自衛隊アフガン派兵を弾劾する 「邦人救出」を口実に侵略出兵

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週刊『前進』04頁(3209号03面01)(2021/09/06)


自衛隊アフガン派兵を弾劾する
 「邦人救出」を口実に侵略出兵

(写真 8月24日、埼玉県の入間基地から出発するC130輸送機と隊員)


 8月15日のアフガニスタンの首都カブールの陥落とタリバンによる政権掌握は、20年にわたる米国史上最長の侵略戦争が、ベトナムでの敗北をも超える米国史上最大の大破産・大惨敗として歴史に刻まれた瞬間だった。(本紙前号3面論文参照)
 26日にはカブール空港近くでIS(イスラム国)系勢力による自爆テロが起き、アメリカ帝国主義が侵略戦争の正当化のために掲げた「テロ根絶」なる欺瞞(ぎまん)的スローガンにも最後的破産が突きつけられた。米バイデン政権はミサイルで報復攻撃を行い、「ISの自動車テロを未然に阻止した」と発表したが、29日にカブールで攻撃された車両は無関係の民間人のもので、子ども5人を含む10人が虐殺された。
 戦争状態が続くアフガニスタンに対し、菅政権は22日に開いたNSC(国家安全保障会議)で自衛隊法84条の4「在外邦人等の輸送」に基づく自衛隊派兵を決定、23日以降、隊員約260人を航空自衛隊入間基地から出発させた。

戦闘を想定し陸自の精鋭部隊を投入

 菅政権は当初、大使館員やJICA(国際協力機構)職員など500人以上の輸送計画を打ち出し、派兵の「緊急性」と「死活性」をあおったが、結果は日本人1人とアフガニスタンの政府関係者14人を輸送しただけで27日にはパキスタンに引き揚げ、「邦人輸送作戦」としては大失敗に終わった。31日には、米軍の撤退完了に伴い自衛隊にも撤退命令が出された。
 だが重大なことは、今回の自衛隊派兵が、「邦人救出」を口実とした明確な侵略派兵であり、一個の戦争行為として行われたという事実だ。派兵された部隊は空自が主力であるかのように報じられているが、約260人のうち100人は陸上自衛隊中央即応連隊という、地上戦闘に特化した陸自の精鋭部隊で占められた。84㍉無反動砲などの強力な重火器で武装した正真正銘の戦闘員だ。これだけの規模の地上部隊を現地政権との同意もなく投入したこと自体が、重大な侵略行為にほかならない。
 今回、自衛隊が「在外邦人等の保護措置」(自衛隊法84条の3)を法的根拠とする本格的な戦闘行為に踏み込めなかったのは、「当該外国との同意」という条件がタリバンとの間で満たされなかったからにすぎない。だがこれを機に、自民党などからは「同意なしでも制限なく武器使用ができるようにしろ」と自衛隊法のさらなる改悪を要求する声が噴き出している。

改憲・戦争に突き進む菅政権倒そう

 アフガニスタンは、米日などが進める「インド太平洋戦略」と中国の「一帯一路経済圏構想」の双方にとって極めて重要な位置にある。それゆえ欧州帝や日帝などの各国は、米軍撤退を前に競って軍隊を派兵し、アフガン戦争敗北の巻き返しと現地情勢をコントロール下に置くことを狙った。だが、事態は帝国主義各国の狙い通りには進まず、日帝はその中で最も惨めな敗北を突きつけられた。この現実を前に、菅政権は今まで以上に改憲・戦争への衝動を募らせている。
 コロナ下での五輪・パラを強行し、労働者民衆に塗炭の苦しみを強いながら、戦争・改憲と排外主義の大宣伝で延命を図る菅政権に、この秋、労働者階級の怒りの総反撃をたたきつけよう。

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