パレスチナ連帯闘争が新段階に 帝国主義とスターリン主義の世界支配覆す闘い始まる

週刊『前進』04頁(3323号03面02)(2023/12/11)


パレスチナ連帯闘争が新段階に
 帝国主義とスターリン主義の世界支配覆す闘い始まる

(写真 即時停戦・パレスチナ解放を求める博物館前での抗議行動【12月2日 ニューヨーク市】)
(写真 11月16日、カリフォルニア大学バークレー校で行われた抗議行動。ジェノサイドを正当化する自国政府、大学当局に怒りが爆発した)

 イスラエルは12月1日、ガザ地区への攻撃を再開した。北部から南部へと全土に侵攻を拡大し、死者は戦闘再開から24時間で200人以上に達した。アメリカ帝国主義・主要7カ国(G7)を元凶とするこのジェノサイド・民族浄化に対して、全世界の労働者人民の憤激が爆発している。特にアメリカでは、これまでイスラエル・シオニズムに反対すると「反ユダヤ主義」「差別者」とレッテルを貼られ、資本や大学当局、既成労組からも解雇や処分攻撃を受け、シオニスト・イスラエル機関からのテロ・脅迫も行われてきた。だが今回、学生が先頭に立って真正面から闘い、この重圧をついに突破した。時代を変える闘いが始まった。

大学構内で実力闘争展開

 カリフォルニア大学バークレー校では、長い共闘関係にある「パレスチナに正義を学生同盟」(SJP、アラブ系団体)と「平和を求めるユダヤ人の声」(JVP、ユダヤ人団体)が先頭に立ち、10・7蜂起直後から大規模な学内集会、デモを組織。大学当局と反動教員、シオニスト学生の妨害を打ち破り、授業放棄集会や座り込みなど実力闘争を拡大した。
 東部のコロンビア大学などでは、シオニストが巨大LED画面付き宣伝トラックでデモに参加した学生の顔写真と個人情報をさらし、学内外を走らせている。そのために家族まで重大なハラスメントにさらされている。大学当局も抗議行動を「反ユダヤ主義」「ヘイト」と決めつけ、寮から排除された参加者もいる。コロンビア大当局はJVPをも「反ユダヤ主義者」と呼んで禁止処分にした。だが「われわれの名を使ってジェノサイドをするな!」と自らの存在をかけて立ち上がったJVPを始めとする活動家たちは広範な学生の心をつかんだ。
 各地でのデモも規模を拡大し、軍需物資輸送阻止闘争も次々と闘われている。

自らの解放をかけ各国で人民が決起

 イギリスでは80万人の巨大デモが行われ、フランスでは膨大な数の人民の決起でマクロン政権がデモ禁止令を撤回せざるをえなくなった。ドイツでも激しい禁圧を破り、自国の戦後処理を問う大デモが闘われている。そして各国でユダヤ人団体がシオニストと闘う巨大な隊列を組織している。
 ムスリム諸国でも圧倒的な大衆が決起し、インドネシアでは1千万人が街頭に出た。この間のサウジアラビアなどの反動王政諸国によるイスラエルとの関係構築の動きは、共同で人民を弾圧・抑圧しようとする策動だったが、10・7以降の人民の決起によって粉砕された。2010~11年のチュニジア革命、エジプト革命がよみがえりつつある。
  「グローバルサウス」と呼ばれる国々では、アパルトヘイト(人種隔離・抑圧)体制と闘い勝利した南アフリカ共和国の労働者人民が真っ先に決起した。
 南ア・パレスチナ連帯連合(PSA)は、10・7蜂起当日に武装闘争を含む抵抗運動断固支持の声明を出した。最大労組・南ア金属労組(NUMSA)などが次々と「あいまいさのない連帯」を表明し、デモ・実力闘争に決起している。米英帝の先兵としてアパルトヘイト体制の治安弾圧機構を支えてきたイスラエルへの南ア人民の怒りは深い。
 イスラエルは中南米でも労働組合員や左翼政党などの暗殺・拉致・拷問を軍事政権と共に推進してきた。世界各地の人民にとってパレスチナの戦いは自分自身の解放の問題だ。積年の憤怒が10・7蜂起を機に世界的に解き放たれ、米帝・G7は求心力を失っている。

