「はじめての防衛白書」を批判する 「国防教育」で対中国侵略戦争に動員

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週刊『前進』04頁(3235号02面02)(2022/03/14)


「はじめての防衛白書」を批判する
 「国防教育」で対中国侵略戦争に動員

(写真 表紙と目次)


 防衛省は昨年8月、防衛白書を小学校高学年・中学生向けに編集した「はじめての防衛白書~まるわかり!日本の防衛~」を公開した。防衛省が子ども向け資料を作成するのは初めてのことである。昨年末から今年1月には、第2版作成へ向けて中学や高校の新聞部などを対象に編集者を募集した。防衛省が文部科学省をも飛び越え、国防教育を学校に持ち込もうとしている。とりわけこの冊子は、現在進行する戦争情勢下で改憲・核武装をあおっている。今こそ「教え子を再び戦場に送るな」を掲げ、「はじめての防衛白書」白紙撤回、学校の副読本化粉砕へ全国で闘おう。
 「はじめての防衛白書」は、約460㌻の21年版防衛白書を30㌻にまとめた冊子だ。台湾情勢を初めて明記し中国との実戦準備に踏み込んだ白書を基に書かれている。米日帝は、今年1月の日米の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)をもって、南西諸島を戦場にする「日米共同作戦計画」策定へと動き出した。それは「自衛隊に住民を避難させる余力はないだろう」(自衛隊幹部)という、住民は死んでも構わないとする作戦である。「はじめての防衛白書」は、〝国のために犠牲を払うのは当然だ〟と国家主義をあおり、子どもたちを始め社会全体に国防意識を植え付け、対中国侵略戦争に駆り立てる画歴史的な攻撃だ。

核武装を促進

 この冊子には、戦争で民衆が犠牲になることも、日帝の侵略戦争がアジア人民2千万人の命を奪い、広島、長崎、沖縄戦にいきついた歴史も反省も全くない。子どもたちに戦争の論理を刷り込み、再び戦争を繰り返そうとするものだ。
 特に力を入れているのが「①なぜ国の防衛は必要なの?」である。
 「国を確実に守るためには......日本から何かを奪うのは難しいと他の国に思わせることが必要です」「それでも他の国に攻め込まれるような場合には、確実に対処できるようにしておくことが必要なのです」
 いわゆる「抑止力」と「対処力」を、全体を貫く考え方として説明している部分だが、〝やられる前にやれ〟という論理で〝敵国〟を圧倒する軍事力をもつべきだと言っている。これは核戦争・世界戦争に労働者人民を引きずり込むとんでもない主張だ。
 現に米・バイデンも露・プーチンも「抑止力」を掲げて核武装し、「対処」をうたって核戦争を発動しようとしている。米帝は中国との戦争を構え、日本への中距離核ミサイル配備も狙っている。日帝・岸田政権の内外からもウクライナ戦争をテコに改憲・核武装の衝動が噴出し、岸田政権は「対処」を掲げて、「台湾有事は日本有事だ」と日米共同の軍事行動に踏み出そうとしている。
 「②日本の周りの安全保障環境」でも、日本も核武装が必要だと言わんばかりに、中国、北朝鮮、ロシアの核と弾道ミサイル保有を強調し「脅威」をあおり立てる。後に続く章では防衛費増額へ誘導し、敵基地攻撃能力を具体化する射程1千㌔の巡航ミサイル「スタンド・オフ・ミサイル」配備にも言及した。
 しかし「脅威」の元凶は米帝であり日米安保だ。米帝は戦後支配体制を確立・維持するために日米安保のもと「世界一の軍事力」(「はじめての防衛白書」)を背景に朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争など侵略戦争を強行してきた。そして日帝は、「自由で開かれたインド太平洋」(第10章)を掲げ「専守防衛」の建前を吹き飛ばし、対中包囲網形成のために自衛隊をアフリカまで展開させ、自衛隊の侵略軍隊化を画策しているのである。
 こうした中で防衛省は領土問題に焦点をあてて、中高生を記者として巻き込み第2版を作ろうとしている。だが領土問題こそ帝国主義が人民を侵略戦争に動員する決まり文句である。

改憲狙う攻撃

 「はじめての防衛白書」は改憲攻撃とも一体だ。
 冊子は、自民党の防衛大臣政務官(当時)・松川るいの発案で作成された。松川は安倍外交を絶賛し、元外交官を売りに改憲推進の先頭に立ってきた人物だ。
 自民党は「自衛隊違憲論に終止符を打つ」と9条改憲をたくらみ、「中学校の大半の教科書(7社中6社)が自衛隊違憲論を記載している」と学校教育をやり玉に挙げている。子どもたちと学校をターゲットにして、「はじめての防衛白書」をも使って労働者人民の「改憲・戦争絶対反対」という階級意識を解体しようとあがいている。
 冊子は6㌻にわたる「働く自衛官の声」の紹介で締めくくっている。これは募兵活動そのものだ。

学校に持ち込ませるな

 「はじめての防衛白書」と戦時中の教科書「ススメ ススメ ヘイタイススメ」(小学1年国語)と何が違うというのか。絶対に学校に持ち込ませてはならない。「戦争は教室から始まる」と言われるように、明治以来の近代教育は「教育勅語」を軸とする「忠君愛国の精神」を学校を通じて形成した。そして戦後教育は、学校が戦争推進に加担したことへの教育労働者の痛苦な反省を原点として闘い取られてきた。「教え子を戦場に送らない」日教組の階級的闘いを今こそ復権する時だ。
 改憲・核戦争を止めるために、教組を先頭に地域で「はじめての防衛白書」粉砕へ闘おう。広島では防衛局や教育委員会に対する抗議行動が取り組まれている。広島の闘いに続こう。
 子どもたちはロシアのウクライナ軍事侵攻に衝撃を受けている。駅頭の反戦の訴えに耳を傾け、行動に立ち上がっている。子どもたちの未来を戦争で奪ってはならない。教育労働者こそ反戦闘争の先頭に立とう!

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