オリンピックをぶっとばせ 全人民の怒り解き放とう

週刊『前進』04頁(3201号02面01)(2021/07/05)


オリンピックをぶっとばせ
 全人民の怒り解き放とう


 医療崩壊、学校観戦動員、福島圧殺を打ち破り、東京五輪粉砕へ闘う最前線の現場からアピールが発せられました。医療・介護・福祉労働者、教育労働者、福島からの訴えに応え、五輪動員拒否の闘いを巻き起こし、7・23渋谷デモに総決起しよう。(編集局)

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医療
 社会の根本的変革を
 介護現場はすでに限界

(写真 都立病院の独立行政法人化反対・オリンピック中止を掲げたデモに沿道から圧倒的な注目が集まり、声援がとんだ【6月12日 東京・府中市】)

 私は、特別養護老人ホーム(特養)で看護師をしています。
 菅政権は何としてもオリンピック・パラリンピック開催を強行しようとしています。しかし、全国で新型コロナウイルス感染者数は再び増加傾向に転じ、命の選別であるトリアージが当たり前になっている現実。ワクチンを2回接種して来日したウガンダの選手が2人も陽性になったこと。幼稚園・保育園、小・中・高校などの子どもたちが「学徒動員」さながらに観戦に動員されること。コロナだけでなく熱中症やけがなども含め、「もうこれ以上の患者は診られない」という医療現場からの悲鳴......枚挙にいとまがない不安要素だらけの開催に、〝五輪中止!!〟の声は日々高まっています。それは、どんなに医療や介護現場が崩壊しようが、どんなに労働環境が破壊されようが、どんなに生活困窮者や自殺者が増えようが、そんなことはお構いなしで補償も一切しない「一握りの資本家・新自由主義者たちの社会」に、多くの人がおかしいと気付き始めたからではないでしょうか。
 〝五輪中止!!〟の行動は五輪を中止させるためだけのものではなく、命がないがしろにされているこの社会のあり方を根本から変革=革命することを目指した闘争なのではないかと思います。

クラスターが発生しても入院できず

 私が勤める法人では、今年の1~2月にかけて二つの特養でご利用者・職員合わせて30人規模のクラスターが発生しました。特に一つ目の事業所では感染者に接触した職員が次々に濃厚接触者と判断され、2週間の休業を余儀なくされました。同じ敷地内にあるデイサービスは保健所の指導の下に休業となり、特養の職員が支援に入ったり法人内でも応援体制をとったりして支え合いました。しかし、それでも業務が回らず、1日2食しか提供できなかったり、通常は1日5、6回入る排泄(はいせつ)援助に2、3回しか入れなかったりする期間が1週間も続きました。
 特養は介護(生活)の場であり病院ではないので、施設で治療(酸素投与や点滴)はできません。ご利用者の状態が悪化した時に入院できるベッドがなければ、その施設でみとるしかないのです。入院していれば助かったかもしれない人を「入院できる病院がない」という理由でみとらなければならないなんて、どれほど悔しいでしょうか。
 また、コロナ患者を受け入れている病院には国からの助成金がありますが、介護施設には1円の給付もありません。休業を余儀なくされたデイサービスの減収分についてさえも補償は一切ないのです。これは1980年代以来、「医療費がかさめば国が亡(ほろ)びる」という「医療費亡国論」に基づいてベッドや人員を大幅に削減し、介護保険制度によって介護を民営化してきた国の責任です。
 今、都立病院や公的病院が独立行政法人化されようとしていますが、その最大の目的は「独立採算=税金で運営を保障しないこと」であり「労働組合=労働者の団結を解体すること」です。介護現場はその先駆けです。社会保障としての医療や介護を実現するためにも、病院の独法化を止めなければなりません。

責任とらぬ資本家実力闘争で命守る

 また、都内の精神科病院に併設された訪問事業所でも職員5人のクラスターが発生しました。その法人の幹部は「(陽性となった職員が)職場で感染したとは限らないからPCR検査の必要性はない」「職場で定期的にPCR検査をして陽性者が出たら対応に困るから今のところは検査をしない」と言ったそうです。クラスターが起きた後でさえ責任を取らない、これが資本家たちの正体です。五輪が開催され感染者が増えればどうなるかは言わずもがなです。
 しかし「国は命を守らない」ことに気づいた多くの人たちが戦争・改憲・五輪強行に突き進む菅政権に対して根底的な闘いを始めました。医療・介護・福祉労働者のストライキ! 五輪開催や学校観戦中止の決議! ワクチン接種強制反対の闘い! 「都立病院をなくすな!」「五輪中止!」のデモの高揚! これらの実力闘争が厚い壁に穴を開けています。生き抜くために団結して革命を手繰り寄せる、それこそが労働者階級の力ではないでしょうか。
 医療・介護・福祉労働者は命を守る革命闘争の最前線に起(た)ちます。
 「五輪は中止だ! 中止‼」(東京 大空茜)

