核戦争を許すな! 広島・長崎の怒り解き放とう 米帝が語る「核抑止」はペテン 「核兵器近代化計画」の実態暴く

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週刊『前進』04頁(3303号03面01)(2023/07/17)


核戦争を許すな! 広島・長崎の怒り解き放とう
 米帝が語る「核抑止」はペテン
 「核兵器近代化計画」の実態暴く

(写真 ※米エネルギー省などの資料を元に作成。太字は計画に基づき導入される新型兵器、矢印は将来的な置き換えを意味する。核弾頭「W76-1」「W76-2」はすでに配備済み。なお、核弾頭「B61-12」は戦闘機F35Aに搭載し戦術核兵器としても運用を予定。)


 ウクライナ戦争はますます激化・拡大し、世界戦争・核戦争へ発展しようとしている。帝国主義は「G7広島ビジョン」で自らの核保有を「抑止力」の名で正当化したが、世界に核戦争の脅威をもたらしている最大の張本人はアメリカ帝国主義だ。最強の核戦力をもって全世界を核で脅してきた米帝と、その「核の傘」の下で帝国主義として延命してきた日本帝国主義をはじめとするG7が、ロシア・中国の核兵器を非難するのは全くのペテンだ。そして、今まさに米バイデン政権はオバマ政権時に開始された「核兵器の近代化計画」を全力で推し進め、新たな核戦争の準備を急いでいる。その実態を暴く。

米帝の核兵器関連予算は核保有9カ国総計の5割

 米帝は北大西洋条約機構(NATO)諸国や日本、韓国、オーストラリアなど世界中に在外米軍基地を展開、全世界を射程に入れて核兵器を含む軍事力で世界を覆っている。その年間軍事費は8769億㌦、全世界の軍事費総計2兆2398億㌦の4割に届く。
 モスクワや北京に届く射程の大陸間弾道弾(ICBM)を米本土に数百発も配備し、戦略爆撃機および原子力潜水艦に搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を世界中の米軍基地を通じて展開している。核弾頭の保有数ではロシアが最も多いが、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が6月に公表した報告書によると、2022年の米帝の核兵器関連予算は約437億㌦で、核兵器を保有する9カ国総計829億㌦(約11兆5500億円)の5割以上を占める(グラフ)。ICANはこの829億㌦があれば約12億7500万人にきれいな水と衛生設備を提供できたと試算し、貧困を放置して進む核兵器の拡大を弾劾している。この犯罪的な核政策の最大かつ圧倒的な推進者は、中国でもロシアでもなく米帝なのである。
 米ロだけで世界全体の核弾頭保有数の9割を占めるが、実際の核戦力がいかに米帝に偏っているかは明らかだ。米帝の語る「核抑止論」はペテンであり、米帝を基軸とする搾取と抑圧の体制=覇権を維持するために核兵器が「防衛の役割を果たしている」とうそぶいているにすぎない。
 しかも米帝は今まさに、史上空前の「核兵器の近代化計画」を全力で進めている。2010年、当時のオバマ政権が「30年間で1兆㌦」という巨額をこの計画に投じることを決定。核兵器やその関連設備の改修・老朽化対策による運用年数の延長にとどまらない、全面的な核戦力のアップグレードを開始した。この政策はトランプ前政権に続き、バイデン現政権にも引き継がれている。

「核戦力三本柱」の全てを30年代までに新型兵器へ

 米帝の「核兵器の近代化計画」は、「核戦力の三本柱」を構成するICBM・SLBM・戦略爆撃機の全てにわたり、その発射装置、運搬手段、核弾頭を一斉に更新するというかつてないものだ。1970年に配備されたICBM・ミニットマンⅢはセンチネルという新型に更新する。原子力潜水艦も世界最大級の原潜であるオハイオ級を、さらに高性能化したコロンビア級原潜に更新する。戦略爆撃機については、ベトナム戦争や湾岸戦争に使われてきたB52にも搭載できる、核弾頭も積める新型の長射程スタンドオフ巡航ミサイル(LRSO)の開発が進んでいる。さらに、B52には無いステルス機能を持つ新型戦略爆撃機B21「レイダー」の導入が予定されている。(図)いずれも2020~30年代にかけて更新し、新型ICBM・センチネルやコロンビア級原潜は2070~80年代まで運用する予定だ。
 つまり米帝は、少なくともあと半世紀は「核軍縮」などせず、その核戦力を絶えず更新し続けると宣言しているのだ。帝国主義の打倒なくして「核なき世界」などありえないことは、この一点を見ても明らかだ。
 さらに重大なことは、SLBM搭載用の新型核弾頭「W93」の開発のため、バイデン政権が2023会計年度で前年の約3倍もの予算投入を決めたことだ。完成すれば冷戦後初の新型核兵器となる。トランプ前政権の「核戦略見直し(NPR)」では、他にも「使える核」として小型の戦術核の開発が表明され、通常兵器による攻撃に対しても核兵器で報復する可能性を打ち出して核使用のハードルを下げた。バイデンはこれらを撤回しておらず、引き継いでいる。
 没落し、もはや「普通」の方法ではその覇権を維持できない米帝は、帝国主義としての延命を世界戦争と新たな核戦略・核兵器の強化にかけている。その行き着く先は核戦争以外ない。

