岸田政権の「骨太方針」を批判する 雇用・医療破壊と大収奪、 軍事経済への転換許すな

週刊『前進』04頁(3299号02面01)(2023/06/19)


岸田政権の「骨太方針」を批判する
 雇用・医療破壊と大収奪、
 軍事経済への転換許すな


 戦後最悪の悪法国会の最終盤で「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2023」が閣議決定された。大軍拡と一体で雇用・医療・社会保障の破壊と大収奪、軍事経済への絶望的転換を唱える戦時体制づくりの基本方針である。これこそ新自由主義の大崩壊にのたうつ日帝・岸田の「新しい資本主義」の正体だ。怒りは地に満ち、体制変革を求める実力の闘いが燃え上がっている。

戦争国家化へGX・DX加速

 骨太方針は「防衛力の抜本的強化」を打ち出した昨年に続いて、G7広島サミットを踏まえた安全保障・経済安全保障として軍需産業の強化、武器輸出などを列挙。それと結び付けて核武装のためのグリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速を強調した。
 岸田は6月9日、DX施策の「重点計画」を閣議決定した。新しいマイナンバーカードを26年中に導入するほか、スマホ搭載と母子健康手帳、運転免許証、各種証明書との一体化、ハローワークカードもマイナカードに移行させるなど、個人情報ひも付けと実質義務化を一気に進めようとしている。国家が全てを掌握して徴兵制にまで至る戦争国家化の大攻撃だ。
 しかしその一つ一つが怒りを呼び大攻防となっている。マイナカード返納・マイナ保険証廃止を求める運動が広がっている。河野太郎デジタル相の地元の神奈川県平塚市などでは「マイナンバーへの信頼が揺らいでいる」として、給付金支給でマイナンバーとひも付けた口座情報の利用を停止する事態に発展している。

「賃上げ」掲げ退職金に大増税

 23年版骨太方針には労働者の怒りをかきたてる文言があふれる。「ロシアによるウクライナ侵略」と世界経済リスク、「少子化」の危機に対し、「解決に向けた取り組みそれ自体を成長のエンジンに変える」と強調。「新しい資本主義」の政策で30年ぶりの高い賃上げを実現したと強弁し、それを持続させる①リ・スキリング(学び直し)による能力向上支援、②ジョブ(職務給)型人事、③成長産業への労働移動の円滑化という「三位一体の労働市場改革」を強調した。
 しかし現実は、大資本が最高益を更新する一方、物価高騰下で実質賃金は前年比3・0%低下と13カ月連続で減少、マイナス幅も3月の2・3%から拡大している(厚生労働省4月勤労統計速報)状況だ。
 岸田が言う「構造的賃上げ」のための能力向上とは能力評価が前提であり、職務で賃下げも解雇もできるジョブ型雇用と一体の代物だ。さらに労働移動円滑化のために、現行の退職金制度(終身雇用を前提に長年働くと課税が優遇される)を見直し、退職金への大増税で早期退職・転職を促すと打ち出した。増税によるリストラ解雇の強要だ。
 労働市場改革とは総非正規職化である。「最低賃金を時給1千円に」とも打ち出したが、その賃金では生活できない。兼業・副業を強いるものでしかない。さらに「失業給付のため」と称して週20時間未満のパート労働者にも雇用保険を拡大し保険料を取ると言い出した。現状の強搾取を「持続」するために雇用破壊・解雇横行と収奪を強めると公言しているのだ。労働者を使い捨てにする戦時労働政策への転換である。「分厚い中間層の形成」など聞いてあきれる。怒りの爆発は不可避だ。

