労働組合が必要だ! コロナ下で歴史的挑戦 米アマゾンでの闘いに続こう

週刊『前進』04頁(3199号03面02)(2021/06/21)


労働組合が必要だ!
 コロナ下で歴史的挑戦
 米アマゾンでの闘いに続こう

(写真 アマゾン労働者との連帯行動を行うトラック運転手の組合チームスターズ【2月23日 ペンシルベニア州フィラデルフィア】)

 昨年秋から、アメリカ南部アラバマ州のベッセマー物流拠点でアマゾンの労働者が労働組合結成の闘いに立ち上がった。今回の労組設立は実現しなかったが、超巨大IT企業の一角をなすアマゾンで新たな闘いが始まったことは歴史的だ。この闘いに学び、続こう。

全米から熱い注目集まる

 運輸・物流はもともと資本主義の動脈であり、特に新自由主義下では重大な意味を持つ。新自由主義下でアメリカの資本は労組破壊のために外注化を進め、また大工業地帯の中西部から生産拠点を次々に南部、さらに海外へと移転していった。外注化と工場移転、サプライチェーンの拡大により物流が一層死活的になったのだ。そしてアマゾンは「労組を絶対に作らせない会社」としても悪名高い。
 つまり、アマゾンは新自由主義時代のアメリカ帝国主義そのものであると言って過言ではない。だからこそ、この巨大な相手に挑戦したベッセマーの闘いは全米で注目され、聖書に出てくる少年と巨人の戦いになぞらえて「ダビデとゴリアテ」と言われた。

2万人が新型コロナ感染

 昨年、アメリカはコロナの世界的な震源地となった。ロックダウンのため通販は急成長し、最大手のアマゾンは40%以上成長した。またリモートワークの拡大もあり、アマゾンのクラウドサービスや顔認証システムなども増大した。世界一の富豪である同社CEO(最高経営責任者)ジェフ・ベゾスの個人資産は2千億㌦を突破した。
 物流倉庫で働く労働者、トラックの運転手などは、人間の生命の維持と社会の存続のために一日たりとも不可欠(エッセンシャル)な労働者とされ、外出禁止令から除外された。だが、アマゾン労働者自身の健康・生命はないがしろにされたのだ。全米80の物流拠点の多くでクラスターが発生し、会社側の発表でさえ感染者は2万人に上る。
 その原因は第一に、労働者が疲労困憊(こんぱい)し、抵抗力を低下させられたことだ。アマゾンが世界で販売しているITは、まず自社の労働者管理に使われている。一つの商品のバーコードを読み取ってから次の商品のバーコードを読み取るまでの間隔、箱詰めの個数、重量など、あらゆる動作が倉庫内のセンサーで監視され記録される(5月には個々の筋肉の緊張度までAIで監視するシステムの導入が発表された)。倉庫内の労働者の間で序列がつけられ、下位の労働者から解雇される。
 しかも、空調もない暑い所での重労働だ。労働者は昼食の時間もトイレに行く時間もとれず、ペットボトルで用を足していることが全米で問題になった。賃金は低く、良好な住居は確保できない。食事・休養は、医療以前に人間の健康を根本的に規定する。
 第二に、病休制度がない。コロナの疑いがあっても休めず、次々に感染が拡大した。第三に、クラスターが発生しても物流拠点を閉鎖しなかったため、クラスターはさらに大規模化した。マスクやガウンなどのPPE(個人用防護具)も支給されなかった。

生かされたBLM運動の経験と団結

 昨年5月のジョージ・フロイド氏虐殺への怒りの爆発以来、BLM運動はアメリカ史上最大・最長の街頭闘争となった。これまでほとんどデモなどなかった小さな街にまで広がった。それはまた、資本主義を根本から問い直す運動として、人種差別・分断を越えて白人・ラティノ・アジア系・先住民のかつてなく大衆的な共同闘争となった。各地で大衆自身が討議し、計画を立てて組織し闘った。
 黒人の労働者が85%を占めるベッセマー物流拠点の中から労働組合結成のために立ち上がったのは、他の場所での労働組合運動、そしてBLM運動を経験した労働者だった。こうした活動を主体的に担って得た自信が組合結成運動の核となったのだ。

あくどい切り崩しと対決

 アメリカの労働法制では、全国労働関係委員会(NLRB、日本の労働委員会にあたる)監督下の投票で当該事業所の労働者総数の50%プラス1人の票を獲得しなければ法的権利がある労働組合とは認められない。主要国中で最も厳しい制限だ。しかも19世紀以来の伝統を持つピンカートン社などのユニオンバスター(労組破壊専門家)会社が一大産業となっている。これらの社員が会社に「普通の労働者」であるかのように雇われ、労組結成運動にスパイとして入り込む。また労組反対の大小の集会や上司による恫喝、1日5通もの反労組メールなど、ありとあらゆる手段で労組支持を切り崩してくる。
 こうした攻撃は、労組結成運動が公然化した時から圧倒的物量をもって行われる。労働組合が結成されたら事業所を閉鎖するという恫喝も行われる。実際、アマゾンはカナダで一つの物流倉庫を閉鎖し労働者を丸ごと解雇している。また労組設立の活動をした労働者の解雇は違法だが、資本は法律を無視する。
 このような条件の中で、果敢に労組結成に挑戦したのだ。2020年11月にRWDSU(小売・卸売・デパート労組)がNLRBに同労組支部を設立する手続きを申請し、会社側のさまざまな異議との応酬を経て、2〜3月に郵便投票が行われた。5800人の労働者のうち1798票が労組設立に反対、738票が賛成だった。
 労組結成運動を始めた労働者たちは、どんなに困難であっても「絶対に過半数をとる」と闘ってきた。この敗北の悔しさをかみしめ、労組結成運動のあり方や現場労働者が活動方針の形成に積極的に参加することの必要性など、さまざまな点をめぐり次の勝利に向けた議論が始まっている。
 職場で資本と激しく闘いながら新たに団結をつくり出すことは容易ではないが、これに正面から取り組む労働者活動家が着実に増えている。全米各地の物流拠点や運転職場、「個人請負」の労働者からRWDSUへの問い合わせが次々に来ているという。全世界の労働者に展望を指し示したアマゾンでの闘いと連帯し、日本でも続こう!
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