焦点 防衛費の概算要求 歯止めなき軍備拡大に道を開く

週刊『前進』04頁(3209号03面03)(2021/09/06)


焦点
 防衛費の概算要求
 歯止めなき軍備拡大に道を開く


 2022年度予算編成で、防衛省は5兆4797億円を概算要求した。要求額としては前年度を約100億円下回るが、年末に閣議決定する実際の22年度防衛費は、過去最高額となる可能性が大きい。労働者人民が新型コロナパンデミックのもとで耐えがたい苦しみを味わっている今この時に、菅政権は、軍備増強・戦争準備に湯水のように金を注ぎ続ける姿勢を変えようとしない。
 概算要求の内訳を見ると、以下のような数字が並んでいる。
 ステルス戦闘機F―35A(8機)取得に779億円、同F―35B(4機、垂直着陸可能)に521億円、固定翼哨戒機P―1(3機)取得に776億円、護衛艦(2隻)建造に1112億円、潜水艦(1隻)建造に723億円、さらに弾道ミサイルの取得と研究・開発に1396億円、宇宙関連経費840億円、サイバー関連費345億円。
 護衛艦「いずも」改修(空母化)には67億円が見込まれる。
 そして、陸上自衛隊の南西地域への輸送機能強化のため、中型と小型の輸送艦艇計2隻取得に102億円を計上。これら輸送艦は23年度末に導入し、新設する「海上輸送部隊」に配備され、石垣島、宮古島、奄美大島などの南西諸島へ弾薬や車両を輸送する。
 南西警備部隊などの配置に伴う「施設整備費」には215億円を要求。22年度末に、現在は自衛隊空白地である石垣島に駐屯地を開設する予定で、警備部隊、地対空・地対艦ミサイル部隊を570人規模で発足させるという。
 一方、新規後年度負担(米国から兵器を購入するためのローン)は、21年度当初比7・8%増の2兆7963億円で過去最大となった。菅政権はとてつもないツケを重ねながら、米帝から兵器を「爆買い」し続けるというのだ。

宇宙・サイバー・電磁波

 防衛省の「令和4年概算要求の概要」の前書きには、「周辺各国が防衛費の大幅な増額等により軍事力の強化を図るなど、我が国周辺の安全保障環境がこれまでにない速度で厳しさを増している」などと書かれている。
 そして冒頭から「宇宙・サイバー・電磁波といった新領域」での防衛強化、「ゲーム・チェンジャー」となりうる技術等の研究開発を叫んでいる。ゲーム・チェンジャーとは、従来の軍事バランスを一変するような兵器や技術のこと。ゲームのように戦闘や人殺しができるドローン、無人機、レーザー兵器、ロボット兵器、人工衛星、サイバー攻撃、電磁波攻撃などの高度技術部門について、研究・開発、基盤強化、人的育成・配置などを進めるということだ。

「1%枠」外しをも公言

 菅首相は「ニューズウィーク」誌のインタビューで「日本政府は防衛費をGDP(国内総生産)の1%以内に抑えるというアプローチは取っていない」と明言した(8月24日付)。麻生財務相は8月10日の記者会見で「中国の軍備拡張や台湾海峡の問題など、いろいろな状況を考えて、抑止力として、相手の軍備費(防衛費)が伸びれば、それに対応するのは当然だ」と述べた。
 帝国主義としての生き残りをかけて、「専守防衛」の建前も完全にかなぐり捨て、中国侵略戦争へと向かう菅の意志表明こそこの防衛費の概算要求だ。絶対に許してはならない。命と生活を踏みにじって改憲・戦争を進める菅政権を今こそ打倒する時だ。
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