中国包囲網構築へ動く石破 東南アジア諸国と軍事協力加速
週刊『前進』04頁(3396号03面02)(2025/05/19)
中国包囲網構築へ動く石破
東南アジア諸国と軍事協力加速

東中国海、南中国海、朝鮮半島を「ワンシアター(一つの戦域)」とする構想を打ち出した日本帝国主義・石破政権は、東南アジア諸国を中国包囲網に取り込もうとしている。没落し凶暴化するアメリカ帝国主義と一体化し、中国侵略戦争に向けた軍事協力関係を各国と構築しようと激しく動き出しているのだ。狙いは「ワンシアター」構想の具体化にほかならない。
連休中に比、越、印と相次いで会談
石破は首相就任後の最初の外遊として、昨年10月にラオスで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に参加した。今年1月にはマレーシアとインドネシアで首脳会談を行い(両国には5月にも岸田文雄前首相が石破の特使として訪問)、4月28日にベトナム、29日にはフィリピンで首脳会談を行った。そして5月には14億を超す人口を擁するインドと日印防衛相会談を開き、「インド太平洋地域における日印の防衛協力(JIDIP)」と称する軍事協力の取り組みを発表、自衛隊とインド軍の共同訓練の拡大などのための協議体を新設することを決めた。フィリピンとは4月29日の首脳会談で、自衛隊と比軍が物資を融通し合うことを可能とする物品役務相互提供協定(ACSA)と軍事情報を交換するための軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の早期締結へ動くことで一致した。この二つの協定が結ばれれば、先立って結ばれた自衛隊と比軍が相互に往来しやすくなる円滑化協定(RAA)と合わせて、日比はオーストラリア並みの「準同盟」関係となる。昨年5月の日米豪比防衛相会談を通じ、すでに「スクワッド(SQUAD)」という呼称があるほど、この4カ国の軍事協力は激しく進行している。
ベトナムとは4月28日の首脳会談で外務・防衛次官級協議(2プラス2)の創設を決め、さらに自衛隊の軍事装備品を無償供与する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の受け入れをベトナム側が検討することを表明した。また昨年12月には、ベトナム軍主催の軍事装備品の国際展示会に初めて米軍が参加した。これまでは主にロシア製兵器を運用してきたベトナムが明確に兵器の調達先を変え、政治・軍事的関係を再編しようとする動きが進んでいるのである。
日帝・石破政権は、インドネシアとは今年中の2プラス2の開催で合意し防衛実務者間の協議を立ち上げることを決定、マレーシアとは軍事協力の強化を確認した。海上自衛隊とマレーシア軍は昨年に3回、今年もすでに2回の共同訓練(MALPAN)を実施し、急速に関係を深めている。また、タイとは米タイの大規模共同演習「コブラ・ゴールド」への参加などを通じて緊密な関係を構築してきている。フィリピンとのRAA締結の際、これまで締結するごとに法制化していたものを「RAA実施法」として一般化した法律が新たに制定されており、新たな締結先としてこれらの東南アジア諸国をにらんでいることは明白だ。
アジア人民と連帯し日帝打倒へ闘う
一方で、ベトナム、フィリピン訪問後に記者会見に立った石破は冒頭、「我々は忘れているけれど、向こうは忘れていない」と言わざるを得なかった。フィリピンでは日帝との関係強化の中で紙幣のデザインが変更されたが、2022年までは最高額紙幣の1千ペソ札に「抗日戦争の3人の英雄」が描かれ、人民の記憶には日帝の暴虐が深く刻まれている。実際、RAAはまだフィリピン国会では承認されていない。マレーシアとインドネシアは昨年、ロシアと中国が主導するBRICS加盟を決めた。大没落する米帝が、「米国第一」をむき出しにさせたトランプのもとで国際的威信を失墜させ、東南アジア諸国を離反させつつある中で、日帝はこれらの国々を帝国主義の側につなぎとめ、中国包囲網を築き上げようと必死になっているのだ。アジア人民と連帯し、日帝本国でこそ石破打倒へ闘おう。