大学は戦争とめる最前線 京大闘争先頭に社会を変える行動を

週刊『前進』04頁(3237号03面01)(2022/03/28)


大学は戦争とめる最前線
 京大闘争先頭に社会を変える行動を

(写真 大学当局に不当処分された学生がみこしに乗ってキャンパスに登場し「京大を反戦の砦に」とアピール【昨年12月10日】)


 ウクライナでの戦争が激化し、現実に世界戦争・核戦争の脅威が迫る中、私たちが日常を過ごす大学という現場も、戦争を阻止する闘いの最前線になっています。この時代に私たち学生が戦争反対の行動を巻き起こせるかどうかに、未来の帰趨(きすう)がかかっています。学生の団結(=学生自治)が脈々と継承されてきた京都大学では、学生に対する不当処分をめぐって大闘争が巻き起こっています。この闘いは戦争を止める攻防の最前線の一つです。新入生のみなさんに、全国から京大に駆けつけ、京大生とスクラムを組んで共に闘うことを呼びかけます! 自らの大学で仲間をつくり、京大のような闘いを創り出しましょう! 京大闘争を突破口に、全国学生の団結した力で戦争を止め、社会を変える行動を巻き起こしましょう!

戦争と関生弾圧は一体だ

 「国外への侵略戦争」と「国内への階級戦争」は常に表裏一体です。プーチン政権によるウクライナ侵攻に反対してロシア国内でも反戦運動が巻き起こっていますが、これに対して激しい弾圧(暴力的鎮圧、逮捕・拘束)が続いています。反戦デモが実際にロシア軍内部での厭戦(えんせん)ムードを高め、戦争協力を拒否する労働者のストライキやボイコットが銃後を破綻させて戦争を敗北に導き、ひいてはプーチン体制そのものを崩壊させる力を持っているからです。
 こうした弾圧は、ロシアがそうであったように、実際に戦争が始まる前から準備されます。今、日本でも全く同様に、権力者たちは学生運動や労働組合を始めとした民衆の運動を根絶やしにし、翼賛体制を構築しようとしています。
 闘う労働組合として知られる全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部に対しては、2018年7月以来、組合員が延べ89人も逮捕される空前の大弾圧がかけられています。しかも、権力によって「犯罪行為」とみなされたのは、まったく正当な組合活動にほかなりません。例えば、子どもが通う保育園に提出する「就労証明書」への押印を会社に求めたことが「強要」、職場の労働環境についてコンプライアンス(法令順守)を求めたことが「威力業務妨害」だというのです。組合員は何カ月も拘束され、その間に他の組合員に対しては「こうなりたくなかったら労働組合を脱退しろ」という脅しが会社や警察から公然と行われています。これは憲法で保障されたはずの労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を認めないという、国家権力による労働者・労働組合への「宣戦布告」そのものです。
 このような攻撃は、労資協調的な労働組合のあり方をも大きく変質させています。「左派」「リベラル」と思われていたような勢力は雪崩を打って転向、崩壊しています。日本の労働組合の全国組織(ナショナルセンター)である連合(日本労働組合総連合会)の芳野友子会長は、自民党への接近を強め、岸田首相を連合大会に招いて野党議員を差し置いて来賓発言させ、3月には自民党副総裁の麻生太郎と会食していたことも発覚しました。自民党の側も、3月の党大会で「連合並びに友好的な労働組合との政策懇談を積極的に進める」と運動方針として確認するまでに至っています。労働組合の幹部が「労働者を代表する」と称して労働者を支配し、政治家や財界のトップと癒着して特権的地位を獲得しようとする姿は、多くの組合員からも怒りを買っています。連合がすでに崩壊過程に入ったことは明白です。
 さらに日本共産党は、今回のウクライナ戦争をチャンスとばかりに、「北方四島」のみならずカムチャッカ半島南端からの25島すべてを日本の領土と認めるようロシアに要求すべきだと、領土拡大を声高に叫び立て、自民党よりも「右」の立場から現政権を突き上げる愛国主義・排外主義の宣伝を強めています。
 戦争が現実に始まっている中で、これに断固として反対することは決して当たり前のこと、簡単なことではありません。戦争を絶対に許さない決意と行動が今ほど求められている時代はありません。

