十亀弘文の革命コラム どうやって戦争止めるか

発行日:

週刊『前進』04頁(3277号04面03)(2023/01/16)


十亀弘文の革命コラム
 どうやって戦争止めるか

 およそすべての人が戦争を身近に感じさせられている2023年。新聞各社の元日の紙面も戦争に触れないわけに行きません。中には、はやくも次の戦争をあおる新聞があります。読売の社説は「うかつに手を出したら手痛い反撃にあう」と思わせるために軍備の増強を、と書いています。産経も、「民主主義」と「国民」を守れ、と掲げて軍拡を主張。一方、毎日は「平和国家」はどこへ、という連載を開始し、東京新聞は吉永小百合の語りによって、日本が戦前に戻ることへの危惧を表明しようとしています。しかし、戦争は誰がなぜ始めるのか、どうやって止めるしかないのかを明らかにする新聞はありません。
 朝日は、ウクライナ戦争に関連して、作家のスベトラーナ・アレクシエービッチへのインタビューを大きく載せています。獄中で読んだ『戦争は女の顔をしていない』は、独ソ戦に従軍した多くのソ連女性からの聞き書きとして、戦争現場のすさまじい惨状を胸に刻み込んで来ました。記事にあるようにアレクシエービッチは「常に社会や時代の犠牲となった『小さき人々』の声につぶさに耳を傾け」る執筆姿勢を貫いています。
 しかし、アレクシエービッチのウクライナ戦争についての認識は大きく誤っています。作家は、その戦争はソ連崩壊後の貧困から生まれた「ロシアのファシズム」による侵攻だとします。また戦争とは、人間の中から「獣がはい出し」て、極度の残虐さを横行させる事態だとしています。だから、「世界が団結し、ロシアのファシズムに立ち向か」うしかなく、個々の人間は「孤独」に耐えて、「人間性を失わないためのよりどころを探す」べきだ、というのです。
 この認識で戦争を止めることは決してできません。ロシアはファシズム国家とは言えず、作家がいう「世界の団結」は、実際にはアメリカ・NATOを核にした日本を含む帝国主義国家の軍事連合に直結します。そしてそれは、次の大戦争としての中国侵略戦争をいっそう引き寄せます。ウクライナ戦争に限らず、現代の戦争は全て帝国主義の側が準備し踏み込むものでしかありません。戦争は、帝国主義を打ち倒すことで初めて根絶やしにすることができます。
 そして帝国主義を打ち倒す力は団結した労働者階級の中にしかありません。未来を切り開く私たちは「小さき人々」ではありませんし、「孤独」とは無縁です。
(そがめ・ひろふみ)2023.1.16

このエントリーをはてなブックマークに追加