対中国 侵略軍隊化する自衛隊 南西諸島をミサイル基地化 「第2の沖縄戦」絶対に許すな

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週刊『前進』04頁(3215号03面01)(2021/10/18)


対中国 侵略軍隊化する自衛隊
 南西諸島をミサイル基地化
 「第2の沖縄戦」絶対に許すな


 岸田首相は10月8日に行った所信表明演説で、安倍政権が2013年に策定した「国家安全保障戦略(NSS)」の改定と、18年12月策定の「防衛計画の大綱(防衛大綱)」および「中期防衛力整備計画(中期防)」の前倒し改定を打ち出した。続いて自民党が12日に発表した衆院選の政権公約では、防衛費について「GDP(国内総生産)2%以上も念頭に増額を目指す」と明記された。中国との戦争に向けた日米安保の大再編、敵基地攻撃能力も含む自衛隊の実戦部隊化、「台湾有事」を想定した南西諸島のミサイル基地化が一気に進められようとしている。その先にあるのは「沖縄戦の再来」だ。絶対に許すことはできない。

ついに空母保有した日帝

 4月日米首脳会談の共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」に言及し、「(日本は)自らの防衛力を強化する」と明記して以来、この半年間で米日による対中国戦争の準備が急ピッチで進められ、台湾海峡をめぐる軍事的緊張は飛躍的に高まった。米日豪印4カ国(クアッド)を軸に中国包囲網の構築を急ぐアメリカ帝国主義・バイデン政権は、台湾海峡周辺へ空母打撃群を投入するなど中国に対する軍事的重圧を強め、英独仏なども艦船を派遣して「対中国シフト」をとった。台湾・蔡英文政権もアメリカから最新鋭兵器を次々と購入し、米軍などと連携した軍事演習を強化。中国・習近平政権はこれに激しく反発し、台湾の防空識別圏内に中国軍機を侵入させるなど対抗措置を強めている。
 台湾海峡をめぐり、この間も極めて重大な事態が続発している。10月2、3日には米原子力空母カール・ビンソン、同ロナルド・レーガン、英空母クイーン・エリザベス、海上自衛隊のヘリ搭載艦「いせ」などを中心に、オランダ、カナダ、ニュージーランドの艦船も加えた6カ国計17隻の共同訓練が台湾の東側海域で行われた。西太平洋で米英の空母3隻が同時展開するのは異例であり、中国側は「1996年の台湾海峡危機のときに米軍が台湾海峡に派遣した空母2隻を上回る歴史的事態」と受け止めているという(10月5日付朝日新聞)。10月4〜9日には同じ6カ国が南中国海でも共同演習を実施。これに先立ち9月27日には英フリゲート艦リッチモンドが台湾海峡を通過した。「攻撃能力のある英軍艦の台湾海峡通過が公になるのは初めて」という(9月28日付日本経済新聞)。
 こうした中、空母への改修が進む海自護衛艦「いずも」が10月3日、四国沖で米海兵隊戦闘機F35Bの発着艦訓練を初めて行った。日本の艦船が固定翼機を着艦させたのは第2次大戦終結後初となる。これまで日本政府は自衛隊という事実上の「戦力」を保持しながら、「空母、爆撃機、大陸間弾道弾といった攻撃兵器は持っていない」として、憲法9条が禁じる「戦力」には当たらないと言い張ってきた。だが今やそうした「専守防衛」の建前すらも投げ捨て、他国に接近して基地や艦船を攻撃できる強力な対外攻撃能力を持つに至った。これ自体が極めて挑発的な戦争策動だ。

