復権狙うドイツ帝国主義 米帝の「欧州離れ」利用し改憲と大軍拡へかじ切る
週刊『前進』04頁(3393号02面02)(2025/04/28)
復権狙うドイツ帝国主義
米帝の「欧州離れ」利用し改憲と大軍拡へかじ切る

(写真 CDUが極右AfDと連携して進める移民排斥に怒りが爆発し、ベルリンでは2月2日に20万人のデモが闘われた)
没落を深めるアメリカ帝国主義・トランプ政権は、自らの延命をかけて中国スターリン主義体制を転覆する戦争に乗り出すことを決断した。今や米帝は、戦後世界体制を自ら破壊してでも「国力」の一切を中国侵略戦争に振り向けようとしている。こうした動きに揺さぶられて欧州では戦後体制の崩壊が急速に進み、これ自体が世界戦争に向けた動きを加速させている。
「米国第一」を掲げるトランプは以前から、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する欧州諸国の軍事支出は米国に比して不十分だと述べてきた。そして2月にNATO本部を訪れたヘグセス国防長官は、「米国を脅かす能力と意図を持つ共産中国という競争相手とも直面しており、米国の基本的国益はインド太平洋地域にある」と表明。「欧州大陸の通常の(核兵器以外の)安全保障は欧州各国が責任を負うべきだ」と述べ、加盟国に軍事費を国内総生産(DGP)比5%まで引き上げるよう求めた。
トランプ就任受け再軍備計画を発表
欧州帝国主義諸国は、こうしたトランプの「欧州離れ」に動揺しながらも、独自の軍事大国化への衝動を強めている。欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は3月4日、総額8千億ユーロ(約130兆円)規模の「欧州再軍備計画」を発表した。また、イギリスと並ぶ核保有国フランスの大統領マクロンは、欧州におけるフランス主導の核共有を公然と提案するに至っている。鍵を握るのはEUの柱をなすドイツ帝国主義だ。5月初旬に首相に就任する予定のキリスト教民主同盟(CDU)党首メルツは第2次トランプ政権発足を受け「防衛政策のパラダイムシフト」を主張した。CDUは2月末の総選挙を前に、反移民法案を通過させるため極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と連携した。メルツは今後も「不法移民」取り締まり強化や外国人の強制送還を進めると表明している。
そして3月22日には、軍事費を増やすために、財政赤字をGDPの0・35%未満に抑える「債務ブレーキ」を一部解除することを定めた基本法(憲法)改定案が成立した。「ドイツは帰ってきた」というメルツの言葉通り、これは独帝が「ナチスの反省」という戦後の建前をかなぐり捨てて敗戦帝国主義としての制約から自らを解き放ち、再びむき出しの帝国主義として登場するという宣言だ。
1949年に創設されたNATOは「米国を中にとどめ、ロシアを締め出し、ドイツを抑える」ことを役割としてきた。しかし今や、この枠組み自体が根本から揺らいでいるのだ。
排外主義をあおり戦時体制構築急ぐ
この財政規律緩和は戦後の欧州における独帝の地位を掘り崩すと同時に、ドイツ第一主義を貫けない形での戦争と軍拡が「国民の社会福祉を圧迫する」と批判する極右勢力が、生活に困窮する労働者人民の支持を集める原因ともなっている。実際に、4月9日に公表された世論調査ではAfDの支持率が25%に達し、結党以来初めて首位となった。こうした中でドイツ政府は、移民法を使ってパレスチナ連帯闘争への弾圧を激化させている。3月には、ベルリン自由大学でパレスチナ連帯の座り込み闘争に参加した外国籍の学生ら4人が「公共の秩序と国家安全保障を脅かす」存在であるとし、4月21日までにドイツを離れなければ強制的に国外退去させると通告した。トランプ政権がパレスチナ人学生らに対して行っている弾圧と全く同じだ。
しかし4人は「ドイツによるジェノサイドへの加担を断固として非難し、強制送還攻撃と闘い抜く」「国内、世界中で歴史の正しい側に立ち迫害されている全ての人々と連帯する」と宣言して闘い続けている。
既存の支配体制の崩壊が引き寄せる帝国主義戦争を内乱に転化する闘いが今こそ必要だ。戦時体制構築と一体で激化する排外主義に立ち向かうドイツの労働者人民と連帯し、石破打倒の反戦闘争を巻き起こそう。
