焦点 年金減額 物価高騰下で大軍拡と同時に

週刊『前進』04頁(3240号03面03)(2022/04/18)


焦点
 年金減額
 物価高騰下で大軍拡と同時に


 年金支給額が昨年度の0・1%減額に続き4月から0・4%減らされた。国民年金は満額でも月259円減って6万4816円、会社員らが入る厚生年金は夫婦2人のモデル世帯で月903円減の21万9593円となった。
 一方、パンや麺類、チーズや食用油、電気・ガス料金などが軒並み上がり、健康保険料・介護保険料、医療・介護負担も増え続けている。10月からは75歳以上の高齢者の窓口負担が現行の1割から2割となる。持病を抱える高齢者にはいよいよ苛酷な現実が襲いかかる。コロナと物価高騰下の2年連続の年金減額は、高齢者の生活基盤を破壊して一層の困窮をもたらすダブルパンチ・トリプルパンチとなっている。命に直結する重大問題だ。
 岸田首相はロシア制裁に伴う物価高騰に「理解と協力」を求めた。「戦争に勝つまで我慢しろ」とばかりに年金・福祉費は減らし続ける一方、改憲とウクライナ―中国侵略戦争への参戦準備を進め米中に次ぐ軍事大国へ軍事費(防衛予算)を倍増させようとしている。世界戦争への道を突進し、労働者の命と生活を踏みにじる帝国主義・新自由主義の究極の姿だ。もう我慢できない! 高齢者の怒りが噴出し闘いが始まった。

「賃金下落」を口実に

 公的年金の受給権者数は2018年度時点で4067万人、全人口の32・2%を占める。その減額はコロナ下の「賃金下落」を口実に強行された。「労働者の賃金が下がっているのだから、もっと生活を切り詰めろ」というのだ。年金減額は高齢者だけにとどまらない労働者階級全体の問題であることがいよいよはっきりした。
 年金の受給額は00年ごろをピークに下がり続け、04年からは「マクロ経済の変化を反映させる」という意味不明で検証不能な「マクロ経済スライド」なる制度が導入された。そのもとで厚生年金の平均受給額は16~20年の5年間に月額6264円も下げられた。政府は60歳からであった受給開始年齢を遅らせたり、年金保険料を上げ続けてきた。賃金に占める保険料率は00年の13・58%から今や18・3%に上昇している。
 国と資本は国鉄分割・民営化以降の労働運動の破壊・後退を背景に外注化・非正規職化と賃下げ・貧困化を進めてきた。年金保険料は増やし給付は減額して労働者の「老後」を奪い、最低賃金かそれ以下で「死ぬまで」働かざるをえないようにし続けている。

賃金上げろと怒りの声

 政府は「少子高齢化」「年金財政の危機」「持続可能な社会」を唱えて年金減額と負担増を強いてきた。しかし問題は「資本の無限の価値増殖運動」を根本原理とする資本主義そのものにある。年金をめぐる攻防は戦争反対の闘い、労働者の賃金闘争と一体だ。
 シルバー人材センターの高齢労働者も団結して「賃金上げろ」と闘いを始めた。「私たちは『個人事業主』『一人親方』と名前は変わっても仕事の内容は変わるわけではありません。物価は上がっている。コロナで仕事ができず、年金は下がり、高齢者には生活しづらい世の中になりました。私たちのがんばりで最低賃金の上乗せを実らせましょう」と訴え、まずは最低賃金の保障をかちとった。さらにウクライナ戦争で自らの戦争体験をよみがえらせ、戦争絶対反対で立とうとしている。労働者の団結で戦争と生活破壊を不可避とする資本主義を終わらせよう。
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