開戦1年 ウクライナ戦争ただちにやめろ ウクライナ戦争1年に際し労働者人民に訴える 世界戦争への拡大を許すな!労働者階級の国際反戦闘争を

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週刊『前進』04頁(3281号02面01)(2023/02/13)


開戦1年 ウクライナ戦争ただちにやめろ
 ウクライナ戦争1年に際し労働者人民に訴える
 世界戦争への拡大を許すな!労働者階級の国際反戦闘争を

(写真 反戦闘争の先頭に立つ洞口区議 米・NATOを免罪する「ロシア非難決議」に区議会で唯一反対した洞口朋子杉並区議【中央】を先頭にウクライナ反戦デモ【昨年4月 東京・杉並区】)

 ウクライナ戦争は、開戦から1周年を前にして、すでに1千万人以上とも言われる避難民を出し、双方の兵士・民間人の死傷者の合計は数十万人にも上ろうとしている。停戦の見通しはまったく立たないばかりか、戦争はますます激化・拡大し、破滅的な世界戦争・核戦争へ本格的に発展しつつある。全世界の労働者階級人民の反戦決起で、ただちにこの戦争を止めなければならない。「ウクライナをこれ以上戦場にするな!」「アメリカ・北大西洋条約機構(NATO)とロシア・プーチンはウクライナから手を引け!」----この声を全世界にとどろかせよう。2・23ウクライナ反戦闘争の巨大な爆発をかちとろう。

米英独の主力戦車投入で戦争は全く新たな段階へ

 米独帝国主義は1月25日、ドイツ製の「レオパルト2」を中心とする主力戦車をウクライナの戦場に投入することを決定した。ドイツの「逡巡(しゅんじゅん)」を打ち破るため、アメリカは自国製の「M1エイブラムス」の投入も決めた。イギリスはこれに先立ち、自国の主力戦車「チャレンジャー2」をウクライナに提供すると1月14日に発表している。こうして、NATO諸国から次々と戦車の供与が決められ、たちまち300両以上の「レオパルト2」を中心とする戦車の大部隊が形成されることになった。それに伴い、戦車戦に必要な装甲戦闘車両や航空戦力(F16戦闘機や対戦車ヘリ)なども供与されようとしている。第2次大戦時の独ソ戦が想起されるが、米・NATOが実際にやろうとしているのは、2003年イラク侵略戦争時の戦車戦のような一方的に壊滅的打撃を与える作戦だ。
 これに対しプーチンは、2月2日にボルゴグラード(旧スターリングラード)での「スターリングラード攻防戦戦勝80周年記念式典」で演説し、かつての独ソ戦に例えてドイツ製戦車の大量投入を激しく非難した上で、「(ロシアは)別の手段で対抗できる」と述べた。追いつめられたロシアは、核使用を含めてどんな手段を使っても対抗していくということである。プーチンは、スターリンの「大祖国戦争」になぞらえて動員を拡大し、戦争を継続しようとしている。
 重大なのは、帝国主義各国が競い合うように最新攻撃兵器を投入し始めたということである。ウクライナ側からのロシアに対する越境攻撃には慎重でなければらない、という制限を取り払ってしまったのだ。帝国主義は、戦争の質的エスカレートに踏み切った。米欧日帝国主義の政治危機、経済的社会的危機は体制が揺らぐレベルになっている。だからこそ帝国主義諸国はヨーロッパ全体の戦争動員を強め、プーチン体制の打倒にまで進もうとしているのだ。
 この戦争がもたらした危機はすでに全世界の何億、何十億人の人々に影響を及ぼしており、各国の階級的緊張が今後さらに極限的に高まることは不可避である。情勢は重大な山場を迎えようとしている。

