米日帝の中国侵略戦争許すな 攻撃用武器供与を可能とし 勢力圏化狙う台湾政策法案

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週刊『前進』04頁(3262号04面01)(2022/09/26)


米日帝の中国侵略戦争許すな
 攻撃用武器供与を可能とし
 勢力圏化狙う台湾政策法案


 アメリカ帝国主義による大量の武器供与でウクライナ戦争が新段階を迎え、ロシア・プーチンがぎりぎりと追いつめられる中、これと完全に連動する形で、米バイデン政権の中国に対する戦争策動が一気にエスカレートしている。とりわけ台湾問題をめぐって、米政府と連邦議会は、「台湾は中国の一部」と認めてきた1970年代以来の米中合意を一方的かつ根本から覆す動きに出た。米日帝国主義の中国侵略戦争を阻止する反戦闘争の爆発が今こそ求められている。

「台湾有事」へ軍事介入宣言

 バイデンが9月18日の米CBSテレビのインタビューで語った内容は極めて重大だ。「米軍は台湾を守るのか」と問われ、バイデンは「実際に前例のない攻撃があればイエスだ」と回答した。ペロシ下院議長の台湾訪問以降、軍事的緊張が高まる中であらためて「台湾有事」への米軍介入を明言したのだ。記者が「(米軍を派遣していない)ウクライナとは異なり、実際に米軍の兵士が台湾を守るのか」と念を押すと、再度「イエス」と答えた。
 これと並んで決定的なのは「台湾独立については台湾が自ら判断する。われわれが独立を促しているのではない。それは台湾が決めることだ」と述べ、米大統領として公然と「台湾独立」の容認を表明したことだ。これまで米政府は、少なくとも公式には、中国による台湾の「武力統一」は認めないとしながらも、「台湾が一方的に独立を宣言することにも反対してきた」(9月20日付日本経済新聞)。今回の発言は明らかに「米国の歴代政権の方針を逸脱する」(同)ものとして、政権に近いとされるシンクタンクや関係者などからも困惑の声が相次いだが、これは「失言」などではない。バイデンは、ウクライナ情勢の新たな展開をにらみつつ、中国共産党大会を目前に控えた習近平政権に対して、「台湾有事」への米軍介入の意思をあらわにし、それと一体で米帝の台湾政策の歴史的転換を突きつけたのだ。
 これ自体が極めて意識的かつ現状破壊的な戦争挑発にほかならない。

米台軍事協力を全面強化へ

 バイデンの発言と一体で重大なのが、米議会上院外交委員会が9月14日に可決した「台湾政策法案」だ。
 同法案では「台湾への事実上の外交待遇は他の外国政府と同等」とし、台湾の在米窓口機関である「台北経済文化代表処」の名称も「台湾代表処」に変更。さらに米政府・行政機関と台湾当局との交流についても従来の制限を撤廃する。これは台湾を国家として承認するに等しい。また今年5月の日米首脳会談で発表された「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」に台湾を「編入する」ことも法案趣旨で明記した。現時点でIPEFの交渉参加国は14カ国にとどまり、台湾の交渉参加は見送られ、米帝が狙う「中国包囲網」としての実効性すら疑問視される有様だったが、台湾政策法で一気にその巻き返しを図ろうとしているのだ。
 このような米帝による露骨な台湾の勢力圏化と一体で、法案の柱として米台軍事協力のすさまじいエスカレーションが規定されている。台湾を「北大西洋条約機構(NATO)非加盟の主要な同盟対象」とし、「対外支援と武器輸出で特恵関税を与える」と明記。「包括的な訓練計画」を定め米軍・台湾軍の相互運用性を高め、これまで「防衛的兵器」に限定してきた武器供与を「攻撃用兵器」でも解禁し、武器の「売却」だけでなく「譲渡」も可能とする。具体的に今後5年間で65億㌦(約9400億円)規模の軍事支援を行うことも盛り込んだ。米帝がウクライナに対して2014年クーデター以後7年間で供与した軍事支援は総額25億㌦だったが、それをはるかに上回ることになる。
 今や米帝は、表向きは「独立を促してはいない」などと言いながら、台湾に事実上の国家承認や巨額の軍事支援を与え、中国本土から分離させる策動を強めている。しかも米帝はそれを「台湾の自己決定権」などと称して正当化しているのだ。だが、米帝の目的は「台湾独立」それ自体にあるのではない。台湾問題で中国を挑発し、徹底的に追いつめ、戦争へと持ち込むことが狙いなのだ。
 ここではっきりさせておくべきなのは、中国本土と台湾の労働者人民は戦争など望んではいないし、許しはしないということだ。台湾民意基金会の8月の世論調査では、ペロシ訪台を「歓迎する」とした台湾住民は52・9%にとどまり、「残り約半分は『歓迎しない』などとした。......訪問を歓迎する当局と住民には温度差が出た」(9月5日付日経新聞)という。蔡英文政権の支持率も「(ペロシの)訪台前から7・3㌽も下落した」(同)。
 いま必要なことは、侵略戦争を仕掛けているのは米日帝だということを徹底的に暴き、中国侵略戦争阻止の反戦闘争を爆発させ、それと一体で「反帝・反スターリン主義世界革命の立場から台湾と中国、全世界の労働者階級人民の国際的団結を呼びかけて闘うこと」(29全総報告)だ。安倍国葬粉砕闘争の大高揚を引き継ぎ、11・6労働者集会を戦争絶対反対の国際連帯闘争としてかちとろう。

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「台湾政策法案」の要旨
▼台湾の外交待遇を「他の外国政府と同等」とする
▼「台北経済文化代表処」を「台湾代表処」に名称変更
▼米政府・行政機関と台湾当局との交流制限を撤廃
▼「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」に台湾を編入
▼台湾を「NATO非加盟の主要な同盟(MNNA)」の対象とする
▼米軍・台湾軍の「包括的な訓練計画」を策定、両軍の相互運用性の向上を図る
▼台湾への「攻撃用兵器」の売却・譲渡を解禁。5年間で65億㌦規模の軍事支援を行う

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