女性が先頭に立つ運動を 洞口杉並区議(大行進呼びかけ人)が講演 反戦と女性解放は一体

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週刊『前進』04頁(3404号02面01)(2025/07/14)


女性が先頭に立つ運動を
 洞口杉並区議(大行進呼びかけ人)が講演
 反戦と女性解放は一体

(写真 洞口朋子杉並区議)

(写真 会場が満員に【7月5日 東京都内】)


 改憲・戦争阻止!大行進東京は7月5日、洞口朋子杉並区議(大行進呼びかけ人)を講師として「女性解放闘争学習会」を開催した。洞口区議は、「米日帝国主義による中国侵略戦争の切迫という歴史的な情勢の中、参院選で日本がこの戦争を主体的に担おうとしていることに触れている政党はない。逆に、参政党や保守党といった極右勢力が差別・排外主義を蔓延(まんえん)させている。今こそ女性が社会を変える主体として反戦闘争をいきいきと闘うことができる運動を私たちの手でつくり出そう」と訴えた。そして、運動内で女性差別・性暴力事件を発生させてしまったことを謝罪した上で、「帝国主義・天皇制と女性差別」「女性差別を克服する闘いをつくり出すために」の二つのテーマを一体的に提起した。洞口区議の講演の要旨を紹介します。(見出しは編集局)

自身と運動の変革が課題

 「性暴力」「女性差別」とは何かということが、今の社会の中で覆い隠されている現実があります。しかし、多くの女性たちが様々なところで怒りの告発に立ち上がっています。
 性暴力とは、自分が望まない、同意のない、対等でない、強要された性的行為のことです。「魂の殺人」とも言える一生消えない心身への傷を負わせ、それまでの人間関係・社会関係をも破壊します。被害者は被害を明らかにするかどうかの判断を迫られ続け、明らかにしてもしなくても不利益を強いられます。
 性暴力は、「女性を支配したい」「優越感を得たい」という女性蔑視、他者との関係性での認知の誤りなどから引き起こされます。そのため、加害者はしばしば加害の事実をわい小化し、「合意があった」と自身の行為を正当化し、逆に被害者に責任を転嫁するのです。
 性暴力被害者は「この社会・組織から性暴力をなくしたい、人間による人間の支配・蹂躙(じゅうりん)をなくしたい」と、全存在をかけて立ち上がっています。女性差別・性暴力の廃絶に向かって、きわめて具体的に自らと運動を変革する闘いが不可欠です。

女性解放と共産主義革命

 女性支配・抑圧・分断・差別の歴史をマルクス主義(唯物史観)に基づいて簡潔に言えば、①人類が生産力を発展させる中で社会的分業を拡大し、②奴隷主と奴隷のような、富の私的所有に基礎を置く「階級」を形成、③財産を確実に相続するための家父長制家族と一夫一婦制へと移行しました。エンゲルスは『家族・私有財産・国家の起源』で「母権制の転覆は、女性の世界史的敗北であった」と表現しています。
 階級社会の形成と一体で男性による女性への圧制が始まり、一夫一婦制を男性優位に補完する娼婦(しょうふ)制度と売買春が横行し、女性は「家内奴隷」「子産み道具」とされました。また、基軸的な社会的生産から排除された女性の労働は私的労働、補助労働とされ、女性は社会的「無能力者」とされました。女を「劣った性」「弱い性」とする差別・抑圧のイデオロギーが歴史的に形づくられたのです。
 資本家階級による生産手段の私的所有と労働力の商品化は、ブルジョア家族制度を一夫一婦制=家父長制家族の完成として単純化・純粋化する一方、「性」そのものの商品化を生み出しました。また「家」は私有財産の相続の単位として、ブルジョア社会の「最小の経済的単位」となります。他方、プロレタリア女性は、いわば「半人前」として差別的・分断的に動員・包摂され、ますます多く賃労働者化しました。
 資本主義が帝国主義段階へ移行すると、女性への差別・抑圧は一層激化し、家族制度・イデオロギーは反動的に強化されました。さらに、体制の存亡をかけた大反革命として登場した新自由主義は、見せかけの「男女平等」でリベラル勢力をも取り込みながら徹底的に女性の権利を破壊しました。日本では1987年の国鉄分割・民営化、85年の労働者派遣法とセットでしかけられた85年の「男女雇用機会均等法」制定を一つの転機に、膨大な数の女性を非正規職にたたき込むと同時に、女性への差別・抑圧を極限化しました。
 しかし、女性差別・性暴力に怒り、根底的に立ち上がる決起も膨大に始まり、これまで隠されてきた女性差別・性暴力の実態が暴かれています。この女性の決起は、本質的に労働者階級解放―全人間解放という要素を含んでいます。求められているのは、女性差別・抑圧の根源である労働力商品化と私有財産制の廃止に向かうプロレタリア革命であり、侵略戦争によってしか延命できない帝国主義を青年・学生・女性の決起で打倒することです。
 プロレタリアートの自己解放=共産主義革命の中でこそ、女性支配・抑圧・差別の数千年の歴史は終止符を打たれます。そして、プロレタリア女性の存在と闘いの中にプロレタリア革命と女性解放の現実性があります。プロレタリア革命にとって女性解放は必須不可欠の課題です。

