開戦1年 ウクライナ戦争ただちにやめろ ソ連崩壊後、NATO拡大 米帝は周到に「舞台作り」 帝国主義こそ戦争の元凶

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週刊『前進』04頁(3281号03面01)(2023/02/13)


開戦1年 ウクライナ戦争ただちにやめろ
 ソ連崩壊後、NATO拡大 米帝は周到に「舞台作り」
 帝国主義こそ戦争の元凶


 昨年来、政府・マスコミは、あたかも「平和なウクライナ」に対して突如として「凶暴で野心的なプーチンのロシア」が襲い掛かったかのように事態を描く意図的なキャンペーンを連日連夜繰り広げている。だがそれは、実際に戦争を準備し、戦争を引き起こし、戦争を主導している米帝をはじめ帝国主義を免罪するための虚構にすぎない。これに対し、「この戦争がどういう階級的性格をおびているか、この戦争はなにが原因でおこったのか、それを遂行しているのはどの階級か、どのような歴史上、経済史上の条件がそれをひきおこしたのか、という根本問題」(レーニン「戦争と革命」)を何度でも明らかにしなければならない。

ロシア追い詰めた米欧帝の東欧侵略

 1989〜91年のソ連・東欧圏のスターリン主義体制崩壊後、中東欧諸国には米欧の資本が流れ込み、国際通貨基金(IMF)の融資と引き換えに民営化、緊縮財政、国有企業売却などの新自由主義攻撃がすさまじい勢いで展開された。旧ソ連時代の国有財産をただ同然で手に入れた新興財閥(オリガルヒ)が台頭し、欧米の投資ファンドが巨額の利益を手にする一方、労働者人民は恐るべき経済崩壊と大失業・貧困に見舞われ、犯罪組織の増加や民族紛争の頻発、そして階級闘争の激化がもたらされた。これらを軍事力で制圧しつつ、旧ソ連の核軍事力を引き継ぐロシアを圧迫するため、米欧帝国主義はNATOの東方拡大を進めた。
 99年のNATO軍によるユーゴスラビア空爆など人民虐殺の侵略戦争を伴いつつ、2020年までの5次におよぶ東方拡大でNATO加盟国は16カ国から30カ国へと膨張。21年の推計で加盟国の軍隊は約332万人、国防費総額は約1兆485億㌦(全世界の国防費の57%)という巨大軍事同盟となった。この過程で、08年4月のNATO首脳会議では米ブッシュ政権(当時)が仏独の反対を押し切ってジョージアとウクライナの「将来的な加盟」を認めさせ、14年以降はウクライナのポロシェンコ、ゼレンスキー両政権下でNATO加盟が推進された。
 ウクライナが加盟すればNATOのミサイルは数分でモスクワに届く。のど元にドスを突きつけられたプーチンは21年12月、「NATO不拡大」の確約を米・NATO双方に求めたが拒否され、翌年2月、ついに軍事侵攻に踏み切った。

「反ロ軍事国家」へウクライナを改造

 NATO拡大と一体で米帝は、ウクライナ・ヤヌコビッチ政権が親欧米派のクーデターで転覆された14年以来、ウクライナを前面に立たせた「対ロシア戦争」の準備を周到に進めた。それは米帝が中国侵略戦争を決断していく過程で決定的にエスカレートした。
 沖縄に拠点を置く米海兵隊第3海兵遠征軍のジェームズ・ビアマン司令官は、1月8日付の英フィナンシャル・タイムズ紙上で、「われわれはウクライナで大きな成功を収めることができた。それは2014年以来、ウクライナ人の訓練、物資の事前配置、支援活動や作戦を維持する拠点の特定などに取り組んだからだ。われわれはこれを『セッティング・ザ・シアター(舞台作り)』と呼んでいる」と述べ、「その成功事例を踏まえ、現在は中国との戦争に備えて日本と準備を進めている」とまであけすけに語った。
 実際、米帝は14〜21年の7年間で総額25億㌦超の軍事支援を行い、ウクライナを強力な「反ロシア軍事国家」へと改造した。また14年以来、ウクライナでは極右ネオナチ組織の幹部が政府・軍・治安機関などの要職に就き、白人至上主義武装組織「アゾフ大隊」によるロシア系住民などへの拉致・暴行・略奪・拷問が繰り返されたが、NATOは軍事顧問団を派遣するなどしてこれを支援し、アゾフ大隊をはじめとした民間軍事組織には米英仏加などの軍隊が直接訓練を施した。米欧の後押しを受けるウクライナ軍が親ロシア派武装勢力への攻撃を続けた結果、民間人を含む双方の死者数は8年間で1万4千人に達し、欧州安全保障協力機構(OSCE)によると、そのうち6割がロシア系だという。

ゼレンスキー政権の反労働者的正体

 長引く内戦にウクライナ人民の不満と怒りが高まるなか、19年5月には「東部紛争の平和的解決」「ロシアとの対話」を公約するゼレンスキーが7割を超す得票率で大統領に当選した。
 だが、「コロモイスキー財閥」などのオリガルヒによって政界へ押し上げられたゼレンスキーは、農業を多国籍企業に開放する農地売買自由化や、労働条件の法的規制を撤廃する労働法制改悪などの新自由主義政策を推進、またロシア語をはじめ外国語の使用を禁止するなど前政権以来の弾圧政策も継続した。その一方、自らは税金逃れのためにタックス・ヘイブンに巨額の資産を隠すなどの腐敗を暴かれ、支持率は急落。
 ゼレンスキーは政権延命のために米欧にすがりつき、NATO加盟への動きを強め、21年6〜7月にはNATO諸国と日本、韓国など32カ国と過去最大の合同軍事演習を強行、8月に首都キエフ(キーウ)で「クリミア奪還」を掲げた反ロシア国際会議を開催し、10月にはドネツク州へのドローン攻撃を行った。
 こうして米帝はゼレンスキーを使ってロシアを追いつめ、ついにロシアを戦争へ引き込んだのである。

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