進む米軍と自衛隊の一体化 安保の転換 横須賀・横田基地は今

発行日:

週刊『前進』04頁(3194号03面01)(2021/05/17)


進む米軍と自衛隊の一体化
 安保の転換 横須賀・横田基地は今

 4・16日米首脳共同声明で米日帝の対中国侵略戦争政策は新たな段階に入った。そのもとで対中戦争を想定した訓練が全国の基地で激増している。日米安保同盟が、自衛隊が米軍と一体化して「血を流す」という戦争遂行同盟に転換するのに伴い、沖縄をはじめ日本全土の出撃基地化が激しく進められているのだ。反基地闘争への決起が今こそ求められている。戦争切迫下の基地はどうなっているのか。地元で反基地運動に取り組まれている方の案内で、「改憲・戦争阻止!大行進神奈川」主催の横須賀軍港フィールドワークと、「同三多摩実行委員会」主催の米軍横田基地フィールドワークに本紙記者が同行した。(編集局)

横須賀
 米艦と海自艦、密接に連携

(写真 小高い丘から基地を見下ろす。手前が自衛隊の護衛艦群。左奥に見えるのが米空母「ロナルド・レーガン」などの米艦隊)

(写真 「ヨコスカ平和船団」に乗船。横須賀港を一周した【4月20日】)

 米海軍横須賀基地と海上自衛隊施設が覆う横須賀港。米海軍や海上自衛隊の艦船が大量に寄港している。透き通る青空の4月20日、海上フィールドワークに首都圏の団体や個人、学生など総勢20人ほどが参加した。これは横須賀港を船で一周するものだ。船を操縦し解説してくれたのは、地元で基地反対運動を長年取り組んでいる「ヨコスカ平和船団」の方だ。
 横須賀港の南西側を回ると、海上自衛隊の護衛艦や潜水艦が見えてきた。そのすぐ東側には米艦隊の姿が目に飛び込んでくる。停泊中の護衛艦「まや」は自衛隊初の「共同交戦能力」を持つ。レーダー情報を米駆逐艦に送り、それを元に米駆逐艦が攻撃することができるという。武力行使の一体化は一線を越えている。
 しばらく進むと建設中の桟橋が視界に入ってきた。新設の海自弾薬庫と専用桟橋の直近に、新たに建設中のこの米軍用桟橋は米艦船に直接ミサイルや弾薬を運ぶためのものだ。戦争切迫情勢下で米軍と自衛隊の一体化が驚くほど進んでいると実感した。
 この日は、横須賀を母港とする原子力空母「ロナルド・レーガン」が寄港し修理作業を行っていた。原子力で動いているので修理の際には大量の放射性廃棄物が発生し、事故を起こせば福島第一原発事故と同じ規模になる。「レーガン」には、自衛隊木更津駐屯地で整備されたオスプレイが配備される予定であるという。あらゆる意味で住民とは相いれない代物だ。
 フィールドワークの船が「レーガン」に近づくと米警備艇がすっ飛んできた。艦船から50㍎以内は米軍基地という規定があるため、脅しで機銃を向けてきたり、わざと波を起こして妨害することもある。米トランプ前政権の対中強硬シフトを境に、米軍側も激甚(げきじん)に反応するようになったという。トランプ政権下、南中国海における「航行の自由」作戦では9回も横須賀を母港とする艦船が使われた。バイデン政権も今年2月、「航行の自由」作戦を強行。米日帝の中国侵略戦争が狙われる中、横須賀港がその侵略拠点として使われていくのは間違いない。沖縄戦の血の教訓である「軍隊は住民を守らない」を改めて胸に刻まなければならない。
 下船後、参加者は次々と驚きと基地への怒りを語った。「大行進神奈川」の船木明貴さん(横須賀市在住)は「沖縄に連帯し、横須賀港でもカヌー隊を復活させたい」と訴えた。
 沖縄や横須賀をはじめ全国で基地反対の住民運動が粘り強く闘われている。それは、すべての基地を撤去し、改憲・戦争を阻む最前線の攻防だ。
(前田景勝)

------------------------------------------------------------
横田
 住民の命脅かすオスプレイ

(写真 フェンス越しに滑走路や軍用機を眺めながら福本さんの案内に耳を傾ける参加者【5月5日 東京都瑞穂町】)

(写真 北西から基地を見下ろすと、米軍と自衛隊の司令部や格納庫のそばに駐機するオスプレイが肉眼でも確認できた)

 横田基地は東京都福生市、西多摩郡瑞穂町、武蔵村山市、羽村市、立川市、昭島市の6市町にまたがり、南北約4千㍍の滑走路を備える広大な米空軍基地だ。2012年からは航空自衛隊の総隊司令部も置かれ、米軍と自衛隊の一体化が加速する。18年には米軍のCV22オスプレイの配備が開始され、現在の5機から24年までに10機体制とすることが狙われている。
 5月5日、地域の労働組合員や学生、青年労働者をはじめとする首都圏各地からの参加者は昭島駅からバスで基地の北東部まで向かい、外周の4分の1ほどを歩きながら「横田・基地被害をなくす会」の福本道夫さんにお話をうかがった。
 高いフェンスに沿って歩き出すとすぐに、遠くに複数のオスプレイが駐機している様子が見える。基地の北端へと移動し、日本で唯一、米軍基地内を通る(基地の西側)八高線の電車が通過していく様子を見ていると、電車の走行音が轟音(ごうおん)に変わった。大きな米軍機が高度を下げて頭上を通過し、滑走路に着陸したのだ。瞬時に全身を貫く耐えがたい爆音に頭痛がする。福本さんによると横田基地の年間離着陸数は現在約1万5千回。これらは平日に集中し、1日40〜50回にもなるという。
 日米合同委員会での合意により緊急時以外行わないとされている午後10時以降の夜間飛行も実際には行われている。特にオスプレイは特殊作戦用の機体のため、敵地での作戦を想定した夜間の離着陸や旋回、ホバリング、ロープ降下訓練などを行うことも多いという。特に12年の空自司令部の設置以来訓練が増加したとのお話が印象的だった。
 当然にもパラシュートや足ひれなどの落下物事故が頻発し、周辺住民の安全は日々脅かされている。また、米軍が航空管制を行う「横田空域」の上空でもパラシュート訓練が行われ、いつ旅客機との事故が起きてもおかしくない状況だという。静かな語り口からも周辺住民の命と生活を顧みない米軍と日本政府への強い憤りが伝わってきた。
 また、「東京オリンピックに伴う旅客機離発着回数の増加に対応するため」として日本側が特定の時間帯の横田空域内の飛行と引き換えに青森・米軍三沢基地の訓練空域を拡張したとの説明には参加者から驚きの声が上がった。五輪の影響は軍事にも及んでいる。
 その後、基地に隣接する量販店の上層階から、駐機するオスプレイや輸送機、核兵器の貯蔵や持ち込みが行われていると推測される弾薬庫などを観察。沖縄と連帯する5・16横田デモへの結集を確認して行動を終えた。
(佐々木舜)

このエントリーをはてなブックマークに追加