トランプが予算教書を発表 中国侵略戦争突入に向け 第2次大戦以来の大軍拡
週刊『前進』04頁(3396号02面04)(2025/05/19)
トランプが予算教書を発表
中国侵略戦争突入に向け
第2次大戦以来の大軍拡
トランプ政権は5月2日、2026会計年度(25年10月〜26年9月)の予算編成について大統領の考えを議会に示す「予算教書」の概要を発表した。そこで打ち出されたのは、軍事予算が前年度比13・4%増の1兆119億㌦(約146兆円)という歴史的な大軍拡だ。軍事予算が1兆㌦(現在のドル価値に換算)を超えるのは、第2次世界大戦が最も激しく戦われていた1944~45年以来のことだ。しかも多くの議員からは、これでも「国防費が足りない」との声が上がる。今後、議会で予算案が可決される際にはさらに上積みされる可能性が高い。
軍事と治安弾圧に予算の75%を集中
国防省予算の項では「優先的な投資は、米本土の安全と主権の強化、インド太平洋地域での中国による侵略の抑止、米国の防衛産業基盤の再生である」と宣言し、次の項目を列挙する。①米軍の環境対策やDEI(多様性・公平性・包摂性)関連の予算項目を廃止し、資源を戦闘員に振り向ける、②「ゴールデンドーム」という次世代ミサイル防衛システムの開発と配備、③米国の造船能力とその産業基盤の拡大、賃上げとインフラの近代化、④米国の宇宙支配の強化、⑤第6世代戦闘機F47の開発、⑥国境における脅威と侵略からの米本土の防衛、⑦核抑止力の近代化、⑧米軍人の給与増額
最初に掲げられたDEIそれ自体は、アメリカ帝国主義と不屈に闘ってきた差別反対闘争を歪曲し、破壊するための民主党の政策にほかならない。現実には民主党も共和党と同様に差別と戦争を推進する側に立っているが、共和党トランプは、DEI政策を攻撃することで「対立」を演出しているのだ。
ゴールデンドームは、80年代のレーガン政権の戦略防衛構想(いわゆる「スターウォーズ計画」)に等しい、技術的には非現実的な構想だと言われている。だが問題は、ミサイル防衛の名のもとに新たなミサイルと宇宙レーダー網を開発し、大量に配備することだ。中国侵略戦争は、核戦争へとエスカレートするのだ。
そして米国の造船能力の増強は、航空・海上戦での中国に対する継戦能力強化のために不可欠になっている。そのために米帝は日韓にも圧力をかけ、造船・修理能力の拡大に動員しようとしている。
また、国境管理などを管轄する国土安全保障省の予算は約65%増えた。軍事予算と国土安全保障省、司法省、退役軍人省などを合わせた国内弾圧関係の予算は全体の75%を超える。
戦時下の緊縮財政に人民の怒り沸騰
だが他方で、労働者人民の生活関連予算は大幅に削減されている。教育省では教育民営化のための「チャータースクール関連予算」が6千万㌦増額されたが他はすべてカット。全体では787億㌦から667億㌦へ激減だ。保健福祉省は1270億㌦が938億㌦に、労働省は360億㌦が332億㌦にされた。予算総額は1兆6911億㌦(約243兆円)で、このうち軍事費を除く部分の支出は前年度比で22・6%の大幅減となった。かつてない規模の緊縮予算だ。
予算教書が対象とする「裁量的経費」とは別建ての、年金やメディケア・メディケイド(高齢者・低所得者向けの公的医療保険)などの「義務的経費」でも問題が拡大している。「政府効率化省(DOGE)」による破壊的な大量解雇で年金給付などの事務が滞り、また多くの人が医療を受けられなくなっている。
トランプ関税によるサプライチェーンの崩壊で自動車産業をはじめ多くの労働者が解雇され、物価もますます暴騰している。この状態での急激な緊縮財政は、生活破壊と地域社会全体の崩壊的危機をさらに深刻化させる。労働者階級と中間層のあらゆる部分から、すでに怒りが噴出している。
国務省・国際開発局(USAID)の予算も削減される。従来の「支援」という建前すら投げ捨て、新植民地主義体制に、むき出しの強権と戦争による支配を貫くということだ。この米日帝による中国侵略戦争を絶対に阻止しよう。