米日帝の中国侵略戦争阻め 「中国抑止」のデマ宣伝粉砕し 自国政府打倒の大反戦闘争を

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週刊『前進』04頁(3273号03面01)(2022/12/12)


米日帝の中国侵略戦争阻め
 「中国抑止」のデマ宣伝粉砕し
 自国政府打倒の大反戦闘争を


 敵基地攻撃能力の保有や軍事費2倍化など、戦後日本の安保政策の歴史的大転換を含む安保3文書の改定が、形ばかりの国会審議も経ずに強行されようとしている。岸田政権はこのクーデター的暴挙を、中国や北朝鮮からの武力攻撃を「抑止」するためだと称して正当化し、これに対して野党や労組幹部の総屈服、総翼賛勢力化が雪崩を打って進行している。こうした中で、多くの人々が怒りや危機感を持って立ち上がる一方、「戦争には反対だが、中国を抑止するために防衛費の増額はやむを得ないのではないか」といった声も聞かれる。政府・マスコミなどが振りまく「中国抑止」のデマ宣伝を粉砕し、米日帝国主義の中国侵略戦争の実態とその階級的本質を暴き、本当に戦争を止める道はどこにあるのかを鮮明にさせよう。

世界戦争に突き進む米帝

 政府とその意を受けた大手マスコミなどは、「日本をとりまく安全保障環境の悪化」「軍備を増強し覇権主義的な動きを強める中国」といった定型句を連日連夜繰り返すことで、あたかも「羊のようにおとなしい平和国家・日本」、あるいは「平穏で安定した国際社会」に対して、「専制国家・中国」が今にも襲いかかろうとしているかのように描いている。だがこれは、現実に起きている事態を完全に転倒させたデマゴギーにほかならない。
 われわれの目の前で現に始まっているのは、米日帝国主義の圧倒的軍事力を振りかざした中国への侵略戦争である。米日の凶暴な戦争策動を不問に付して「中国をいかに抑止するか」などと問題を立てること自体が根本的に間違っているのだ。このような議論の土台そのものを根底から覆さなければならない。そのために、基本的視点として以下のような根本問題を明らかにすることが必要である。
 第一に、第2次大戦後の資本主義世界における唯一にして圧倒的な基軸国でありながら、今やその権威も実力も著しく没落・衰退させたアメリカ帝国主義が、自らの基軸国としての地位と世界支配とを維持するために、「唯一の競争相手」とみなす世界第2の大国=中国に対して戦争を仕掛けようとしている、ということである。
 現に米バイデン政権は、中国を主敵とする世界戦争を戦略的に構え、「専制主義と民主主義の戦い」と称して世界を真っ二つに分断し、この世界戦争に日本をはじめ同盟諸国を総動員しようと必死になっている。ウクライナ戦争もその一環として「米帝主導の対ロシア戦争」として展開されているのだ。この米バイデン政権のウクライナ戦争・中国侵略戦争―世界戦争は、とりわけ今秋以降決定的にエスカレートし、その恐るべき全容をいよいよあらわにしている。
 10月12日に公表された米国家安全保障戦略(NSS)は、それを米政府の公式見解として半ば公然と明言した。この最重要戦略文書で、米帝は中国の存在を「最も重大な地政学的挑戦」と位置づけ、「中国を打ち負かし、ロシアを押さえつける」と宣言した。さらに、中ロを並べて記述したトランプ前政権版から転換して、中国を「国際秩序の再構築を目指す意志を持ち、実現のために経済、外交、軍事、技術の力を向上させている唯一の競争相手」と規定し、今後は「米主導の国際秩序に挑む中国との競争を決定づける10年になる」と明記した。
 これについては読売新聞のような商業紙も「(米国は)中国との覇権争いを外交・軍事政策の基軸に据える姿勢を鮮明にした」(10月14日付)と報じた。まさに今、米帝が国家の存亡をかけて挑んでいるのは中国との「覇権争い」であり、自らの基軸国としての地位と世界支配を維持するために中国を「打ち負かす」ことなのであって、「アジアの平和を守る」とか「日本への攻撃を抑止する」などといったことでは断じてないのである。むしろ米帝の対中国戦略には、日本を含むアジアが戦場になっても構わないという考えが貫かれている。
 要するに、米帝を基軸とする戦後世界体制の最後的崩壊が世界戦争を生み出しているのだ。日本帝国主義・岸田政権の大軍拡と戦争策動も、この米帝の世界戦争戦略に規定され、その一環としてあるということを、何度でも明確にしなければならない。

