戦争協力に走る日本共産党 選挙公約から「安保廃棄」削除 野党連立政権の反人民性露わ

週刊『前進』04頁(3209号03面02)(2021/09/06)


戦争協力に走る日本共産党
 選挙公約から「安保廃棄」削除
 野党連立政権の反人民性露わ


 大恐慌とコロナ・パンデミックは、新自由主義の歴史的破産を突き出している。資本主義・帝国主義の命脈は尽きた。単なる与野党の政権交代や改良ではなく、社会の根底的変革=革命が必要だ。だが、資本主義体制が危機に瀕(ひん)しているからこそ、支配階級は強権と暴力、戦争に訴えても生き延びようとする。これ以上、命と生活を奪われてなるものか! 全世界で労働者人民が生存をかけた闘争に立ち上がっている。この時、労働者人民の闘いを議会主義、合法主義の枠の中に押しとどめ、強まる日米帝国主義の中国侵略戦争策動との対決から逃げ出し、屈服と転向を深めているのが日本共産党スターリン主義だ。

共産党の歴史的な転向声明

 日本共産党の田村智子政策委員長は7月9日の記者会見で、次期衆院選で日米安保条約廃棄を党の公約に盛り込まないことを表明した。田村は「立憲民主党などとの政策の一致点を公約に掲げる」「めざす連立政権の中で、安保条約廃棄は一致点として求めない」と語った。
 志位和夫委員長も8月4日の共産党創立99周年記念講演会で、「すでに野党間には、憲法違反の安保法制を廃止する、辺野古新基地建設は廃止するなどの一致点があります」「こうした緊急の課題での共同に対しては、日本共産党は安保条約廃棄という党の独自の立場を持ち込まず、一致点で共同を発展させます」と語り、安保条約廃棄を選挙公約から外したことを正当化した。
 これは共産党の歴史的な転向声明に等しい。選挙公約から外すことは安保条約廃棄を最後的に投げ捨てることだ。田村と志位はこの裏切りをごまかすために、「緊急の課題での共同を進めながら(党としては)日米安保条約廃棄の多数派をつくる」と強弁し、これを「二段階構え」「二重の取り組み」と称しているが、とんでもないペテンだ。現実には通用しない。
 そもそも共産党が連立の相手と見込む立憲民主党の代表・枝野幸男は、自著『枝野ビジョン―支え合う日本』で何と言っているか。「新しい立憲民主党の綱領も『健全な日米同盟を軸に』とその基本方針を明記しており、私はそれを進展させたい」「しかし米国から見た日米同盟の本質を踏まえれば、日本の防衛を米国の協力だけに依存することはできない」「特に尖閣防衛を考えたとき、米軍による十分な関与が得られない場合に備えた、日本自身の対応力を強めることこそが求められる」
 つまり枝野は、日米安保同盟堅持の上で、米軍に頼るのではなく自衛隊が独力で「尖閣防衛」=対中国戦争に踏み切ることを求めている。「野党共闘」の安保法制廃止や辺野古反対も、「日本が独自で戦争をやれる帝国主義になれ」という立場で主張していることは明らかだ。だから志位が言う「一致点で共同を発展させる」とは実際上、立憲民主党・枝野と同じ立場、すなわち日米安保条約賛成の立場に立つこと以外の何物でもない。
 日本共産党は2004年の綱領改定で「労働者階級」の概念を一掃し、「労働者の党」から「国民の党」へ、すなわち資本家階級をも味方に含む愛国の党への転換を表明した。さらに20年1月の綱領改定では中国に関する見解を根本的に転換し、排外主義を公然化させた。中国を念頭に置いて、「いくつかの大国で強まっている大国主義・覇権主義は、世界の平和と進歩への逆流」と記し、記者会見で志位は「尖閣列島」問題で「安倍政権はだらしない外交をやっている」と非難、共産党の綱領改定こそ「中国に痛手となる」と自慢した。彼らは今、この排外主義の新綱領に沿って、時には安倍―菅政権以上の激しさで中国を非難している。

