「国難」あおる骨太方針 大増税と社会保障の解体が狙い
週刊『前進』04頁(3404号02面02)(2025/07/14)
「国難」あおる骨太方針
大増税と社会保障の解体が狙い
石破政権は6月13日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」2025を閣議決定した。
同方針はまず、トランプの関税戦争を〝国難〟と捉え、「米国による一連の関税措置及びその後の対抗措置の応酬は、これまで国際社会が培ってきた自由で開かれた貿易・投資体制をゆるがせにする」と述べている。そして「関税措置による国内産業・経済への影響を想定し……万全の措置を講ずる」と言う。トランプ関税への対応を当面の最優先課題に据えたのだ。
トランプ関税への対応策は戦争突入
トランプは7月7日、日本には8月1日から25%の関税を課すと通告した。これへの石破の対応策は、トランプの求めに応じ、中国侵略戦争の先頭に立つということ以外にない。骨太方針は「中国は、GDP(国内総生産)が世界第2位の経済大国となる中、貿易や先端技術の面において、米国との競合関係にある。他国の中国への依存を利用して、相手国に経済的な威圧を加える事例も発生している」とした上で、「同盟国・同志国等と連携し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、政策努力を重ねる」「政府は、いかなる状況下にあっても、国益を守り抜く」と表明した。戦争も辞さない意思をあらわにしたのだ。
戦争財源の確保を狙う「財政健全化」
北大西洋条約機構(NATO)は6月25日の首脳会議で、加盟国の防衛費を対GDP比5%に引き上げる方針を決定した。アメリカは日本にも防衛費をGDP比3~5%に増やすことを求めている。GDP比5%であれば防衛費は約31兆円に膨らむ。これほどの大軍拡は大増税と社会保障の解体を不可避にする。これに石破は身構えている。骨太方針は「安全保障環境の変化の中で、有事に備えた財政余力の確保の重要性は一層増している」として「財政健全化」を改めて掲げ、昨年の骨太方針に書き込まれた「経済・財政新生計画」を財政運営の基本にすると確認した。
岸田政権下で制定された昨年の骨太方針は、政府債務残高の対GDP比を安定的に低下させることを2030年度までの中期目標にした。そして、「全世代型社会保障」の名による社会保障の実質的な解体を打ち出した。また「経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を確保」するための税制改革を強調した。これは消費税を税制の根幹に据えるということだ。
昨年12月に経団連が出した「フューチャー・デザイン2040」も、これを受けて「財政健全化」を声高に唱え、「現役世代への負担が大きい社会保険料への依存は、成長と分配の好循環を阻害する」として「税・社会保障の一体改革」を叫んだ。戦争に備えた大増税と社会保障の解体が、国家と資本の基本方針だ。石破はこれを骨太方針で改めて押し出したのだ。
外国人排斥を狙い入管強化うち出す
だから石破は野党が唱える消費税減税をかたくなに拒む。だが、その石破も「1人当たり2万円の給付」を参院選の公約にせざるを得ない。また、防衛費が際限なく膨らんでいくにもかかわらず、その財源確保のための所得税増税について、石破は「引き続き検討する」としか言えない。戦時インフレによる生活苦への労働者人民の怒りはとてつもなく深いからだ。他方、国民民主党や日本維新の会、参政党などの極右は、社会保障の全面解体を狙って消費税減税を叫ぶ。社会保険料を減らすことで現役世代の手取りを増やすという彼らの主張は、骨太方針や経団連提言の意図を、石破とは別の形で推進するものでしかない。
中国脅威論と外国人排斥をあおるこうしたやからは、中国侵略戦争を遂行するための財源確保には一も二もなく賛成だ。だから彼らは、国家財政の破綻がいや応なしに突き付けられた瞬間に「国益」を振りかざして、人民に国家の犠牲になることを強いてくる。
7月7日、日本の30年物国債の利回りは3%を超えて急上昇した。トランプの関税引き上げを前にして、「国債暴落など起こらない」とは断言できない。こうした危機にあればあるほど、日帝は大増税を強行して中国侵略戦争に突き進むほかにない。
そうなれば参院選での「給付か減税か」などという与野党の「論争」はまったく意味を失う。にもかかわらず参院選の焦点がそこにあるかのように描かれる事態は、まさに欺瞞(ぎまん)だ。参院選は、与野党が競って排外主義をあおり立て、総翼賛体制を形成する過程として進んでいる。
骨太方針には「出入国在留関係審査・管理の強化・高度化」「不法就労対策及び被仮放免者の動静監視の強化、不法滞在者ゼロを理念に摘発・送還を行う」と書き込まれた。そして石破は7月8日、その司令塔となる政府組織の設置を打ち出した。絶対に許せない。
「賃上げ」を掲げて労組つぶしの攻撃
こうした戦時体制づくりの攻撃は急速な軍事経済化としても進んでいる。骨太方針は「賃上げを起点とした成長型経済」をうそぶくが、労働者の平均年収はピーク時の1997年と比べて30万円以上も下がったままだ。だが石破は、賃金低下の理由を資本による搾取の強化ではなく「労働生産性」の低下に求める。そこから出される政策は、生産性の低い企業をつぶし、戦略部門とされた軍事産業などに労働力を移動させるものに必ずなる。それは「労働移動の円滑化」=解雇自由化とセットにされ、労働組合をつぶす攻撃として貫徹される。
労働者人民の未来は自らの力で中国侵略戦争を阻止する闘いによって切り開かれる。参院選に人民の選択肢はない。排外主義扇動を怒りを込めて粉砕し、7~8月の反戦闘争に立とう。