バーゼル宣言の原則貫き帝国主義戦争を内乱へ

 いま何よりも必要なことは、米欧日の帝国主義諸国における労働者階級の反戦闘争であり、ウクライナ戦争を推進する自国政府に反対する闘いである。帝国主義戦争の内乱への転化に向かって革命的な反戦闘争を力強く展開することである。
 かつて第1次大戦を前にした1912年、第2インターナショナル臨時大会で「バーゼル宣言」が採択された。バーゼル宣言は、同年に勃発したバルカン戦争に対して「万国のプロレタリアがいっせいに反帝国主義闘争にたちあがり、インターナショナルの各支部が自国政府にプロレタリアートの反抗をむけ、国民の世論を動員してあらゆる交戦欲に反対した結果、万国の労働者の大規模な協力が生じた」と確認した上で、「世界戦争の結果プロレタリア革命が起こりはしないかという支配階級の恐怖(こそ)が平和の本質的な保障である」と述べた。「革命の恐怖で帝国主義支配階級を脅かす」「戦争がもたらす危機を、人々を揺り動かすために利用し、それによって資本主義的階級支配の排除を促進するために闘う」という意味だ。
 このバーゼル宣言の思想、原則が今こそ復権されなければならない。バーゼル宣言の立場を貫き、帝国主義戦争を内乱に転化し、反帝国主義・反スターリン主義世界革命の勝利に向かって前進すること----今、この課題が全世界の闘う労働者階級の前にリアルに提起されている。
 帝国主義はかつてない歴史的危機に陥っている。スターリン主義の危機も深く激しい。そしてこの戦争は、これまでの社会関係と人々の生活を破壊し、人々の意識や感情を揺り動かし革命的情勢を促進している。したがって、今われわれ労働者階級に必要なことは、戦争を革命に転化する闘いの条件をつかむこと----もちろん意識的な準備を通して----である。

プーチンもゼレンスキーも労働者階級人民の敵だ

 帝国主義世界経済の危機は、コロナ・パンデミックと戦争、戦争に伴う対ロシアおよび対中国の経済制裁によってさらに一段と深刻化し世界的なインフレエネルギー危機や食糧危機をもたらした。アメリカを先頭に世界経済はあらためて大恐慌の危機に直面し、金融的にもコントロール不可能の状態に陥っている。労働者階級は実質的な賃金の切り下げと生活破壊の現実にたたき込まれている。
 さらにアメリカ、日本やヨーロッパ諸国では、大軍拡のための戦争増税、戦争による重税化の攻撃がつけ加えられた。コロナ・パンデミックがもたらした医療危機と生活破壊の上に、帝国主義者は労働者人民の犠牲など少しも顧みずに、ただやみくもに戦争に突入することによって、資本の支配と帝国主義支配階級の延命を図ろうとしている。このような資本主義・帝国主義の末期的危機が、今日の戦争の根本的原因であり、また戦争がこの危機を極限的にエスカレートさせているのである。
 ロシアについて言えば、プーチン体制は、スターリン主義の歴史的破産後に生き残った治安官僚機構集団と新興財閥(オリガルヒ)の結合体である。彼らは、旧スターリン主義体制の遺産・遺制の重さで、資本主義への復帰など到底できず、米欧帝国主義に対抗して大ロシア国家主義を掲げ、それをとおしてロシアの人民を支配し、ロシアの富を横領している集団である。米欧帝国主義と同じように、反動的な大ロシア民族主義をあおり立てながら、ウクライナとロシアの人民を戦場の殺し合いに投げ込んで生き延びようとしている連中だ。ウクライナの人民もロシアの兵士たちも、自分たちの解放のために、自分たちの利益のために戦っているのではない。帝国主義支配階級とスターリン主義の遺物的な支配的権力者どもの利益のために戦わされているのだ。
 ウクライナ・ゼレンスキー政権は、「ロシアの侵略に抵抗してウクライナ人民の自由のために闘っている」と美化されているが、それは帝国主義、特に米英帝国主義と完全に一体化している。帝国主義がウクライナ人民を犠牲にしてロシア・プーチン体制を追いつめ、最終的にはその打倒にまで進もうとする戦争、帝国主義戦争の先兵がゼレンスキーにほかならない。NATOの作戦指導チームとの「戦術共有」に踏み切り、「全領土を奪還する」「ロシアを完全にたたき出す」「戦車をよこせ! 戦闘機をよこせ! ミサイルをよこせ!」と叫ぶゼレンスキーは、身も心も帝国主義に合体した姿をさらけだしている。
 この1年間の経過を見るだけでも、この戦争がウクライナ人民の解放とは無縁であるということは明白だ。ウクライナの軍事的勝利とは、巨万の人民の犠牲と引き換えにロシアを軍事的に敗北させ、ウクライナ自身は今まで以上に帝国主義に従属した反人民的な軍事国家になるということでしかない。そもそもこの戦争をもたらした最大の元凶は米帝をはじめとした帝国主義であり、このような帝国主義戦争の果てにウクライナ人民が「解放」されることなどありえないのである。
 何よりウクライナ戦争は、今まさに、第3次世界大戦の直接的な導火線となっている。この1年の間に、ヨーロッパにおける大戦争=対ロシア戦争と、東アジアにおける大戦争=台湾を焦点とする中国侵略戦争が、同時一体的に帝国主義によって推進される構図がつくり出された。このままでは核戦争にまで行き着くしかない世界戦争が今まさに進行しているのである。