米日の中国侵略戦争に加担

 米バイデン政権は、3月に発表した「国家安全保障戦略の指針」で、中国を「安定的で開かれた国際システムに挑戦することができる唯一の競争相手」とみなし「打ち負かす」と宣言した。〈コロナ×大恐慌〉のもとで歴史的没落と階級支配崩壊の危機に直面する米帝は、中国侵略戦争を決断し、具体的に準備している。「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する」と宣言した4月の日米首脳会談はその画期となった。アフガニスタンからの敗退、新自由主義政策の総破綻の中で、危機が深まるからこそ米帝は中国スターリン主義解体のための侵略戦争に一層のめり込んでいく。
 日帝は日米安保同盟のもとで米帝と共に対中国戦争体制を強化し、さらに独自の軍事大国化、侵略戦争ができる帝国主義への脱皮を図ろうとしている。
 折しも7月5日、麻生太郎副首相兼財務相は都内で講演し、台湾情勢をめぐり「大きな問題が起き、日本にとって『次は』となれば『存立危機事態』に関係してくる。日米で一緒に台湾の防衛をやらないといけない」と発言した。
 これはこれまでの日中関係の基本(「台湾は中国領土の一部」とする1972年の日中共同声明の立場)を否定したという点で、重要な歴史の画期である。そして戦前、日帝が50年間、台湾を植民地支配したのと変わらない帝国主義者の感覚・発想で、台湾問題を日本の「存立危機事態」と叫び、軍事力を行使して介入すべきことを公言したのである。麻生はさらに「台湾の次は沖縄」とも発言し、沖縄の軍事的な重要性を強調した。
 実際、麻生発言を裏付けるように米軍・自衛隊は現在、「台湾有事」「尖閣有事」を想定した軍事演習を繰り返し、沖縄諸島や奄美大島にミサイル基地を建設し、対中国の戦争体制を強化している。
 この麻生講演について共産党は7月6日付の「しんぶん赤旗」で報道した。ところが、一言の批判も弾劾もしなかった。9日の田村の記者会見でもまったく問題にしなかった。「集団的自衛権」「存立危機事態」という安保戦争法の具体的発動が問題となっているにもかかわらずである。
 さかのぼれば志位は6年前、「集団的自衛権」を認める安保戦争法が強行された直後の15年10月の記者会見で、記者から質問されて次のように答えている。
 「(共産党も参加する国民連合政府のもとでは)自衛隊は現行自衛隊法で運用する。日米安保も現行の条約の枠内で対応する。第5条には『日本が武力攻撃を受けた際には共同対処』となっているが、政府としてはそのように対応する」
 これは今日的には、共産党も参加する野党連合政権のもとで「台湾有事」となれば、自衛隊と日米安保を積極的に運用して戦争をやるという表明である。共産党や立憲民主党の連立政権が「台湾有事は日本の存立危機事態」だという麻生と同じ口実で、日米の中国侵略戦争を支持し加担していくことは、前述の枝野発言からも明らかである。
 共産党は「海外への侵略戦争」と「日本を守るための自衛戦争」を区別立てして後者を承認するが、そもそも「日本を守る」とはどういうことか。それは「資本家階級が労働者階級を支配し搾取する帝国主義国家を守る」「賃金奴隷制の国家を守る」ことである。コロナ禍で労働者人民が命・生活を奪われ苦しんでいる対極で一握りの大資本家が大もうけし、年間5兆円もの税金が軍隊と戦争に投入される----どうしてこんな強盗的な国家を労働者階級が守らなければならないのか。断じて否だ!
 さらに海外派兵も「日本を守るため」という口実で行われることは、麻生の発言からも明らかだ。帝国主義の海外派兵―侵略戦争はいつでも「正義の旗」を掲げて、「自衛の戦争」と称して行われるのだ。

階級的労働運動で革命を!

 ロシア革命の指導者レーニンは、第1次世界大戦の勃発に当たって全ヨーロッパの労働者階級に、「この帝国主義的・植民地的・略奪的な戦争を、国民的・防衛的な戦争と見せかけようとしているあらゆる国のブルジョアジーの貪欲なうそ」を暴いて自国政府打倒のために闘うことを呼びかけた(「第2インターナショナルの崩壊」)。そしてロシア労働者階級と共に、戦争を革命に転化して勝利した。今、日本の闘う労働者階級とその党に、同じ課題が正面から問われている。
 先の国会で立憲民主党は改憲のための国民投票法案改定に賛成するという大裏切りを行った。共産党はそれを批判しないどころか、「安保条約廃棄」まで選挙公約から外すというのだ。政府の新自由主義政策で医療が壊され、コロナで労働者人民の命と生活が奪われているこの時に、共産党はこの反人民的な資本主義国家と闘うのではなく、帝国主義の軍門に降り、中国侵略戦争に加担しようとしている。また、「護憲」を掲げて延命してきた社民党も新自由主義の破綻の中で解党、消滅の寸前にある。
 そのことは、新自由主義を終わらせる労働運動、階級的労働運動が真価を発揮する時代が来たということだ。08年リーマン・ショックからの世界大恐慌は、新自由主義の破綻であるとともに1929年の世界恐慌から積み重なってきた資本主義・帝国主義の全矛盾の爆発だ。帝国主義には新自由主義に代わる延命の道はない。〈コロナ×大恐慌〉をプロレタリア革命に転化することだけが戦争を阻み、労働者階級人民の未来を開くことができる。
 労働者階級にはその力がある。労働者階級は「資本主義的生産様式の変革と諸階級の最終的廃止とをその歴史的使命とする階級」だ(マルクス『資本論』)。「資本主義の枠内での改革」などという共産党の路線が完全に破産した中で、資本家との非和解性を貫く階級的労働運動が真に力を発揮する時代が来たのだ。
 コロナ下で医療労働者のストライキ、入管法改悪を粉砕した国会闘争、辺野古新基地とオスプレイなどの軍事演習を許さない沖縄・全国の反基地闘争、「黒い雨」訴訟で上告断念に追い込んだ反核・反原発闘争、そして東京五輪・パラリンピック粉砕闘争、学校観戦絶対反対の闘いなど、階級的団結と階級闘争の復権が始まっている。
 労働者階級の団結と実力闘争、ストライキを復権させた時、新自由主義を打倒する展望が開ける。11月全国労働者集会に労働者人民の怒りを総結集し、菅政権打倒、新自由主義打倒の労働運動をつくり出そう。日本共産党スターリン主義を打倒し、プロレタリア革命に突き進もう。

▼存立危機事態 日本が直接攻撃を受けなくても、「我が国と密接な関係にある他国」が武力攻撃を受けたり、海上交通路が封鎖されるなどして「我が国の存立が脅かされる」「国民の生命や自由が根底から覆される」と見なした場合は、集団的自衛権を発動し武力行使できるとするもの。2015年制定の安保戦争法で、自衛隊が戦争をするためにつくられた規定。

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