防衛費2倍化を狙う岸田 大軍拡のツケを払うのは人民だ

発行日:

週刊『前進』04頁(3246号03面01)(2022/05/30)


防衛費2倍化を狙う岸田
 大軍拡のツケを払うのは人民だ


 5月23日の日米首脳会談で、岸田とバイデンは日本政府が防衛費の相当な増額を行うことで合意した。岸田政権はこれを「国際公約」として振りかざし、中国侵略戦争を遂行するための大軍拡に踏み込もうとしている。
 防衛相の岸信夫は衆院予算委員会で「政府は防衛費を国内総生産(GDP)比1%以内に抑えるという考え方はとっていない」と公然と表明している。4月27日には自民党安全保障調査会が、防衛費を5年以内にGDP比2%以上にするという提言を岸田首相に手渡した。22年度国家予算には過去最大の5兆4005億円の防衛費が計上された。21年度の日本の名目GDPは541・6兆円だから、その2%とは10・8兆円。軍事費を倍増し、5・4兆円も増額するということだ。
 ストックホルム国際平和研究所によると、20年段階で日本の軍事費は世界第9位の規模にあるという。それが倍増されれば、日本は世界で第3位の軍事大国にのし上がる。

日本は世界最悪の財政破綻国だ

 日本は世界で最悪の財政破綻国家だ。22年度末の国と地方を合わせた長期債務は1243兆円、GDPの220%になる見込みだ。
 歴代政府は「財源がない」という口実を振りかざし、人民に負担を迫ってきた。公的医療を解体し、民営化を進めた結果は、コロナに感染しても入院できない医療崩壊・医療保険制度の崩壊だった。消費税は増税され、生活保護は切り下げられ、年金などの社会保障は削減され、70歳を超えても働かなければ生きられない。大学生は高額の授業料と「奨学金」という名の膨大な借金を背負わされてあえいできた。人民のこの現実をつくりだしてきた政府が、軍事費については倍増を即決したのだ。この点からも、軍事費の拡大が国民の大多数、労働者階級人民を守るためのものでないことは明らかだ。
 前首相の安倍晋三は「23年度予算の防衛費は6兆円台後半の規模に」と叫ぶとともに、「日本銀行は政府の子会社」と言い放った。数十年続いてきた日銀の金融緩和策は、国家財政赤字を補填するために国債を事実上、日銀に引き受けさせるものだった。
 本来なら、こんなやり方は大インフレを引き起こして破産するはずだ。それが通用してきたのは、貿易黒字と対外資産のストックを背景に円が安定した通貨と見なされ、国内では労働者階級に強いられた低賃金に規定されてデフレが続いてきたからだ。
 だが、もはやこれらの条件は失われつつある。そしてウクライナ戦争は世界中で物価の高騰を引き起こし、日本でも食品価格や電気代、ガソリン代は1〜2割も高騰している。米欧の中央銀行はこれに対処するため金利の引き上げを始めているが、政府の赤字補填装置になっている日銀は、債務の増加を恐れて利上げに動けない。
 この状態で大軍拡を強行すれば、日本国債と円の信用崩壊は避けられない。だが日本帝国主義は大軍拡をやめられない。そこから起こるのは、社会保障も教育も災害対策も、人間の生存に必要なすべてのものの切り捨てだ。そして、消費税をはじめとした大増税だ。

軍需で延命する資本が大もうけ

 戦争は労働者人民をとてつもない苦難にたたき込む一方、資本には巨大な利益をもたらす。アメリカがウクライナに供与した155㍉りゅう弾砲は1門約2億5千万円、発射される砲弾は1発600万円だ。ウクライナ戦争勃発後、軍需株は大幅に上がっている。
 4月12日、経団連は「防衛計画の大綱に向けた提言」を出し、「防衛産業基盤強化」のために「長期間にわたる適正な予算の確保が求められる」と叫んだ。この提言で経団連は、防衛産業を「市場規模の拡大が見込まれ」るものに育成すべきだと主張している。資本は軍需による延命を選択したのだ。
 労働現場のあり方も一変する。兵器の生産には「機密」がつきものだ。2013年に成立した特定秘密保護法は、安全保障上の重要機密を「特定秘密」に指定し、それを漏洩(ろうえい)した者に厳罰を科すとした。そして、「適正評価」で「秘密を漏らすおそれがない」と判断された公務員や防衛産業の社員だけが「特定秘密」に関われると規定している。戦争経済は職場の隅々にまで監視の網を張り巡らす。反戦闘争を闘う労働組合は解体の対象にされるのだ。
 この攻撃を許してはならない。階級的労働運動をよみがえらせ、大軍拡を強行する岸田を倒そう。

このエントリーをはてなブックマークに追加