台湾鉄道史上最悪の事故 関連工事の外注化が原因

週刊『前進』04頁(3192号04面02)(2021/04/26)


台湾鉄道史上最悪の事故
 関連工事の外注化が原因

違法下請けが横行

 4月2日、台湾の花蓮県で特急タロコ(太魯閣)号が脱線し、乗客・乗務員49人が死亡、218人が負傷する大事故が発生した。2018年に起きた特急プユマ号脱線事故(死者18人、負傷者215人)をも上回る台湾の鉄道事故史上で最悪の事故となった。
 この事故の最大の原因は、台湾鉄道が行った関連工事の外注化にある。
 台湾鉄道は事故現場付近で行われていた別のトンネル工事での斜面補強作業を東新営造という民間企業に請け負わせていた。この企業はさらに義祥工業社という別の民間企業にこの作業を請け負わせていた。事故原因は、斜面に止めて立ち往生した工事車両を重機で牽引(けんいん)しようとして失敗し、工事車両が線路に転落、走ってきたタロコ号と衝突したためと見られている。工事車両を転落させた義祥工業社は、第2次下請け企業だったのである。
 また転落した工事車両の運転手は工事主任であった。台湾の建設法でも第2次下請け会社が現場の工事主任を務めることは違法とされている。だが外注のためこうした現場での状況は表には出て来ず、違法がまかり通っていた。
 さらに事故の起きた日は連休中であり、規定で工事も休業することになっていた。だが工事の遅延で罰金を取られることを恐れて、この業者は連日工事を続けていた。この日も工事主任が現場に来て、自ら運転していた車の転落が列車事故を引き起こしたのだ。

民営化狙う蔡政権

 以上の事実関係を見た時、外注化にこそ事故の最大の原因があることは明白である。元請け、下請けという関係の下での違法の横行、さらに下請けに工期などすべての責任を押しつけることから、下請けは処分を恐れて無理を承知で作業を進めて破綻し、事故を生み出す構造——これはすべての外注化問題に通じる問題だ。
 台湾鉄道産業労働組合は、この事故の直後に声明を発した。「安い外注は表面上は政府の予算の節約ですが、実際には公共安全に影響を及ぼします。ここ数年の間、政府は不断に民間会社に外注していますが、大小の入札企業の質には差があり、それは民衆の安全を後回しにすることです」と事故原因が外注化にあると指摘し、「現在、大事故が発生するに至りましたが、台鉄はなお責任をすべて外注企業に投げつけるのでしょうか?」と台鉄を徹底弾劾している。
 さらに、この事故が起きた北廻線は第2次大戦後にできた路線だが、前後の線路とつなげるため日帝植民地時代の狭軌(1067㍉メートル)を使用している。トンネルが狭かったことが死者や負傷者を増やした原因との指摘もあるが、その背景には植民地時代の鉄道経営と、それを引き継いだ台鉄の経営体質の問題がある。
 実際に台鉄とJRの関係は今も深い。台鉄の巨額の債務(約1兆5400億円)は、JR東海が高額で売り込んだ台湾新幹線とその経営が生み出しているものだ。今回の事故を起こしたタロコ号は日立製、18年のプユマ号もJR東海子会社の日本車両が製造しており、プユマ号事故に関しては車両の不具合が一因とみられている。
 4月7日、台湾の蔡英文総統は、「運行主体の交通省台湾鉄路管理局の改革を断行する」と発表し、台鉄の民営化を進める決意を表明した。日本の国鉄分割・民営化は労組を破壊し、尼崎事故などの大事故を引き起こした。台湾政府は今回の事故や巨額債務を口実にして民営化に踏み切ろうとしている。それは戦闘的に闘っている台湾鉄道産業労働組合への解体攻撃であり、さらなる大事故も必至だ。絶対に許してはならない。
 台湾鉄道の民営化を許すな! 外注化反対! 日台の労働者は国際連帯を貫き闘おう!
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