台湾有事へ最前線基地化

 米日による台湾有事=対中国侵略戦争の最前線に位置づけられるのが、九州南端、奄美大島、沖縄本島から先島諸島(宮古列島、八重山列島)を含む南西諸島だ。「台湾有事なら沖縄・鹿児島も戦域に。これは軍事的に常識」と前統合幕僚長の河野克俊は言った(9月2日付南日本新聞)。これらの地域は実際に戦争が始まれば直ちに戦場と化す。かつての沖縄戦と同様「捨て石」とされる。
 米国防総省が2010年に策定した作戦構想「エアシーバトル」では、沖縄や先島諸島を「琉球の防壁」と呼び、在日米軍の主力部隊をグアムなどへ退避させる一方、残留する米軍部隊と自衛隊が第1列島線(地図参照)付近で中国軍と戦うことが想定された。これを背景に、釣魚島(尖閣諸島)をめぐり中国との対立を激化させた当時の日本政府(民主党・菅直人政権)は、同年策定の防衛大綱と中期防で島嶼(しょ)部への自衛隊配備を初めて明記。当時は「沿岸監視部隊」とされていたが、12年12月発足の第2次安倍政権下で「地対艦/地対空誘導弾(ミサイル)部隊」が防衛大綱に明記された。
 こうして16年3月、最初に与那国島に陸自与那国駐屯地が置かれ、沿岸監視隊を配備。続いて奄美大島、宮古島に地対艦/地対空ミサイル部隊と警備部隊の配備が決定され、19年3月に奄美大島に奄美駐屯地・瀬戸内分屯地(隊員約550人)、宮古島に宮古島駐屯地(隊員約800人)が発足した。同時に石垣島でも駐屯地の建設が始まり、地対艦/地対空ミサイル部隊と警備部隊合わせて500〜600人規模を23年3月までに配備する予定だ。
 そして今年8月には、沖縄本島では初めてとなる陸自勝連分屯地(うるま市)への地対艦ミサイル部隊の配備、9月には奄美大島・宮古島・石垣島を含めて4島の地対艦ミサイル部隊を指揮する連隊本部を同分屯地に置く予定であることが発表された。
 加えて、奄美駐屯地、沖縄本島の那覇駐屯地と知念分屯地、与那国駐屯地に新たに「電子戦部隊」の配備が計画されている。電子戦とは電磁波を利用した軍事行動全般を意味するが、特に重要なのは、敵のレーダーや通信機器、防空システムなどを、妨害電波などを使い無力化させることだ。このような電子戦能力は、敵基地や艦船に先制攻撃を加えるために不可欠とされる。そのための専門部隊も南西諸島に集中的に配備されようとしているのだ。

今こそ安保・沖縄闘争を

 陸自ミサイル部隊が置かれる島々の人口は、奄美大島約5万8千人、宮古島約5万2千人、石垣島約4万9千人、沖縄本島は約130万人に達する。石垣島での島嶼奪回作戦を構想した防衛省の内部文書(12年3月)は、敵・味方どちらかの兵員の残存率が「30%になるまで戦闘を実施する」と明記しているが、住民の避難計画などは一切想定されていない。避難など不可能だ。基地やミサイルが置かれたために何万という住民が暮らす島々が地獄の戦場に変えられるのだ。
 沖縄国際大名誉教授・石原昌家氏は「(第2次大戦から)76年たったいま、再び南西諸島は沖縄戦前夜の様相を帯びている」と指摘する(8月17日付沖縄タイムス)。こうした危機感や怒りの声は、沖縄本島だけでなく、宮古島や石垣島などでも多くの住民が上げており、反戦反基地の闘いは粘り強く続いている。
 中国侵略戦争の切迫は米軍や自衛隊の訓練を激化させ、騒音や事故、有毒な化学物質の流出などで周辺住民の生活に深刻な影響をもたらしており、怒りは拡大している。10万人規模を動員した陸自大演習に対し、10・23九州・佐世保など各地の改憲・戦争阻止!大行進をはじめ、多くの抗議デモや申し入れ、スタンディングなどの取り組みが進み大きな注目を集めている。
 今こそ「米日の中国侵略戦争絶対阻止!」と「安保粉砕・日帝打倒!」を貫く新たな安保・沖縄闘争が求められている。必要なのは戦争に反対して闘う労働組合の登場であり、本土と沖縄が一体となった階級的労働運動をつくりだすことだ。そして戦争によってしか延命できない資本主義・帝国主義を、労働者階級の団結した闘いで終わらせよう。そのための力を結集する場として、11・7労働者集会をかちとろう。
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