徴用工問題 賠償肩代わりは日帝の免責 韓国政府の提案に怒り

週刊『前進』04頁(3279号04面02)(2023/01/30)


徴用工問題
 賠償肩代わりは日帝の免責
 韓国政府の提案に怒り

(写真 旧日本大使館前に建つ平和の少女像付近での「日本軍性奴隷制問題解決のための水曜デモ」に続き、外交部前で屈辱的な「解決案」撤回を求める抗議行動が行われた【1月18日 ソウル】)

屈辱的な解決案は第二の慰安婦合意

 日本帝国主義が1939〜45年に戦時労務動員政策として、植民地支配下におかれていた朝鮮の人々に暴力的な強制連行などにより労働を強いた「徴用工」(強制動員・強制労働被害者)問題をめぐり、韓国のユンソンニョル政権は、政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」に被害者への賠償を肩代わりさせる方針を明らかにした。
 韓国の最高裁にあたる大法院は2018年、被告の日本製鉄(旧新日鉄住金)と三菱重工業に元徴用工への賠償を命じたが両者が支払いを拒否したため、韓国内資産を差し押さえ現金化して賠償金に充てる手続きが最終段階に入っている。今回の案は、被害者の頭越しに日本政府と戦犯企業を完全に免責するものだ。
 韓国政府は、まず韓国企業の寄付で弁済を始め、日本企業の自発的な資金拠出や日本政府の遺憾表明に期待すると説明しているが、現実性はまったくない。被害者らは「屈辱的な案だ」「金だけが目的なら、このような闘いはしてこなかった」と弾劾している。
 構図は、日本軍軍隊慰安婦問題をめぐって15年に安倍とパククネとの間で行われた「慰安婦合意」と同じだ。当時外相だった岸田が強行した「合意」は、日本政府の責任を否定し、問題は「最終的かつ不可逆的に解決」したとする犯罪的なものだった。日本政府関係者は今回も居丈高に、「日本企業に債務がないことをはっきりさせ、不可逆的なものにしなければならない」(1月12日付産経新聞)などと語っている。

謝罪と賠償を拒否し続ける日本政府

 日本政府は、戦時賠償問題は「1965年の日韓請求権協定で解決済み」「韓国の国内問題」との決まり文句を繰り返し、徴用工とされた人々への賠償を一貫して拒否してきた。しかし、日本が65年にパクチョンヒ(朴正煕)軍事独裁政権との間で締結した日韓条約(日韓請求権協定はこれに付随)は、「日韓併合」は「もはや無効」として日本帝国主義による朝鮮植民地支配を正当化する内容だった。そこには一言の謝罪もなく、日本政府が韓国に提供した有償無償5億㌦は、賠償金ではなく「独立祝い金」であり「経済協力」の一環とされた。
 にもかかわらず日本の歴代政権は、当然にも謝罪と賠償を求める被害者たちの訴えを無視し、逆に韓国・北朝鮮の人々に対する差別をあおり続けてきた。その先頭に立ってきた元首相・安倍は2018年、大法院判決への「対抗策」として半導体材料3品目の対韓輸出規制強化を強行した。
 被害者たちが体を張って声を上げてきたのは、何よりも同じ歴史を二度と繰り返させないためだ。単なる金銭解決ではなく、植民地支配により氏名も言葉も文化も土地も奪い、侵略戦争遂行のために強制労働を強いた日帝と戦犯企業の謝罪と賠償を求めてきたのだ。

新たな侵略戦争のための歴史の抹殺

 この事態の核心にあるのは、米日帝国主義が中国侵略戦争へと具体的に踏み出したことだ。米日帝こそが民主労総を先頭とする労働者階級の階級闘争、反戦闘争の圧殺を求めている。
 ユン政権は昨年5月の就任以来、日本は「世界市民の自由を脅かす挑戦に立ち向かい共に進んでいくべき隣人」であるとし、「日韓関係改善」を掲げてきた。その実態は米日韓3カ国の軍事同盟の構築だ。8月からは「ろうそく革命」以降廃止・縮小されていた米韓合同軍事演習も実施され、日本海などでの米日韓合同訓練も相次いだ。12月28日にユン政権は「インド太平洋戦略」を発表し、米日韓の安保協力拡大を表明。ユンソンニョルは「独自の核保有」にも言及している。
 だからこそ日韓両政府は中国侵略戦争のための米日韓軍事同盟の「妨げ」となる徴用工問題の「解決」を急ぐのだ。22年11月には、強制労働によって巨万の富を築いた麻生財閥の当主で自民党副総裁の麻生太郎が訪韓しユン大統領と会談し10日後の日韓首脳会談で徴用工問題の「早期解決」を目指すことで一致した。
 こうした動きに対し、米日韓軍事同盟構築阻止を掲げて闘いの先頭に立ってきたのが120万組合員を擁する民主労総だ。昨年11〜12月にも貨物連帯を先頭とするストライキ闘争を展開しユン政権に大打撃を与えた。だからこそユン政権は1月18日、民主労総への国家情報院による家宅捜索を強行し、「北のスパイ」キャンペーンを通じた労組破壊攻撃に乗り出したのだ。
 再びの戦争のための歴史の抹殺を許してはならない。韓国の労働者民衆と連帯し、大軍拡と戦争に突き進む岸田打倒へ闘おう!

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関連年表
2015年 安倍・パククネ政権が日本軍軍隊慰安婦問題をめぐる「日韓慰安婦合意」強行
 17年 パククネが打倒されムンジェイン政権が発足
 18年 韓国大法院が日本企業に徴用工被害者への賠償を命じる判決
    安倍政権が対韓輸出規制を強化
 19年 原告が日本企業の資産の現金化を韓国の裁判所に申請
 21年 韓国の地裁が企業資産売却命令
 22年 ユンソンニョル政権が発足
    3年ぶりに日韓首脳会談、「徴用工問題の早期解決で一致」
 23年 韓国外交部が公開討論会を開催し、賠償金肩代わりを提案

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