、今回の勝利を土台に、CTSにおいて職場の過半数代表から労働組合の過半数を目指す組織拡大に全力を挙げている。そうなれば外注化を根本から覆す展望も生まれる。労働者が声を上げ、闘いを呼びかける限り、「労組なき社会」をつくることなど絶対に不可能だ。

社会壊す民営化に断を

 新型コロナウイルスの感染拡大は医療崩壊をはじめとした社会崩壊の現実を明らかにした。この事態は、日本における新自由主義攻撃の出発点となった国鉄分割・民営化と、それに立ち向かってきた動労千葉をはじめとした国鉄労働者の闘いの重要性をあらためて認識させた。
 コロナ下でストライキに立ち上がった医療・福祉労働者たちは、「日本の医療崩壊はコロナ以前に始まっていた。医療費削減のために、この国の政府は病院や病床を次々と削減してきた」と訴えた。医療崩壊の出発は1981年から83年の第二次臨時行政調査会の時にあり、中曽根の国鉄分割・民営化攻撃と軌を一にしている。82年には医師数を抑制する閣議決定が行われ、83年には当時の厚生省保険局長が「医療費の増大は国を滅ぼす」と記したレポートを発表した。国鉄では「国鉄の赤字は労働者が多すぎるからだ、働かないからだ」とキャンペーンされて、民営化が労働組合の破壊を軸に暴力的に強行された。
 コロナ禍の中で医療も鉄道もすべてが崩壊している。国鉄分割・民営化が今一度問題になり、日本の労働者が国鉄分割・民営化攻撃に負けなかったことがあらためて歴史的な意味を持ち始めた。
 国鉄決戦を基軸に新自由主義を打倒する労働運動の構築に踏み出そう。革共同中央労働者組織委員会はその先頭で闘う。
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