焦点 小型原発開発・建設 「脱炭素」「温暖化対策」はうそ

週刊『前進』04頁(3199号03面03)(2021/06/21)


焦点
 小型原発開発・建設
 「脱炭素」「温暖化対策」はうそ


 自民党の調査会や議員連盟などといった組織が「原発のリプレース(建て替え)や新増設」を声高に主張し始めている。彼らが狙っているのは、老朽原発を含む原発の再稼働を進めるとともに、「脱炭素、温暖化防止」を口実に「小型原発なら冷却しやすく安全性も高い」として、小型原発の開発・建設に本格的に乗り出すことだ。

安倍先頭に激しい動き

 5月25日、自民党の「総合エネルギー戦略調査会」が原発のリプレースや新増設を求める提言案をまとめた。今夏に改定される政府のエネルギー基本計画に盛り込むよう求めている。また菅政権が福島第一原発で増え続ける放射能汚染水の海洋放出を決定した4月13日の前日である12日には自民党の「最新型原子力リプレース推進議員連盟」が設立総会を開き、エネルギー基本計画に原発の新増設やリプレースの推進を明記するようめざすとした。会長の稲田朋美は会合のあと記者団に「新型原発のリプレースが重要」と強調した。しかも、最高顧問には前首相・安倍晋三が就任した。日本帝国主義は新型原発(小型原発)の開発・建設をたくらんでいるのだ。
 経済産業省も昨年12月25日、「グリーン成長戦略」を発表し、新型原発建設を本格的に打ち出した。「原子力は脱炭素のため」などとデマを並べ、「国内での着実な再稼働の進展とともに、海外(米・英・加等)で進む次世代革新炉開発に、高い製造能力を持つ日本企業も連携して参画し、多様な原子力技術のイノベーションを加速化していく」と主張。「工程表」で、2030年までに「日本企業が主要サプライヤーの地位を獲得」、50年までに「アジア・東欧・アフリカ等にグローバル展開」とし、新型の小型原発を世界中に輸出しようと狙っている。
 すでにロシアは出力3万5千㌔ワットの小型原子炉2基からなる海上浮体式の小型原発を製造し、運転を開始した。アメリカではバイデン大統領が原発の活用を掲げ、その中心に小型原発の開発を位置付けている。07年に創業した「ニュースケール・パワー」は数万㌔ワットの小型原発を開発中だ。日本のIHIやプラント大手の日揮ホールディングスもこのプロジェクトに参入する。

戦争切迫下、核武装狙う

 福島第一原発事故への労働者民衆の怒りと闘いで再稼働が思うように進まない中、日帝は「安全性が高い」と小型原発を推進しようとしている。ここが今、ロシアや米帝などとの原発を巡る争闘戦の焦点となっていることも、日帝を激しく突き動かしているのだ。
 日帝も米帝も「原発は二酸化炭素を排出せずクリーン」「温暖化を防ぐ」と、新たな「原発神話」のようなものを流布させようと企てているが、完全なうそだ。原発はウランの採掘から使用済み核燃料問題まで莫大(ばくだい)な電力を消費し、稼働により大量の温廃水を放出する。労働者や住民を被曝させ、チェルノブイリや福島のような大事故を繰り返すことになる。さらに小型原発開発は福島第一原発の放射能汚染水放出攻撃と一体だ。絶対に許せない。
 日帝が原発推進に固執するのは核技術の維持・向上と核兵器用プルトニウムの確保、核武装のためだ。米日帝の中国侵略戦争―核戦争の切迫が日帝の動きを加速させている。再稼働も小型原発開発も許さず、8・6ヒロシマ―8・9ナガサキ行動に立とう。中国侵略戦争を絶対に阻もう。
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