焦点 「特定技能」拡大 外国人労働者を一層使い捨てに

週刊『前進』04頁(3222号03面04)(2021/12/06)


焦点
 「特定技能」拡大
 外国人労働者を一層使い捨てに


 岸田政権は11月、コロナ禍で深刻化した労働力不足を補おうと、19年4月に新設された在留資格「特定技能」の対象業種の拡大を打ち出した。
 「特定技能」は「1号」と「2号」に分かれ、1号は介護、外食、建設など14業種が就労可能だが、日本で働けるのは最大5年、家族帯同(出身国から配偶者や子どもを呼び寄せたり、日本で結婚して暮らすことなど)は禁止という非人間的なものだ。「熟練した技術者」が対象の2号は、「雇用契約が続く限り」就労可能とされ、家族帯同も認められるが、「永住につながる」という右からの反発に対し、政府は移民政策ではないと繰り返している。
 特定技能は、特に労働力確保が困難とされる14業種に「5年で34万人」の外国人労働者を確保するとあてこんだものだった。今回、特定技能2号の対象業種を、現在の建設と造船・舶用工業の2業種から別の長期就労制度を設けている「介護」を含め、14業種すべてに拡大するというのだ。
 しかし「現代の奴隷制度」として国際的にも批判を浴びていた外国人技能実習制度を温存したまま、「5年間」の期限付き、煩雑な手続きの上に定住も許さないという非人間的な扱いに、取得者は伸びず、20年3月時点で特定技能1号は3987人に過ぎなかった。今年9月末時点で3万8337人となったが、コロナ禍で帰国が困難になるなどしたため技能実習や留学から特定技能に在留資格を替えた人が8割を占める(3年以上の技能実習経験があれば、日本語試験免除、実習と同業種ならば技能試験も免除で1号に移行できる)。現在まで2号はゼロだ。

コロナで解雇され困窮し

 しかし、コロナ禍で解雇され、住む場所も食べるにも困窮する事態にたたき込まれる技能実習生が続出している。必要な時には安価な労働力として呼び寄せながら、真っ先に解雇されるのが現実だ。さらに来日時に出身国の送り出し機関や日本の受け入れ機関・企業などに数十万〜100万、150万円など多額の借金を背負った技能実習生や留学生は、転職できるとされる特定技能に替わっても、その借金に縛られ身動きが取れない。低賃金やパワハラなどで苦しみ、労働組合や外国人支援団体に駆け込む人が後を絶たない。
 昨年11月15日、ベトナム人技能実習生のリンさんは、実習先の寮の部屋で双子を死産した。熊本県のみかん農園で働いていたが、強制帰国を恐れて妊娠のことを誰にも相談できず、孤立出産に追い込まれた。21歳のリンさんが受けたショックは計り知れない。それでもリンさんは遺体を箱に納め、双子の名前などを書いた手紙を添えて、棚の上に安置した。
 これが死体遺棄罪に問われリンさんは逮捕・起訴。「私は子どもの遺体を捨てても隠してもいない」と無罪を主張したが、懲役8カ月・執行猶予3年の有罪判決(7月20日、熊本地裁)だった。現在、控訴審で争っている。

労働者の国際連帯示そう

 現在日本で暮らす外国人は約282万人(6月末時点)。外国人労働者は、技能実習生35万人、資格外労働の留学生23万人を含めて172万人を超えている。
 外国人労働者を安価・使い捨ての労働力としてしか見ない岸田政権・資本家どもに団結した労働者・労働組合の力を示す時だ。国際連帯で差別・分断・抑圧の入管法・入管体制を解体しよう。
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