台湾で住民動員し大演習 米陸軍元高官らが現地で「指導」

週刊『前進』04頁(3405号04面01)(2025/07/21)


台湾で住民動員し大演習
 米陸軍元高官らが現地で「指導」


 台湾で7月9~18日、大規模年次演習「漢光」が昼夜を通して行われた。中国を「境外敵対勢力」と見なす頼清徳(ライチントー)政権下で「実戦」を強烈に意識し、1984年の開始以来最長の演習となった。
 目立ったのは、米帝から購入した兵器が大量に投入されたことだ。7月4日に発足した高機動ロケット砲システム「ハイマース」の運用部隊が初めて参加し、ウクライナ戦争で注目された携帯型地対空ミサイル「スティンガー」も初めて公開。10日には配備が進む米国製最新鋭戦車「M1A2Tエイブラムス」の実弾射撃訓練も公開された。
 訓練は「ウクライナ情勢に学ぶ」とし、市街戦を含めた「縦深防御」=持久戦に重点をおいたほか、予備役2万人以上を動員した。
 「首都防衛訓練」が行われた最大都市・台北の公園には6台ものパトリオットミサイル発射機やレーダーなどが設置され、メトロなどの地下インフラによる兵力・物資輸送訓練も実施された。地下鉄の車内や駅構内、市街地などの生活空間全域が舞台とされたのだ。
 今回、徹底的に強調されたのが「軍民連携」だ。軍事演習と一体で、これまで市民を動員して行ってきた防空・避難訓練を統合した「強靭(きょうじん)化演習」を計22の市と県で実施。15日から18日にかけて離島を含めた全域でアラートが配信され、地域住民は一人残らず指示に従うことを義務付けられた。大手スーパーや量販店も初めて参加し、売り場などを避難所とする訓練が行われた。
 軍民一体で「〝国家〟防衛の決意を示す」(台湾軍当局者)の言葉通り、この演習自体が、中国への恐怖と敵意をあおり、「自分の〝国〟は自分で守れ」と人民を恫喝するキャンペーンとして進められたのだ。

米政府「台湾独立支持せず」を削除

 この演習は、米日帝国主義が中国侵略戦争に突入する中で、台湾の軍事拠点化をさらに加速させるためのものだ。実際に今回、元米太平洋陸軍司令官など退役軍人らで構成する「演習視察団」が訪台し「指導」にあたった。トランプ政権は今年2月に米台関係についての政府文書から「台湾独立を支持しない」との文言を削除。米国防総省ナンバー3のエルブリッジ・コルビー国防次官は3月に「台湾の国防費をGDP比10%程度に増額すべき」と述べ、国防長官へグセスが同月末に公開した暫定国家防衛戦略指針にも「中国による台湾進攻阻止」が最優先課題として盛り込まれた。
 これに呼応する形で頼清徳は「防衛費GDP比3%」を目標として定め、米国製の武器を多数購入することで米帝との協調姿勢をアピールしている。

広島・長崎の式典に台湾代表が参加

 また、3月に元自衛隊統合幕僚長の岩崎茂が台湾行政院(内閣に相当)の政務顧問に就任したことも判明した。米日帝が台湾軍や政府を「指揮」し、戦争政策を推進しているのだ。
 米日帝が中国への挑発を強める中、今年の8・6広島―8・9長崎の式典には戦後初めて台湾の代表が参加することが発表された。広島市が従来の招請方式を変更し、日本と外交ルートがある全ての国と地域に式典参列を求める「通知」を送る方式としたことで台湾代表を招き入れ、長崎市がこれに続いた形だ。
 しかし、台湾を侵略して半世紀も植民地化し、20万人以上を戦争に動員して命を奪った日帝、敗戦後の80年間まともな謝罪も賠償もせずに居直ってきた日帝が、中国に対する戦争挑発のためだけに、かつての宗主国として台湾代表の参加を「認める」という構図自体、絶対に許すことができない。そもそも、天皇を「奉迎」し、反戦反核集会を禁圧して開かれる式典自体が新たな戦争のためのものだ。台湾人民を米日帝の側に立たせ、中国侵略戦争の先兵にするおぞましい策動は粉砕あるのみだ。
 中国・台湾人民と連帯し、米日帝の中国侵略戦争を絶対に阻止しよう。
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