実力で反戦ストに立った

 京都大学での闘いは、2015年に京大生を中心とする全学連が戦争反対を掲げるストライキを闘ったことを契機に本格的に激化しました。このストライキは、当時の安倍政権が万余の人々の反対の声を押し切って安保戦争法を強行採決したことを、学生の実力行動をもって弾劾したものでした。学生の力に恐怖した大学当局と国家権力は、停学・退学処分と逮捕・拘束で学生を脅し、反戦運動はおろか、立て看板を始めとする文化活動・表現活動まで全面的に規制し弾圧するようになりました。ある学生は、大学の窓口に学生の意見を伝えるために申し入れをしたことが「不退去罪」だとして不当逮捕され、またある学生は、新入生を歓迎するためにアニメのキャラクターの像(看板)を出したことで大学から訓告処分を受けました。「二つの文字」と書いた紙や白紙のプラカードを持っているだけで逮捕・拘束される戦時下のロシアと同様の弾圧が、京大ではすでに始まっているのです。
 大学を国家の統制のもとに置くことは、国の言いなりになる研究機関として軍事研究をさせることはもちろん、侵略を正当化するような歴史「研究」など、イデオロギーの掌握という意味でも重要な意味を持ちます。第2次世界大戦時には原爆研究が行われ、その末期には学徒動員にまで至りました。
 近年でも、大学への運営費交付金を減らして研究費不足の状態に追い込みながら、予算が欲しければ軍事研究をやれと強要する動きが進んでいます。防衛省が「競争的資金制度」と称して2015年に創設した安全保障技術研究推進制度がその最たるものです。2017年には京大と大阪大で、米軍から資金提供を受けて軍事研究が行われていたことが明らかになりました。2020年には、政府に批判的と見られた学者6人の日本学術会議委員任命が菅首相(当時)によって拒否されたことは周知のとおりです。
 これまで大学は、社会の中でも最も「自由」で「民主主義的な空間」のように見られてきましたが、それは戦後連綿と闘われてきた学生運動が、大学に対する国家権力や資本の介入・統制をはね返してきた限りでのことです。
 日本学生運動は第2次大戦終結直後、戦争責任追及と生活防衛・学費値上げ反対を主要なテーマとして、全国の大学に学生自治会が結成されたことから始まりました。1948年には114校20万人の学生が全国でストライキに立ち上がり、学生自治を獲得しました。この闘いの中から結成されたのが全学連です。
 しかし大学は今や、学問の自由も言論・表現の自由もなく、憲法で規定されたさまざまな権利が実質的に踏みにじられている状況にあります。さらに自民党・岸田政権は、明文改憲をもって権力行使の「フリーパス」を得ようとしているのです。

一人の仲間も見捨てない

 しかし、ロシアと同じなのは弾圧だけではありません。暴力によって民衆の不屈の意志を抑え込むことができないのは、普遍的な真理です。京大生はこのようなデタラメな暴力支配と弾圧に屈することなく、不当処分に反対する闘いを軸としながら実力で闘い、身をもってそのことを証明してきました。京大では、処分によって学生を萎縮させることができなかったばかりか、むしろ処分撤回を要求する学生の闘いが拡大しています。大学当局が禁止する学内での処分反対集会は何度も実力で開催され、その裾野の広がりは全学的な学生自治会の再建運動へと発展しています。
 そしてこの闘いは、新自由主義的な価値観・人間観とは真逆の価値観・人間観を実践的に提示しています。新自由主義のもとで生まれ育った世代には、この社会に対する希望や期待などそもそも持てずに来た人が多く、逆に不満もないという人も多くいます。個人主義・能力主義があおられる中で、それが人間本来の性質だと自信と確信を持っている人もいれば、人間なんてそんなもんだと絶望している人もいます。自分の人生がうまくいかないのは全部自分の責任だとか、「親ガチャ」に外れたと思うしかないと自己否定に陥る人も少なくありません。
 しかし本当にそうでしょうか? 戦争もコロナも自分の置かれている現状も、自己責任では説明できないし、単なる自然災害でもない。そのことに多くの学生が気付き始めていると実感します。今、アメリカをはじめ各国で青年世代は「ジェネレーション・レフト(左派世代)」と呼ばれ、世界中で社会変革の闘いに立ち上がっています。日本でもコロナ禍で学費減免を求める運動は全国160以上の大学で展開されました。ウクライナ戦争に反対して多くの人がデモに参加し始めています。若い世代の行動化は、京大だけの現象ではありません。
 「一人の仲間も見捨てない!」は、処分反対闘争の中で確立された全学連運動のスローガンです。仲間の痛みを自分の痛みとして、一大学の一人の学生に対する不当処分に全国学生の怒りと行動でもって応えてきたのが全学連です。「ここには人生を賭ける価値がある」と胸を張って訴えることができます。
 歴史を振り返れば、あの悪名高き治安維持法が国内で最初に適用されたのは、京都大学の学生運動でした(京都学連事件)。これに抗し切れず学徒動員にまで行き着いた負の歴史を再び繰り返してよいはずがありません。しかし、考えてみれば、戦後世界体制がここまで崩壊し、世界戦争の過程がウクライナ戦争という形で始まった今日でもなお、闘う学生運動・労働運動が厳然と存在していることに、自民党をはじめとした日本の支配階級の破綻は証明されているのです。学生の行動は、社会の未来を決める位置を持っています。
 戦争反対の大運動、京大闘争を突破口に、学生運動・全学連運動を爆発させ、自分たち自身の手で未来を切り開きましょう!

このエントリーをはてなブックマークに追加