「はじめての防衛白書」撤回せよ 「戦う覚悟」子どもたちに迫る 学校の戦争動員を阻止しよう

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週刊『前進』04頁(3314号02面04)(2023/10/09)


「はじめての防衛白書」撤回せよ
 「戦う覚悟」子どもたちに迫る
 学校の戦争動員を阻止しよう

(写真 第3版の表紙)

(写真 弾道ミサイル避難訓練に学校を動員。教室で身をかがめる児童【9月8日 徳島県】)


 防衛省が8月、2023年版防衛白書に併せて、小学校高学年以上を対象にした「はじめての防衛白書〜まるわかり!日本の防衛〜」第3版を発行した。岸田政権が、子どもたちに「戦う覚悟」を迫り、米日帝国主義の中国侵略戦争―世界戦争に駆り立てようとするものだ。断じて許せない。絶対に撤回させよう。
 今回の「はじめての防衛白書」は、昨年末に岸田政権が閣議決定した安保3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)に対応したものである。分量も内容も一段とエスカレートさせ、大軍拡を宣伝し、子どもたちに国防意識を植え付け戦争に動員していくものだ。
 その特徴は、「戦う覚悟」(麻生発言)を迫っていることである。冒頭の章で、〝ウクライナのようになるな〟と初めて言及し、「国を守り抜く意思と能力が必要」だと主張。前回以上に、敵を圧倒する軍事力が必要だと「抑止力」を強調する。まさに「抑止力を機能させる覚悟が求められている。戦う覚悟だ」という台湾での麻生演説そのものだ。
 そして全編にわたり中国、北朝鮮、ロシアの「脅威」をあおり、排外主義を扇動し、「ロシアを抑えつけ、中国を打ち負かす」(米国家安全保障戦略)戦争へ誘導する。その上で、「防衛力の抜本的強化の7つの分野」の説明に分量を割き、大軍拡を宣伝。とくに、この戦争が中国本土も攻撃する侵略戦争であることを覆い隠すために、「反撃能力」の意義に力を入れる。締めくくりは、小中高生の疑問に答えるコーナーを設け、たくみに自衛隊に勧誘する。
 しかしこれは、「ヒロシマ、ナガサキ、オキナワ」を繰り返すことにほかならない。そのための国防教育を絶対に許してはならない。

自衛官募集業務と一体

 「はじめての防衛白書」は戦時体制づくりの一環に位置づけられている。「国家安全保障戦略」で「安全保障に対する理解と協力を深めるため」に「我が国と郷土を愛する心を養う」ことが明記され、「防衛力整備計画」では「安全保障教育の推進」が打ち出された。すでに自衛隊は学校での「安全保障教育」を必修科目として導入することを政府に働きかけている。
 防衛相に就任した木原稔は「教育勅語」の全文を事務所に掲げ、自民党青年局長だった2014年に「子どもたちにどうして憲法改正をしなければいけないのか、これは学校で教えてもらうしかありません。文部科学省にも指導して、やっていただかなければならないことでもあります」と述べている。「はじめての防衛白書」の副読本化を狙っていることは間違いない。
 8月15日放送のNHKスペシャル「Z世代と戦争」では、「日本が戦争に巻き込まれたらどうするか?」の質問に対し、10~20代3000人の36%が「戦闘に参加せず戦争反対の声を上げる」、21%が「逃げる」、5%が「戦闘に参加する」と回答した。子どもたちの大半が戦争に協力しないという現実を岸田政権はひっくり返そうとあがいているのだ。
 この間、内閣官房が主導する弾道ミサイルを想定した住民避難訓練も、国防意識を住民・子どもたちに体でたたき込もうとするものだ。23年度の訓練はすでに9月時点で全国13カ所で実施され、そのうち8カ所で園児・児童・生徒が動員された。戦争動員の拠点にこども園、小学校、中学校が狙われている。
 第2次大戦中、教員は「忠君愛国」の教育で、「少年航空兵」や「満蒙(まんもう)開拓少年義勇軍」の志願を募り、教え子を戦場に送った。新たな戦時下で、「はじめての防衛白書」は教育労働者を、教え子を戦場に送る担い手に再びするものだ。自治体の自衛官募集業務と一体の攻撃だ。子どもたちを戦場に送るな! 学校の戦争動員を許すな! 「はじめての防衛白書」を学校に持ち込ませず、撤回させよう。

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