11・11裁判員廃止デモへ 国民総動員の政策は崩れた! 裁判員制度はいらない!大運動呼びかけ人 高山俊吉弁護士

週刊『前進』04頁(3268号04面04)(2022/11/07)


11・11裁判員廃止デモへ
 国民総動員の政策は崩れた!
 裁判員制度はいらない!大運動呼びかけ人 高山俊吉弁護士


 「裁判員制度はいらない!大運動」呼びかけ人の高山俊吉弁護士から、11・11最高裁デモへの参加を訴えるアピールが寄せられました。(編集局)
 

誰もが認める崩壊

 制度発足13年。裁判員制度はついに崩壊の局面に突入した。
 制度推進の先頭に立っていた裁判官が制度の根底的不調を告白した。司法制度改革審議会(1999〜2001年)が裁判員制度を検討していた時期に、最高裁刑事局の担当者として推進派のリーダーを務めた合田悦三元裁判官は、「裁判官と裁判員の相互コミュニケーションによる知識・経験の共有という『実質的協働』を実現することはできなかった」「率直に言ってこれを獲得したと言えるものはなかった」と断じた(19年6月「警察學論集」第72巻第6号)。
 2021年に至って東京地裁の裁判官たちは、「公判審理を終え評議に入る段階で、多くの裁判員たちは判断すべき事項に関し意見を言える状態になっていない」「評議の冒頭に裁判官が判断事項や証拠の構造、証拠の内容まで細かく説明しなければ多く実質的な意見交換ができない」と報告した(21年「季刊刑事弁護」106号)。「制度導入の目的は達成されなかった」というのである。裁判員制度は、「現在の刑事裁判が基本的にきちんと機能しているという評価を前提とし、この国の裁判の正統性に対する国民の信頼を高めることを目的とする仕組みだということは、制度を推進してきた者たちが明言してきたことである(「解説裁判員法第3版」弘文堂)。「実質的協働」などという場面を本気で考えたとすればそれはまさしく荒唐無稽であった。
 今年9月、司法改革推進派の諸氏が中心になってまとめた「司法改革」の分析書、『平成司法改革の研究』(岩波書店)の副題は「理論なき改革はいかに挫折したのか」である。司法改革の主柱の裁判員制度も同書によればついにくずおれたことになるらしい。人を惑わせる欺瞞(ぎまん)をちりばめたお芝居の時は終わったのである。

「司法参加」の正体

 「国民の司法参加」を私たちが直面している政治情勢の中で考えよう。「政権は、人種主義制度の違反容疑について、国民から密告を受けるのに苦労しなかった。警察またはナチ党に情報を提供することは、第三帝国では市民参加のもっとも重要な貢献のひとつだった」と喝破したのはロバート・ジェラテリーであった(『ヒトラーを支持したドイツ国民』みすず書房)。
 制度開始を控えた時期には、池田浩士精華大学教授は、「裁判員制度における国民の司法参加」と「第三帝国における市民参加」は確実に通底するとして、「あらゆる『非社会的分子』の摘発と抹殺に貢献したのが、凶悪犯罪を憎み極刑を是認する国民感情だった」と指摘した。そしてまた、「国民の能動性に依拠して戦争と大量虐殺に突き進み、敗戦に至るまで国民に支えられつづけたヒトラー体制の日常を、同書によって見つめなおすとき、凶悪犯罪を激しく憎む私たちの世論と、『裁判員制度』の行く末にも思いを致さずにはいられない」と述べていた(日本経済新聞2008年3月)。

今こそ制度廃止へ

 アベ国葬を断行した岸田政権は、ウクライナ戦争を利用しつつ台湾有事はこの国の存立危機を意味するといいなして排外主義と愛国主義をあおりたて、メディアを総動員しながら改憲と破局の戦争政策に突き進もうとしている。しかし、戦争態勢のために国民総動員への国策の中心に据えられるはずであった裁判員制度は、広範な国民の闘いによって文字どおり崩壊の危機に追い込まれ、無様な姿をさらすことになった。
 11月11日、私たちは裁判員制度の廃止を要求して最高裁を包囲する都心デモを敢行する。今年の闘いは、対中侵略戦争を目指した改憲に反対するかつてない重大な闘いとして取り組まれる。改憲と戦争に反対して闘う全国の仲間の皆さんの参加を心から呼びかけたい。

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裁判員裁判をつぶして戦争阻止を
11・11裁判員制度は廃止へ!最高裁デモ
 11月11日(金) 正午 日比谷公園霞門デモ出発
 呼びかけ 憲法と人権の日弁連をめざす会
      裁判員制度はいらない!大運動

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