焦点 「LGBT法」成立 狙いは運動の取り込みと分断

週刊『前進』04頁(3300号03面03)(2023/06/26)


焦点
 「LGBT法」成立
 狙いは運動の取り込みと分断


 岸田政権は6月16日、「LGBT理解増進法」なる理念法を、参院本会議で可決・成立させた。
 この間、「性の多様性」「寛容な社会の実現」といった美名のもと、与野党が競って「LGBT関連法(条例)」を推進しているが、これらはいずれも差別の解消につながらないばかりか、性的マイノリティの要求と女性解放の闘いとを対立・衝突させ、労働者階級を分断するものでしかない。

世界戦争情勢が背景に

 そもそも岸田の「LGBT法」強行の背景にあるのは、米帝を頭目とする帝国主義が自らの延命をかけ、ウクライナ戦争・中国侵略戦争―世界戦争へと全面的に突き進んでいるという現実である。
 今年2月、駐日米大使エマニュエルが主導し、G7のうち日本を除く6カ国と欧州連合(EU)の駐日大使が連名で、LGBT関連法の整備を求める書簡を岸田宛に提出した。書簡は「差別から当事者を守ることは経済成長や安全保障、家族の結束にも寄与する」とその狙いをあけすけに語り、帝国主義としての経済的・軍事的利害と家族制度強化の観点からも早急に法整備を進めることを日帝に要求した。さらにエマニュエルは、アジア最大級のLGBTイベントと呼ばれる「東京レインボープライド」に25カ国の在日公館大使らと共に参加し、登壇・発言まで行った。そして、多くの女性や性的マイノリティ当事者の懸念と反対意見を無視して「LGBT法」が可決されると、エマニュエルは真っ先に「歓迎」を表明した。
 米バイデン政権がロシア・中国との対立を「民主主義と専制主義の戦い」と描き、G7全体を「人権」や「多様性」の守護者に偽装しようと手を尽くしているのは、それによってあらゆる社会運動を体制の側に取り込み、階級闘争の解体と全人民の戦争動員を進めようとしているからだ。実に「帝国主義段階における世界戦争は、それの史上類例のない残虐さ、破壊の広さに逆比例するかのごとく、総力戦的特質に規定されたものとして社会改良的スローガンの氾濫(はんらん)を不可避とするのである」(本多延嘉元書記長「70年安保闘争と革命的左翼の任務」)。
 国家・資本が進んで運動への接近を図り、今やLGBT関連イベントのスポンサーには軍需産業も含む巨大資本が名を連ねている。

差別の元凶は資本主義

 こうした中、SNSなどでは、女性解放闘争が歴史的に闘いとった女性専用スペースなどの権利が「特権」と攻撃され、それに疑問や懸念を表明した女性が「トランス差別者」とみなされバッシングされるといった、激しい分断が生み出されている。他方、家父長制に基づく伝統的家族制度とジェンダー規範を護持し、女性の「子産み道具」化を強めようとする極右勢力が、「女性の安全を守れ」などと主張して女性の不安や怒りの声をかすめとろうとしている。
 だが洞口朋子杉並区議が議会で指摘した通り、戦時下の「産めよ殖やせよ」の攻撃のもとでは、女性も性的マイノリティも「性の多様性」とは最もかけ離れた現実を強制される。そして一切の性差別の根源は私有財産制と家父長制家族制度にあり、その変革と切り離されたところに差別・抑圧からの解放はない。戦争を内乱に転化する闘い、それと一体の革命的女性解放闘争の組織化を基軸として、あらゆる形態の性差別と闘う人々との団結を構築し、差別の元凶=資本主義の打倒へ共に闘おう。
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