危機に駆られ岸田が経済対策 人民の怒りかわし大軍拡狙う

週刊『前進』04頁(3316号02面02)(2023/10/24)


危機に駆られ岸田が経済対策
 人民の怒りかわし大軍拡狙う


 岸田政権は10月20日からの臨時国会に23年度補正予算案を提出する方針だ。この補正予算を軸とした経済対策について、岸田は「成長の成果である税収増を国民に還元する」とうそぶいた。22年度の国の税収が過去最高の71兆1千億円になったことを、自分の手柄のように言い立てたのだ。だが税収増は「成長の成果」などではなく、経済を優先してコロナ感染症対策を意図的にやめたことと、インフレの結果に過ぎない。
 この岸田の発言に呼応して、政権与党の中から低所得世帯への給付や所得税の減税を求める声が急速に上がった。戦時下インフレに苦しむ労働者人民の怒りをなだめようと必死なのだ。
 だが、岸田がやろうとしていることの根本は、大軍拡と大増税、社会保障の解体だ。岸田は補正予算案を国会提出した上で、年内にも衆院解散・総選挙に打って出ることを狙っている。11・19労働者集会はこれとも対決する決戦になった。

労働者の怒りを恐れ「減税」表明

 日本は22年3月末段階で国と地方を合わせて1255兆円もの長期債務を抱える最悪の財政破綻国家だ。だが岸田は、23年度から27年度までの5年間で43兆円の防衛費を支出すると決定した。これに照らせば減税の余地などないはずだ。
 だが、自公は減税などの一時しのぎの対策を叫ばざるをえない。岸田の政権基盤がきわめて脆弱(ぜいじゃく)だからだ。各マスコミの世論調査でも、岸田の支持率は過去最低となり、不支持率も過去最高を更新した。岸田は労働者人民の怒りで打倒されることを心の底から恐れている。
 だがそれは、「岸田には戦争など遂行できない」ということではない。危機にあるから岸田は戦争に突進することで支配階級をまとめようとする。中国やロシア、北朝鮮への敵意をあおり、労働者階級を排外主義に取り込もうと全力を挙げる。その手先が連合だ。
 米欧帝国主義と共にウクライナ戦争に参戦し、パレスチナ人民の虐殺に加担し、中国との戦争の切迫を振りかざして野党を総屈服させれば、総選挙で政権を維持できるというのが岸田の思惑だ。それがまかり通ったとき、岸田は手のひらを返したように大軍拡と大増税、社会保障の全面解体に突き進んでくるのだ。

根幹にあるのは戦時体制づくり

 それは、岸田が掲げる「経済対策5本柱」にも示されている。5本柱とは、①物価高対策と経済の足場固め、②賃上げの継続、③投資拡大の流れの強化、④人口減少を乗り越える社会変革、⑤国民の安全・安心の確保——というものだ。
 物価高対策というが、円安をもたらしインフレを加速している日銀の金融緩和策はやめられない。金利を上げれば国家財政の破綻に直結するからだ。
 「賃上げの継続」とは徹底した雇用の流動化だ。岸田は「リスキリング(学び直し)」を叫び、労働力を生産性の低い部門から高い部門に移すことが賃上げの前提だという。破産した新自由主義をさらに破滅的に貫くということだ。岸田は「23春闘で賃上げの流れができた」とうそぶくが、実質賃金は17カ月連続で低下している。岸田が「賃上げの流れ」を口にするたびに、労働者の怒りはかき立てられる。だから岸田は、連合を先兵に実質賃下げを強いるほかにないのだ。
 投資拡大とは、大資本を潤すための方策だ。岸田がまず唱えたのは、国内投資の拡大や賃上げに取り組む企業への法人税減税や補助金の支出だった。企業減税の裏側にあるのが、インボイス制度による実質的な消費税の増税だ。戦時に備えて国内で半導体の製造拠点を確保するため、資本に膨大な補助金を出すことも、投資拡大には含まれる。
 「人口減少を乗り越える社会変革」の本質は、自民党が埼玉県議会に提出し、人民の怒りで撤回に追い込まれた「虐待禁止条例」改定案が示している。国家が家庭に土足で踏み込み、戦時統制下に置くということだ。新自由主義は女性を非正規雇用の労働力として労働市場へと徹底的に駆り出した。さらに子育ての全責任を押し付けて「産めよ殖(ふ)やせよ」を強いることが、岸田の言う「異次元の少子化対策」だ。
 「国民の安全・安心の確保」とはまさに戦争を意味する。軍事費2倍化と大増税、膨大な財政を投入しての軍需産業の育成だ。
 この経済対策が出される臨時国会を機に、岸田は戦時体制構築にさらにのめり込もうとしている。これと対決し、戦争を阻止する決戦が11・19労働者集会だ。
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