米帝国主義の没落こそが世界戦争危機の根本原因

 米バイデン政権は、中国とロシアを「自由と民主主義を脅かす権威主義体制」としてやり玉にあげ、この権威主義体制こそは全人類が打ち倒すべき敵=「挑戦者」であると描き出している。米帝を先頭に帝国主義は、このようなイデオロギーを振りかざして、中ロ連合の打倒をめざし、それを通して世界を再分割する戦争に突入している。中国が大国化し、米中対決が非和解的なところまで煮詰まった条件下で、ウクライナ危機はウクライナ戦争=帝国主義の「対ロシア戦争」として爆発した。この事実が問題の本質を照らし出している。
 中国スターリン主義は、1970年代以来の米中和解=米中結託をてこに、スターリン主義の骨格を維持したまま経済発展を遂げてきた。そして、一面で帝国主義世界経済を支え、他面で帝国主義の存在そのものを脅かす対抗的存在として巨大化した。中国スターリン主義は、中国革命の「継承者」であるが、スターリン的一国社会主義論の立場にたち、プロレタリア世界革命を投げ捨て、真の社会主義への道を裏切ってきた存在である。
 だが、改革・開放政策による経済発展に媒介された中国の巨大化は、米帝の世界支配を実体的に脅かすところまで進んだ。米中関係は、オバマ政権の末期からトランプ政権の時代に完全に対立的となり、バイデン政権で中国こそは最大の「敵」(打倒対象)と位置づけられた。中国スターリン主義は、本質的に受動的であるけれども、米帝に対する軍事的対抗を通して大国としての生き残りを追求している。米帝はそれを容認できず、中国スターリン主義の体制転覆に向かっている。
 こうした中でロシア・プーチンは、大国化した中国との準同盟的な関係を支えに、「ウクライナのNATO加盟国化」というレッドラインを越えようとする米欧帝国主義との力関係を巻き返そうとして、2014年以来のウクライナ問題にケリをつける賭けに出た。それが昨年2月のウクライナ軍事侵攻だったが、完全に裏目に出た。プーチンのあがきは帝国主義の格好の餌食とされたのである。
 こうして今や米帝は、NATOを引き込み、日米軍事同盟を臨戦化しつつ、欧州とアジアで中ロ連合を串刺しにする帝国主義的な戦争に打って出ているのである。帝国主義こそがこの戦争を引き起こし、主導的に促進しているということを明確にしなければならない。

G7広島サミット粉砕へ総決起を!