命脈尽き果てた資本主義

 第二に、今日の新自由主義の大崩壊まで行きついた資本主義・帝国主義の最末期的危機こそが戦争を生み出しているということだ。
 今日の中国が、スターリン主義体制下にありながら世界経済全体に巨大な影響を及ぼすほどの「大国」となったのも、つまるところ米欧日帝国主義が抱え込んだ巨大な過剰資本・過剰生産力の矛盾を、中国への資本輸出で乗り切ろうとした結果である。また世界銀行によると、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した2001年から21年までの20年間に世界の実質国内総生産(GDP)は5・3倍に増えたが、そのうち中国の経済成長による部分が全体の31%を占め、アメリカは10%にとどまった。中国の成長が帝国主義の延命条件にもなってきたのだ。
 08年リーマン・ショック後も、米欧日の超金融緩和と並んで中国政府が発動した総額4兆元の財政出動によって、資本主義世界経済の底割れがひとまず回避された。だが、これにより中国は国内に金融・不動産などの巨大なバブルと過剰生産能力を抱え込み、その処理のために対外進出を強めることになる。こうして習近平政権は「一帯一路」の掛け声のもとアジア、中南米、アフリカ、さらに欧州諸国とも経済協力を構築、結果として米帝の没落とその世界支配の崩壊を著しく促進した。そして米帝は、かつてレーニンが第1次大戦当時の基軸国イギリスについて指摘したように「戦争によらなければ、自国の世界支配を守り抜くことができなくなった」(レーニン全集23巻、「単独講和について」)のである。
 加えて今や、リーマン・ショック以来先送りされてきた全矛盾がいよいよ爆発しようとしている。戦時下の大インフレで米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が大幅利上げを余儀なくされる中、今年1~11月に世界の株式時価総額28兆㌦分が消失。「債券価格も下落し、投資家にとって資金を逃避させる場所がほとんど見当たらなくなっている」(11月18日付日経新聞)。さらに来年には株や資産バブルの崩壊、住宅市場の大収縮が迫り、新興国の債務危機の爆発も不可避だ。「国際通貨基金(IMF)によると、歴史的なインフレやドル高進行ですでに約20カ国がデフォルトかそれに近い状態だという」(11月5日付日経新聞)。
 しかも08年当時と決定的に異なり、もはや米欧日帝国主義は中国やロシアなどと足並みをそろえて恐慌対策をとることはできない。そればかりか中ロとの対立が世界経済の分断と市場収縮を促進し、その結果深刻化した経済危機が対立をますます激化させ、世界戦争を一層促進するのである。
 したがって中国侵略戦争阻止の反戦闘争は、この命脈の尽き果てた資本主義・帝国主義(そしてその延命を助けてきたスターリン主義)を全世界の労働者階級人民の闘いで打倒する、反帝・反スタ世界革命の展望を力強く鮮明に訴えることが鍵となるのだ。

南西諸島を戦場にするな

 第三に、以上のような米日の中国侵略戦争の本質に規定され、現実に恐るべき人民虐殺の大戦争(核戦争)が準備されているということだ。その実態は到底「抑止」とか「自衛」などといった言葉でごまかせるものではない。
 バイデン政権がNSSに基づき新たに策定した「核戦略見直し(NPR)」では、核による先制攻撃も辞さず、核兵器の近代化(使える核)や同盟国への「拡大抑止」を推進することが明記された。最大の焦点は日本全土への中距離核ミサイルの大量配備だ。同時に、南西諸島の島々を攻撃拠点とし戦場化する米海兵隊の対中国作戦「遠征前進基地作戦(EABO)」を日米共同作戦として実行するための準備が進められている。
 日帝・岸田政権はこれと完全に連動して、米国製巡航ミサイル「トマホーク」500発の購入、国産12式地対艦誘導弾の長射程化改造、さらに射程3000㌔以上の極超音速巡航ミサイルの開発まで一切の歯止めなく進めようとしている。弾薬備蓄などの継戦能力の確保、民間空港・港湾の軍事利用、EABOの実行に向けた陸上自衛隊「南西防衛集団」の新設など、すべてが「実際に中国と戦争をする」ことを想定したものだ。この空前の大軍拡が、労働者階級人民の生活を根底から破壊する大増税、社会保障解体、地域破壊の攻撃と一体で強行されようとしているのだ。
 南西諸島をはじめ日本全土を戦場とし、中国本土や台湾の人民を虐殺する米日帝国主義の中国侵略戦争の全容を徹底的に暴き、自国政府打倒の反戦闘争を巨大な規模で巻き起こそう。
〔水樹豊〕

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