天皇制こそが差別の根源

 天皇制とは極限的な女性差別制度であることをまず確認したい。多くの女性を側室=「子産み道具」とすることで初めて成り立ってきたのが男系の「万世一系」です。
 近現代の日本における性差別の特殊性は、天皇を「家父」として臣民をその「赤子」に見立てた「家族国家」としての支配構造を確立したことにあります。その中軸に据えられたのが、女性の平等権を否定する家父長制家族制度・家族イデオロギーです。天皇制国家への服従と侵略思想を全民衆にたたき込むことで、日帝支配階級は労働者や農民への過酷な搾取と収奪を貫き、侵略と戦争に民衆を動員し、「国力増進」のための出産強制=「産めよ殖(ふ)やせよ」政策にまで行き着きました。
 天皇制とは単なる「封建制の残りかす」ではなく、資本主義社会における労働者階級への強権的支配のために古い家族制度・家族イデオロギーを再確立した国家体制なのです。
 日帝が中国侵略戦争に突き進み、政治支配・階級支配の危機を深める中、天皇制が戦争翼賛のイデオロギーとして最大限利用されています。上皇アキヒトや天皇ナルヒトがリベラルであるかのようにかつぎ上げられ、日本共産党を含む全勢力が天皇制存続に躍起になっています。天皇制は差別・排外主義の頂点にあり、資本主義国家の階級支配を支える装置です。中国侵略戦争阻止と天皇制打倒こそがわれわれの立場です。

全学連が切り開いた地平

 2019年に私が卒業したことで、全学連の女性活動家はいったんゼロになりました。その後、矢嶋尋現委員長をはじめ女子学生が陸続と革命運動に決起します。全学連は正面から女性解放闘争に取り組み、新たな地平を切り開きました。
 それは一方で、決起した女性が男性同様に運動の担い手となることを「女性解放」と単純化させ、他方で運動内の女性差別との対決を軽視・蒸発させてきたあり方を乗り越えて、女性解放闘争を女性解放闘争として発展させていく闘いでした。また、70年安保・沖縄闘争の爆発を受けて執筆された「革命的女性解放闘争の創成のために」(田島優子論文)と、「血債の思想」を現代に復権させる闘いでもありました。私たち一人一人が全学連から学び、女性解放闘争の担い手としての主体的な変革と飛躍をかちとりましょう。
 昨年の4・28沖縄デー渋谷闘争後の交流会で、全学連の松本彩乃さんに対する性暴力事件(「4・28事件」)が発生しました。松本さんの身を削るような決起から、女性解放闘争の路線的深化の取り組みが始まりました。政治運動に立ち上がった女性たちに攻撃や性差別・抑圧が集中してしまう現実の中で、いかに女性の決起を防衛し、ともに闘っていくのかが鋭く問われています。

運動内の差別克服へ闘う

 さらに昨年末、私たちとともに闘ってきた関西の仲間の中で重大な女性差別事件が発生し、しかも被害女性から相談を受けた仲間が加害者を擁護し、逆に当該の女性に責任転嫁するという二次加害まで行われていたことが発覚しました。運動に展望を見いだして決起した女性を裏切り、絶望に追いやる、絶対に許すことのできない階級犯罪です。
 女性差別・性暴力の告発・糾弾に立ち上がった女性同志とともに闘うのではなく、その女性を糾弾し黙らせたことは、単なる「女性差別への無知・無理解」では済まされません。組織と運動の根幹において女性解放闘争が欠落し、それと一体で「女性指導部建設」を放棄し、居直っていたのです。核心は女性差別への無関心と、決起した女性、その背後にいる無数の女性への徹底的な軽視です。結局、〝運動の中軸を担うのは圧倒的に男性である〟という女性蔑視・女性差別の腐りきった思想が根幹にあり、男性中心の組織を防衛するために、告発に決起した女性に敵対し、憎悪をむき出しにして襲いかかったのです。
 被害女性の告発が無視・抹殺されようとすることに対し、自らもまた運動の中で女性差別を受けてきた仲間が決起して事態を告発し、全学連の仲間もこれに続いて立ち上がりました。これを契機に、女性差別を行った仲間たちに徹底的に反省を求め、運動全体で女性差別を克服すべく議論と転換を開始しています。
 女性解放闘争の前進において重大な契機は、一つに、男性活動家が女性差別の実態について具体的に認識すること、女性差別の現実を知り、学び、肉薄していくことです。もう一つは、自己解放の主体としての女性の決起、ひいては女性活動家を層として獲得することです。女性が最先頭で差別や性暴力をはねのけて闘う姿は、多くの女性に展望を与えます。それを実現できる組織・運動を意識的に建設しましょう!

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