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教育
 教育労働者は改憲阻止の先頭に立つ
 現場の決起で完全中止へ
 学校観戦は現代の「学徒動員」

(写真 学校観戦中止の申し入れに先立ち、改憲・戦争阻止!大行進神奈川が横浜市役所前でサイレントデモ【7月1日】)

 東京オリンピック・パラリンピックの観戦に東京都90万人を含む全国128万人の子どもたちを動員する「学校連携観戦」をキャンセルする自治体が続出しています。もう一押しで完全に中止に追い込むことができます。全国の教育労働者のみなさん! 渦巻く五輪開催への怒りを組織し、改憲阻止・五輪粉砕・菅打倒の先頭に教育労働者が立つことを呼びかけます。そして五輪粉砕の闘いを突破口に、今こそ教職員組合を再生させ、新自由主義打倒へ反撃を開始しましょう!

戦争体制づくり打ち破れ

 「学校行事や部活よりも五輪開催が優先」「子どもや教職員の命を犠牲にしてまで五輪観戦」「学校観戦は観戦上限1万人とは別枠」----こうしたあり方に怒りが噴出しています。
 なぜここまでして菅政権は五輪開催を強行しようとするのか。SNSでは、第2次大戦期の無謀な計画で膨大な犠牲を払った「インパール作戦」や「学徒動員」を彷彿(ほうふつ)させるとの投稿があふれています。かつてナチスドイツは、1936年ベルリンオリンピックを独裁権力強化と国威発揚のてことし、領土拡大とユダヤ人迫害を激化させていきました。
 そして今日、日帝・菅政権は4・16日米首脳会談で「台湾有事」に言及し、対中国侵略戦争を構え改憲と戦争体制づくりに突進しています。「五輪戒厳令」を敷き、国威発揚のなかで危機を突破し改憲・戦争に向かおうとしているのです。
 「戦争は教室から始まる」という教訓があります。かつての戦争もそうであったように、支配者は戦争動員に学校を利用します。私たち教育労働者は断じてそれを許さない。改憲に反対し「教え子を再び戦場に送らない」闘いとして学校観戦を中止させ、五輪を粉砕しましょう。

新自由主義打倒へ反撃を

 また、五輪粉砕の闘いは新自由主義に対する反撃ののろしです。この40年間の新自由主義教育の矛盾と破綻がコロナ下で浮き彫りになりました。学校現場の「五輪どころではない」という声は、新自由主義教育への怒りでもあります。
 すでに現場は長時間・過重労働で限界に達しています。公立小学校教員の採用倍率は全国平均2・6倍で過去最低を更新。教師の仕事の魅力を広めようと文部科学省が始めた「#教師のバトン」プロジェクトでは、その狙いとは裏腹に、「超過勤務中は時給80円」「子どもには会いたいけど明日が来なければ良いのにと毎日思ってる」「教員志望、高3です。教員なるの諦めるわ。希望を持てないこんな労働環境じゃ」という悲痛な叫びがツイッターを埋め尽くしました。
 これらは新自由主義「教育改革」の必然的帰結です。それは差別や戦争を許さないと闘ってきた教職員組合・職場の団結を破壊することを核心にして、公教育を解体し、民営化、外注化、非正規職化を推進していく攻撃でした。危機にあえぐ日本資本主義が「国際競争に勝ち抜くため」と称して資本の論理で次々と強いてくる教育政策が、職場も教育内容も一変させました。評価制度の導入による競争と分断、能力主義と成果主義が職場の協働を破壊し、パワハラが横行。学力テストなどによる子どもたちの序列化は教育格差の拡大に拍車をかけました。教職員も子どもたちも精神的に追い詰められています。
 しかし、教育崩壊をもたらした連中は責任を何一つ取らない。それどころか、コロナを利用して、破廉恥にも「#学びを止めない」などと、小中学生に1人1台のパソコンやタブレット端末を配備する「GIGAスクール構想」を全国で開始し、新自由主義の破産を一層の新自由主義で上塗りしようとしているのです。
 私たちは教育労働者の誇りにかけ、これを絶対に許しません。現場では日々、政府・財界の教育破壊に立ち向かい、教育のあり方から子どもたちとの接し方に至るまで教え合い学び合いながら、地域や保護者とも協力して学校をつくってきました。教育という人間と人間の生身の関係を、「個別最適な学習」をうたいAIや民間企業にとって代われなどと言う政府・財界に対し絶対反対で闘います。
 現場の怒りは煮詰まり、社会の根底的変革へ向けた欲求が渦巻いています。大阪市の小学校の現職校長・久保敬氏が松井市長に送った「提言」が反響を呼んでいるのはその表れです。
 「学校は、グローバル経済を支える人材という『商品』を作り出す工場と化している。......教職員は、子どもの成長にかかわる教育の本質に根ざした働きができず、喜びのない何のためかわからないような仕事に追われ、疲弊していく」「競争に打ち勝った者だけが『がんばった人間』として評価される、そんな理不尽な社会であっていいのか」「根本的な教育の在り方、いや政治や社会の在り方を見直し、子どもたちの未来に明るい光を見出したいと切に願うものである」
 このように管理職でさえ根本的な矛盾を指摘しています。これを真に実現する力は、学校現場を回している教育労働者の団結した力、すなわち闘う教職員組合の再生にかかっています。

