戦時に向け国家改造 鉄道廃止へ国交省検討会が提言 軍事最優先で公共交通解体

週刊『前進』04頁(3257号02面01)(2022/08/22)


戦時に向け国家改造
 鉄道廃止へ国交省検討会が提言
 軍事最優先で公共交通解体

(写真 動労総連合と動労千葉は7月22日、「ローカル線を廃止するな」と国土交通省へのデモに立ち、同省正門前で抗議行動を展開した)

 国土交通省が設置した「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」は7月25日、地方鉄道の廃止に向けた提言を出した。国交省とJRは、国鉄分割・民営化の破産を居直り、すべての矛盾を地方住民に押し付けようとしている。これはまた、公共交通だけでなく医療や社会保障、福祉、教育などの公的部門を破壊し、戦争に一切を集中する国家改造攻撃そのものだ。

「3年以内にバスへ転換」

 国交省検討会の提言は、輸送密度(鉄道の営業キロ1㌔当たりの1日平均乗客数)が千人未満の線区を対象に、鉄道事業者または自治体からの要請を受けて国が「特定線区再構築協議会(仮称)」を設置し、3年以内にバス転換するなどの結論を出すとした。
 JRなどの鉄道事業者が国に要請すれば、自治体は強制的に廃線協議に引き込まれることになる。
 国鉄分割・民営化を上回るような鉄道の大再編が、まさに行われようとしている状況だ。

分割・民営化の大破産を居直る

 国交省の検討会は、輸送密度2千人未満の線区を廃止の対象にすることを前提に議論を進めてきた。これはJRの全路線の39%に当たる。しかし、出された提言は廃止の基準を輸送密度千人未満に緩めた。それでも、対象になるのはJRの全路線の28%に及ぶ。
 提言は、輸送密度千人以下でも、ピーク時の輸送人員が500人以上なら廃線協議の対象にしないとした。通学時間帯だけは混雑するような線区は、存続を一応は認めた形だ。だが、地方で実際に起きているのは、廃線と廃校がセットで進められている現実だ。
 提言は、2001年の国土交通大臣指針にも言及した。この指針は、「路線を廃止しようとするときは……地方公共団体及び利害関係人に対して十分に説明」するようJRに命じている。この指針が出された01年は、本州JR3社の株式がすべて民間に売却され、3社がJR会社法の適用除外になった年だ。その際、国交省は「廃線に当たっては自治体との協議が必要」という最低限の規制だけを残したのだ。
 21年前の指針が持ち出されてきたのは、廃線を一方的に進めるJRと国交省に対し、地方自治体から激しい怒りが噴出しているからだ。動労総連合・動労千葉も、提言が出される直前に国交省への申し入れ行動とデモに立ち、労働組合として反対の声を上げた。
 だから提言は、国交省指針にあえて触れて、国鉄分割・民営化の破産を取り繕うほかになかったのだ。分割・民営化で3157㌔の鉄路がJRから引きはがされた。「廃線にしなければならない路線はもうJRには残っていない」というのが、分割・民営化の建前だった。これは完全に崩れ去った。その現実の上に出された提言の本質は、国とJRが主導して廃線を強制することにある。
 国交省検討会の提言を受けて、JR東日本は7月28日、輸送密度2千人未満の35路線66区間の収支を公表した。国交省検討会が輸送密度千人未満を基準としたのに対し、JR東日本はあえて2千人未満を基準にし、大規模廃線の意思をあらわに示した。

大規模廃線へJRが突進

 JR東日本が公表したデータは意図的に操作されている。100円の収入を得るのに必要な経費(営業係数)が一番大きいとされたのは、千葉支社管内の久留里線・久留里―上総亀山間だ。鉄道はネットワークとして初めて機能するのに、JRは久留里線の終端部分だけを切り分けている。赤字幅が最も大きいとされた羽越本線・村上―鶴岡間も、その区間だけがことさらに切り出されている。JRは、真っ先に廃線にしたい区間の赤字を、意図的に膨らませているのだ。
 ローカル線の乗客減少は自然に生じたものではない。国鉄分割・民営化から始まった新自由主義は、地方を破壊し、人の住めない状態にした。JRはそれを逆手に取って大幅な減便や運転区間の縮小を進め、わざと鉄道を利用しにくくさせてきた。今では都市部でも、ネット予約を口実に駅窓口が次々と廃止されている。これは、鉄道からの撤退というJRの戦略に基づき行われてきたことだ。

戦争協力強いる攻撃との決戦に

 鉄道の廃止は戦争国家化と一体だ。国交省は「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」でJR貨物についても議論を進めてきた。その中間とりまとめが7月28日に出された。
 そこでは、JRは武力攻撃事態法により戦争協力の義務が課せられた「指定公共機関」であることが強調され、「貨物鉄道輸送は……有事における物資輸送の役割など、高い公的ミッションを負っている」「安全保障環境が激変する中……自衛隊から……JR貨物に対して、装備品や補給品などについて、鉄道輸送ニーズが提起されるなど、公共インフラとしての貨物鉄道輸送に新たな期待が高まっている」と書かれている。
 国交省は鉄道業務の根幹に軍事を位置付けた。国鉄分割・民営化は破産し、JRは地域住民のための公共交通であることをやめて、軍事輸送に活路を見いだしている。国鉄分割・民営化は改憲と戦争国家化に向けた労組つぶしのために強行された。そこから生まれたJRは、今また戦時体制づくりの先頭に立っている。
 国鉄闘争は労働者の戦争動員を打ち砕く決戦になった。新・戦争協力拒否宣言を発した動労千葉と連帯し、9月反戦闘争を闘おう。反戦を貫く階級的労働運動の再生へ、11・6労働者集会の組織戦に立とう。
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