原潜保有を狙う日帝の原発政策

 核戦力の中で特に重視されているのが原子力潜水艦だ。イギリス帝国主義は核戦力を全て原潜に集中し、フランス帝国主義の保有する核弾頭はそのほとんどがSLBMである。
 通常の潜水艦は酸素や燃料の補給のために、海中に潜航できるのはせいぜい数日である。対して原潜は、核分裂反応を利用する発電方法のため引き出せるエネルギーが質量に比して格段に大きく、ウラン235は1㌘当たり石油2000㍑分と同等のエネルギーを引き出せる。この電力で水を分解して酸素も補給し、2~3カ月も潜航する。原潜は海のどこにいるか把握することが極めて困難であり、先制核攻撃の手段として決定的なのである。
 元海上自衛隊潜水艦隊司令官の矢野一樹は「対中抑止の切り札」として日本の原潜保有を主張し、「原子力プラントも潜水艦建造も既に習得してきた技術......米国の技術支援を得ずとも既存の技術で5年、小型炉導入でも10年未満で十分建造可能」と述べている(『軍事研究』22年5月号)。福島原発の汚染水海洋放出を象徴として日本帝国主義が原発の維持に凶暴にこだわるのは、迫る中国侵略戦争・世界核戦争へ向けて帝国主義としての死活がかかっているからに他ならない。
 逆に言えば、福島の怒りは日帝の戦争国家化を核心的な部分で阻み、帝国主義をして世界戦争に踏み切ることのできない状況を強制し続けているのである。

労働者階級人民の回答はプロレタリア世界革命だ

 SLBMと並んで米帝が重視しているのが、新型中距離ミサイルの地上配備である。米陸軍長官ウォーマスは7月6日、射程2700㌔メートル以上の新型極超音速中距離ミサイル(LRHW、通称「ダークイーグル」)を持つ新たな多領域作戦部隊を将来的に日本に配備する意向を示した。一度の発射数が限られるSLBMと異なり、地上配備型中距離ミサイルは一斉かつ大量に発射でき、日本から数分で中国本土に到達する。米軍当局は当面、LRHWには核弾頭を搭載しないとしているが、弾頭の種類は外見では判別不可能でいつでも付け替え可能である。ゆえに核保有国による中距離ミサイルは弾頭の種類を問わず「中距離核戦力(INF)」と定義されるのだ。中距離ミサイルの日本配備は核戦争への踏み込みそのものだ。
 「核なき世界」を掲げた米オバマ政権は、実際には核兵器の近代化計画を始動させ、冷戦終結後に米ロの間で表面的にせよ協議されていた「核軍縮」の流れを転換させた。2011年には「アメリカは太平洋国家」だと宣言して「リバランス戦略」を発表、東アジアへの米軍戦力の集中と南西諸島の「戦場化」を伴う対中国シフトを決めた。
 日本共産党スターリン主義をはじめとする体制内左派は、このオバマの「核なき世界」を賞賛し、G7広島サミットではG7首脳が原爆資料館を訪れれば核政策が転換するのだと、帝国主義権力者に依拠すれば核が廃絶できるかのような幻想を宣伝し続けてきた。海を、大地を何万年も残る汚染にさらし、人々の命と健康を奪い、人類を滅ぼす核兵器を互いに向け合う連中に、核兵器の廃止など期待できるはずがない。
 労働者階級人民の回答はこの帝国主義の「現実」を拒否し、反帝国主義・反スターリン主義プロレタリア世界革命によって一切の戦争をなくすことだ。

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