今こそ教組再生へ闘おう

 現場から声を上げていく時が来ています。
 五輪観戦を全ての学校で辞退した自治体は埼玉県で71%、神奈川県で64%、千葉県で50%にのぼり、全国でも相次いでいます。最大の攻防点である東京の自治体も続々と辞退を決定し始めました。地域や学校現場の怒りが教育委員会を突き動かしています。学校観戦を中止させ菅を倒すもう一押しは教職員組合の動員拒否の決起です。「現場のことは現場が決める!」と訴え、教職員組合を今こそ再生させる時です。
 そしてGIGAスクール構想=教育のデジタル化攻撃粉砕の闘いに立ち上がりましょう。菅が今国会で制定したデジタル独裁法は、文科省とのパートナーシップ路線(1995年)を掲げる日教組本部と文科省によって現場を支配してきたあり方をも一掃し、首相独裁で現場を支配していくことを狙うものです。まさに「労組なき社会」化攻撃です。これは改憲・戦争と教育の民営化をめぐり国家・当局との非和解の激突になります。首相―首長のトップダウンによるGIGAスクール構想の強制と対決し、職場支配権を打ち立て全国で破綻させましょう。
 闘う力は職場にあります。成果主義による競争と分断を許さず「ひとりの仲間も見捨てない」職場をつくり出そう。非正規職解雇を正規と非正規の団結ではね返そう。職場の問題を教育の民営化攻撃、改憲・戦争攻撃と見据えて粘り強く闘い、団結を強化し、そのなかから闘う教職員組合を再生させよう。
 職場と地域から五輪粉砕へ闘い抜き、全国から7・23渋谷―8・6ヒロシマ闘争へ総決起しましょう!
〔革共同教育労働者委員会〕

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福島
 何が「復興五輪」か!
 子どもたちに被曝強制
 椎名 千恵子


(写真 4月13日、福島原発汚染水の海洋放出決定に県庁前で抗議)

 安倍前首相が「(福島第一原発事故は)アンダーコントロール」とウソを並べたてて招致した東京オリンピック。でたらめな「福島復興」をアピールするためのものでしかない。だが、小児甲状腺がんなど大人も含め健康被害が増え続けているのが福島の現実だ。命を、人生を、古里を、子どもの未来を奪われ続けている福島。どうして、こんな「復興五輪」を許せよう。

高校生が原発見学

 ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・チェルノブイリで核の負の歴史を重ね、福島第一原発事故で「核・原発と人類は相いれない」ことを思い知ったはず。にもかかわらずこの国は国民を踏みにじる。この大うそは、原発利権をわが物とし資本主義社会を生きながらえさせようとする資本の論理から始まっていると考える。支配者は、自分たちが危うくなると戦争に向かう。戦争体制構築のために、子どもを「洗脳」することを常套(じょうとう)手段にする。
 原発事故の際、政府は放射線量を正しく伝えず、子どもたちを大量に被曝させた。さらには現在、子どもを標的に「安全・安心」教育を推進している。双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」への修学旅行と、ここでの福島の教員の研修。経済産業省職員による高校への出前授業。高校生に福島第一原発の原子炉建屋を見学させ、メディアが入ると防護服を脱がせて撮影。新聞やインターネットで「子どもでさえ通常服」と、収束作業が進み「福島は安全」と描き出した。

「安全」演出する菅

 五輪に向かっての菅政権の攻撃もすさまじい。「福島は安全」と世界にアピールするために3月25日、高濃度に放射能汚染されたJヴィレッジ(楢葉町・広野町)から聖火リレーをスタートさせた。
 ソフトボールと野球の試合会場になる福島市のあづま球場では、放射能に汚染された天然芝を人工芝に張り替える作業に地元の中学・高校の野球部員を動員。テレビ画面で、マスクなしで笑顔を演出させる始末だ。子どもたちを次々と被曝させ、「安全・安心」の虚構を吹きこんだ。
 あづま球場での試合には「学校連携観戦プログラム」として最大7150人の観客数上限とは別枠で小中学生を動員しようとしているが、キャンセルの意向を示す学校も出始め、市医師会は「児童生徒の招待は行わない」よう要請した。だが、内堀雅雄知事は「安全・安心な大会として開催されるよう準備を進めていく」と語っているのだ。
 菅政権も内堀知事も、コロナ感染リスクや被曝への懸念をみじんも持ち合わせていないのだ。「復興五輪」と表裏一体で起きていることは深刻だ。6月21日に行われた第17回甲状腺検査評価部会での発表では、甲状腺がんないしその疑いとされた患者の数は256人となった。その人たち以外にも、30人近い甲状腺がん患者が存在するとも言われている。これが福島の現実だ。何が「復興五輪」か!
 東京五輪は即中止しかない。

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