シオニズムは支配の武器

 1917年ロシア革命は、資本主義から社会主義への世界史的過渡期を切り開いた。国際共産主義運動のスターリン主義的歪曲にもかかわらず、帝国主義は30年代の革命的階級闘争におびやかされ、また第2次大戦後の戦後革命・民族解放闘争に直面した。
 そのため、米帝は戦後世界体制を「帝国主義とスターリン主義の分割支配体制」として形成し、世界中に米軍基地と軍事同盟網を張り巡らせた。そして、南朝鮮(韓国)、台湾、イスラエルといった反共軍事基地国家を作り、南アのアパルトヘイト体制を護持して反動の砦(とりで)とした。中東産油地帯・スエズ運河直近という決定的位置にあったパレスチナにイスラエルを「建国」することは死活的な意味をもった。ソ連スターリン主義が賛成し共犯となった47年の国連パレスチナ分割決議と48年の第1次中東戦争での大虐殺、70万人の追放・難民化が現在の戦争の原点だ。
 もう一つ重要なのは、19世紀末に始まるユダヤ人国家建設運動=シオニズム運動は、帝国主義国の国内階級闘争を分断し、圧殺するためにも育成されたことだ。「シオニズム運動の父」といわれるテオドール・ヘルツルらは英独帝国主義に財政的・政治的に支援され、19世紀末のユダヤ人差別反対運動が社会主義運動と結合して発展していたことへの危機感から出発し、プロレタリア革命運動だけでなく相互扶助団体、宗教団体なども含めた従来のあらゆるユダヤ人運動を攻撃していった。そのためシオニズム運動は長い間ごく少数にとどまっていた。転機となったのがナチスの台頭だ。シオニストはナチスと協力し同胞を収容所・ガス室に送り込んだ。米帝もナチスから逃れたユダヤ人の入国を拒否し、パレスチナへの移民に誘導した。
 戦後、米帝主導の世界的な労働運動再編でもシオニズムは大きな役割を果たした。国際自由労連と社会主義インターナショナルは、イスラエルのヒスタドルート(労働総同盟)と「マパイ」(労働党)を加盟させることで帝国主義労働運動への変質を一層推進した。
 ヒスタドルートはイスラエル労働運動のナショナルセンターを名乗るが、シオニストのパレスチナ人攻撃のための武装部隊ハガナの母体だ。大銀行や大工場を所有し、通常の意味での労働組合ではない。それを基盤とするマパイも戦前・戦後のシオニズム運動・イスラエル政府の主流であり、ジェノサイドの主犯だ。

ドイツ戦後処理のペテンを暴く闘い

 敗戦国ドイツの戦後処理も、イスラエル「建国」と表裏一体でなされた。現在もショルツ独首相らは「イスラエルの安全保障はドイツの国是」と言っている。
 戦後ドイツは東西分割され、東独は「ナチスとは関係ない」と言い、西独は道徳主義的に「ナチス時代の反省」を言いつつシオニストによるパレスチナ人の土地の強奪を支援し、それを「償い」と称してきた。こうした戦後の根源的なペテンが今、ドイツ人民の闘いで大衆的に暴かれている。
 本質的には同じペテン的な戦後処理をしてきた日本帝国主義も、10・7蜂起に必死に応えた日本と世界の労働者人民の闘いで危機にたたき込まれている。
 米帝基軸の戦後世界体制は、経済的・軍事的・イデオロギー的に破綻している。この大崩壊の中で中国侵略戦争に突進する米日帝国主義を打倒しよう。反帝国主義・反スターリン主義世界革命を今こそ闘いとろう。
(村上和幸)
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