国家改造狙う反動立法 政府提出60法案 国会包囲し成立阻止を

週刊『前進』04頁(3279号03面02)(2023/01/30)


国家改造狙う反動立法
 政府提出60法案
 国会包囲し成立阻止を


 政府は1月19日、衆参両院の議院運営委員会理事会に、今国会での提出法案を60本とする考えを伝えた。大軍拡予算と一体で、安保3文書に基づく全面的な国家大改造を一気に推し進めようとするものだ。

国家財政を「軍事最優先」に大再編

 「5年間で43兆円程度」とされる大軍拡のための防衛財源確保法案では、24年度以降の防衛関係費の財源を確保するための新たな枠組みとして「防衛力強化資金」の設置が明記された。外国為替資金特別会計(外為特会)からの繰入金や国有資産の売却益などを「防衛財源」として繰り入れる。社会保障費などに充てることもできるはずの財源を、今のうちから軍事費として「確保」してしまおうというのだ。厚生労働省所管の独立行政法人・国立病院機構から422億円、地域医療機能推進機構から324億円をそれぞれ国庫に納付させ、軍事費の財源とすることも盛り込んだ。地域医療の拡充のために投じることを想定されていたものだが、同法案が成立すれば軍事費へ組み込まれることになる。これを皮切りに、国家財政に対する考え方そのものを「軍事最優先」へと根本的に転換する攻撃が一気に進められようとしているのだ。
 これと一体で、弾薬を含む殺傷能力のある装備品の他国への無償提供を可能とする自衛隊法改悪案も検討されている。5月のG7広島サミットに向け、ウクライナ軍事支援を一段と強める姿勢をG7諸国に示すと同時に、現行の「防衛装備移転三原則」の運用指針を大幅に緩和することと一体で武器輸出・提供の推進と軍需産業の育成を図ろうというのだ。これも安保3文書に明記された内容の具体化である。
 このほか、1月の岸田のイギリス訪問時に署名された自衛隊とイギリス軍の共同訓練のための手続きなどを簡略化する「日英円滑化協定」の関連法案も、今国会に提出される。

原発の最大限活用入管法の改悪案も

 さらに電気事業法、原子炉等規制法、再生エネルギー特措法、使用済み核燃料再処理法、原子力基本法の改悪案を一本化した「束ね法案」が、「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」と称して提出されようとしている。原発の運転期間を「原則40年、最長60年」とする規制を撤廃して60年超の運転を可能とし、新増設や建て替え(リプレース)も含めた「原発の最大限活用」を推し進めるもので、2011年3・11福島第一原発事故以来の原発政策を大転換するものだ。世界戦争・核戦争の時代に突入した今、将来の核武装や核使用も見据えて、日帝の「核大国」としての立て直しを図ろうとしているのだ。それは放射能汚染水の海洋放出と一体で、3・11以来の福島の怒りと闘いを圧殺し、反核・反原発闘争を一掃しようとする攻撃にほかならない。
 2年前、国会を取り巻く怒りと全社会的な抗議の声に押され、自民党が自ら法案を取り下げるという異例の展開となった入管法改悪案も、基本骨子をまったく変えないまま今国会に再び提出されようとしている(本紙前号で既報)。
 安保3文書の国家安保戦略で政府・企業・学術界の連携強化による軍需産業振興、軍事研究の推進が盛り込まれたことを背景に、岸田政権は昨年12月、日本学術会議の運営や会員選考に「第三者」を介入させる組織改革方針を発表、これに基づく日本学術会議法改悪案も今国会に提出される見通しだ。これに対し、ノーベル化学賞受賞者の白川英樹筑波大学名誉教授らが呼びかけた反対声明に、1月24日までに1200人以上の学者・研究者らが賛同し、同日国会内での記者会見と内閣府への申し入れを行った。

JR線の4割廃止へ関連諸法を改悪

 新型コロナ対策特措法と内閣法の改悪も狙われ、感染症対策の「司令塔」と称して内閣官房に「内閣感染症危機管理統括庁」を新設、米疾病対策センター(CDC)の日本版として「国立健康危機管理研究機構」も設置する。これらは単なる「感染症対策」ではなく、医療資源や人材を国家が一元的に把握・管理し動員できる戦時医療体制を構築しようとするものだ。
 さらには、JR在来線4割廃止を狙う国土交通省検討会路線に基づき、廃線化攻撃を加速させる地域公共交通活性化再生法などの関連法の改悪案も提出される。国交相の判断で「再構築協議会」なるものを設置することで、「国の関与を強め、沿線自治体や鉄道事業者の再編協議をスムーズに進めるのが狙い」(1月23日付時事通信)と報じられている。
 岸田政権は、野党の屈服と総翼賛化を当てにして、3月末までに予算案を成立させ、4月統一地方選と衆院補欠選挙(千葉、和歌山、山口)を乗り切り、G7広島サミットを戦争会議として開催し、会期末の6月21日までに全ての戦争法案を成立させようとしている。だが、すでに岸田政権への激しい怨嗟(えんさ)の声はちまたに充満している。国会に押し寄せる労働者階級人民の実力闘争を巻き起こし、戦争国会粉砕・岸田打倒をかちとろう。
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