「少子化対策」でしぼりつくす

 岸田は大軍拡と共に旗を振る「異次元の少子化対策」の財源について、社会保険料増額と大増税への怒りを恐れ、結論を年末まで先延ばしにした。しかしだからこそ骨太方針は、「社会保障の歳出改革(=削減)の徹底」「全世代型社会保障の実現」を打ち出した。
 高齢者を標的にした年金引き下げと75歳以上の医療費窓口負担2倍化の上に保険料上限引き上げ。さらに65歳以上の介護負担2倍化=2割負担、最終的には医療・介護負担を3割にすることは、全世代の労働者・家族に対する大収奪に踏み出すことを意味する。
 10月からはインボイス制度で売上1千万円以下の免税事業者に対する消費税課税が始まる。その先に消費税大増税が迫っている。

新法による地域医療破壊推進

 骨太方針は、新型コロナ感染対策の位置付けを5類に引き下げたことをもって「医療費適正化」を叫び、病院の再編・統合・廃止、病床大削減の「地域医療構想」を新法の制定を含め推進すると強調した。
 安倍政権は14年、全国の病院を再編し病床を20万床減らす地域医療構想を発表。1999年に165万近くあった病床は19年には153万弱に減少。厚労省は同年9月、公立・公的病院を名指しし都道府県の権限を強化して民営化・独立行政法人化を含む医療体制再編計画の提出を求めた。昨年7月の都立病院独法化もその中で強行された。
 こうした状況下でのコロナ感染の爆発は医療・介護崩壊の現実を突きつけた。現場の医療・介護労働者、労働組合は懸命に闘いぬいた。命の問題であるがゆえに地域医療構想の実行が進まなかったのは当然のことだ。骨太方針はそれ自体を問題とし、「都道府県の権限強化だけでは不十分」として、国の強権で徹底的に進めることを表明した。

看護師に医師業務「代替」させる暴挙

 6月1日、規制改革推進会議の答申が出された。医療の「生産性向上」を掲げ、24年度から始まる残業時間規制で生じる医師不足に対し、医師に代わる看護師を増やし、その業務範囲の拡大も検討するとした。
 看護師は医師の指示のもとで一定の医療行為はできるが、15年に難易度の高い特定の医療行為についても国の研修を受講した看護師が担えるようにした。しかし普及が進まず、受講者は昨秋6千人に増えたが25年度に計10万人という政府目標には遠い。それを一気に拡大しようとしている。
 だが医療現場での人員不足と長時間・過重労働は医師だけでなく看護師も同様だ。疲れ切って退職を余儀なくされる医療労働者が膨大な数に上っている。その根本問題を無視して医師の代替を看護師に強いることは、医療事故、医療崩壊につながりかねない暴挙だ。破綻は必至であり、現場の怒りが爆発している。

絶対反対貫き労働組合再生へ

 大軍拡と入管法・マイナ法改悪をはじめ悪法国会の暴挙があらゆる幻想を崩した。G7広島サミット粉砕闘争に続いて、連合の打倒と体制変革を求める実力闘争の機運が日に日に高まっている。戦争に無縁の産別はない。戦争協力を拒否して総決起し、闘う労組青年部・労組再生へ闘おう。核戦争阻止・岸田打倒の8・6広島―8・9長崎闘争に立ち、11月労働者集会の大結集へ進撃しよう。

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骨太方針2023のポイント
新しい資本主義の加速
・労働市場改革ージョブ型人事、労働移動円滑化→退職金課税の見直し(=増税による雇用流動化の促進)/週20時間未満パートに雇用保険適用(徴収拡大と解雇自由化の促進)
・原子力活用・デジタル化/少子化対策
持続可能な社会保障制度の構築
・全世代型社会保障(*経済財政諮問会議では歳出改革の徹底、高齢者にとどまらない医療・介護負担と保険料増額、増税議論が進行)
・法制上の強制を含む地域医療構想の推進
・マイナカードの用途拡大・データ登録を進め、2024年秋に健康保険証を廃止
防衛力の抜本的強化、経済安全保障の推進
・防衛生産基盤強化法の執行、防衛装備移転(武器輸出)、画期的な装備品の開発

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