 5月に広島で開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)に向かって、日本帝国主義・岸田政権がウクライナ戦争を激化・拡大させる先頭に立ち、ウクライナ戦争と対中国の帝国主義的侵略戦争を積極的に結合するための旗を振ろうとしている。帝国主義の首脳たちが対ロシア戦争と対中国侵略戦争をどのように進めるかを話し合う世界戦争のための会議----それが広島サミットだ。岸田は、議長国としてゼレンスキーを招待すると言っている。
 この帝国主義の戦争会議を被爆地・広島で開催することに対して、なんの抗議も弾劾も起こらなかったとすれば、日本のプロレタリアートはウクライナで繰り広げられる戦争を黙認したことになる。すでに自民党や防衛省・自衛隊幹部などは、「日本の戦車や弾薬もウクライナに供与すべきだ」「そうでないと有事の際に他国からの支援が得られない」などと言っている。1月30日〜2月2日に訪日したNATO事務総長・ストルテンベルグは、「中国は核兵器を含む軍事力を大幅に増強し、台湾を脅かしている」と「台湾有事」をあおり、日・NATOの軍事協力関係の強化を求めた。これに先だって訪れた韓国では「ウクライナへの直接的な軍事支援を(韓国は)決断すべきだ」と迫った。広島サミットはそんなことを話し合う会議なのだ。こんな戦争会議など絶対に認められない。
 何より、核戦争を準備する帝国主義の戦争会議が広島で行われることを、絶対に許すことはできない。ウクライナ戦争の行き着く先は何か。NATOとロシアが全面的にぶつかる欧州大戦であり、中国、イラン、トルコ、シリア、北朝鮮などをも巻き込んだ世界戦争である。そうした世界戦争に向かってウクライナで戦争を激化させ、それとインド太平洋戦略を結合し、世界大の戦争陣形を急速に構築しているのが、米帝とNATO、そして日帝だ。この広島サミットを怒りのデモで包囲し粉砕する闘いに立ち上がろう。
 階級的労働運動の発展を基礎に「戦争を内乱に転化する」革命的反戦闘争を、大きく力あるものとしてつくり出すために全力を尽くそう。日本共産党や連合幹部をはじめ、労働者の味方を装ってきた一切の政治勢力が「ウクライナ支援」と称して帝国主義戦争の推進勢力となった今、この「第2インターの崩壊」にも比すべき既成勢力の大崩壊をのりこえる闘いをつくりださなければならない。
 改憲・戦争阻止!大行進が呼びかけるウクライナ開戦1周年2・23全国闘争の成功をかちとり、反帝・反スターリン主義世界革命への道を切り開こう!
〔仲山良介〕

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1912年バーゼル宣言(抜粋)
「戦争勃発の危機が切迫したばあい、当該諸国における労働者階級とその議会代表者との義務は......最有効と思われる手段の利用によって、戦争勃発の防止に全力をつくすことである......それでもなお戦争が勃発したばあいには、そのすみやかな終結のために手をつくし、戦争のもたらした経済上ならびに政治上の危機を、人民をゆりおこすために利用し、それによって資本主義的階級支配の崩壊を促進するよう極力つとめることが、その義務である」「搾取と大衆的殺害の資本主義世界に、諸民族の平和と友好のプロレタリア世界を対置せよ!」
 正式には「社会主義インターナショナル・バーゼル大会宣言」(1912年11月24~25日)。反戦闘争の指導原則として出されたが、第2インターナショナルはこの宣言を裏切り戦争翼賛に転落。レーニン率いるボルシェビキだけがこの立場を貫き、ロシア革命に勝利し戦争を終結させた。

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革共同のウクライナ反戦闘争スローガン
★ウクライナをこれ以上戦場にするな! 米帝・NATOとプーチン・ロシアはウクライナからただちに手を引け!
★ウクライナ戦争を激化させる全帝国主義の軍事支援・参戦反対!
★米欧帝国主義―ゼレンスキー政権とプーチン・ロシアの戦争に労働者階級の立場から反対し、真の解放をめざすウクライナ労働者人民の闘争に連帯しよう!
★ロシアの労働者人民、兵士・家族の反戦決起に支持と連帯を!
★ウクライナ、ロシア、全世界の労働者階級人民は、ウクライナ戦争と中国侵略戦争―世界戦争に反対し、反帝・反スターリン主義世界革命に向かって団結しよう!

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