米トランプが「戦争省」を復活 中国侵略戦争に向かって国内階級闘争の圧殺狙う

週刊『前進』04頁(3413号02面02)(2025/09/15)


米トランプが「戦争省」を復活
 中国侵略戦争に向かって国内階級闘争の圧殺狙う

(写真 トランプによる移民摘発の激化と州兵派遣の脅しに対し、移民を先頭に数千人規模のデモが闘われた【9月6日 シカゴ】)

 9月5日、アメリカ大統領・トランプは、国防総省を「戦争省」に変更する大統領令に署名した。これは、単なる名称変更ではない。アメリカ帝国主義の統治形態を根本的に変える宣言であり、従来とは次元の違う巨大な戦争、中国侵略戦争のための国家総動員体制づくりに向けた扇動だ。
 米帝を基軸とした戦後世界体制が大崩壊する中で、トランプ政権は内外への戦争をエスカレートしているが、それは矛盾に満ちたものにならざるを得ない。
 トランプはウクライナ戦争の負担を欧州帝国主義に押し付け、中国への侵略戦争に集中しようとしているが、事態はトランプの思惑通りには進まず、中東でもパレスチナ人民の闘いを制圧できていない。
 さらに、米帝と国境を接するメキシコの階級闘争が米国内に大きな影響を与え続け、「アメリカの裏庭」といわれてきた中南米諸国のアメリカ離れも著しい。
 そのためトランプは国務長官に反キューバ強硬派のマルコ・ルビオを据えた。現在、メキシコとの国境に陸軍の大部隊と海兵隊、水陸両用艇、潜水艦を大量に配置し、いつでも上陸作戦を行える構えで恫喝している。さらに米帝はカリブ海にも派兵し、ベネズエラ侵攻を狙っている。侵攻・政権転覆策動の一環として米軍は9月2日、「ベネズエラからアメリカに向けて麻薬を密輸しようとしていた」として小さな船をミサイル攻撃して撃沈し、11人の船員を虐殺した。

現代自動車とLG職場を入管が襲撃

 トランプは9月4日、入管当局による史上最大の職場襲撃として、ジョージア州の韓国・現代自動車とLGエナジー・ソリューションの合弁会社による工場建設現場を急襲した。令状には2人の容疑しかなかったが、475人に後ろ手錠をかけて逮捕し拷問的処遇で悪名高い収容所に送った。
 移民税関捜査局(ICE)だけでなく、連邦捜査局(FBI)、麻薬取締局、アルコールたばこ火器爆発物取締局などの弾圧機関を総動員し、多数の軍事仕様の装甲車両やヘリコプターを非武装の工事現場に投入した。しかもトランプは、韓国大統領イジェミョンと会談して日米韓3カ国の対中国軍事協力の強化を確認させた直後に、あえて韓国の巨大企業グループに打撃を与えたのだ。
 トランプは、ワシントンDCにさまざまな州からの州兵部隊を投入すると同時に、BLM(ブラック・ライブズ・マター)運動により引き倒された南軍司令官の像を復活させている。軍や警察だけでなく、白人至上主義者、ネオナチを始めとする民間反革命を動員して社会全体を制圧しようとしているのだ。

州兵派遣を示唆しシカゴ制圧を狙う

 トランプは6月にアメリカ第2の都市ロサンゼルスに州兵と海兵隊を投入した。これに続いて9月6日には、アメリカ第3の都市で多くの戦闘的な労働運動の発祥の地であるシカゴへの州兵派遣を示唆し、ベトナム戦争を題材にした映画「地獄の黙示録」に登場する人物に扮(ふん)した自らの画像とともに「シカゴは、なぜ国防総省が戦争省と呼ばれるようになったか、じきに知ることになるであろう」というメッセージをSNSに投稿した。シカゴを「戦場」にするという許しがたい宣言だ。
 2025年版国家防衛戦略(NDS)の完成に先立って発表された概要によれば、戦略の優先事項は、①上空及び国境を含む米本土の防衛、②インド太平洋における中国の抑止、③全世界のパートナーに負担を共有させることだという。これは「対中抑止の後退」などではなく、米帝が「本土防衛」、すなわち国内の階級闘争圧殺を強行し、日帝を含めた同盟国を動員して中国侵略戦争に突進する意思を示すものだ。巨大国家・中国に対する侵略戦争は、米帝といえども現状の支配体制の延長線上ではできない。国内の労働者階級への内戦をしかけて階級闘争を徹底的に圧殺することと、中国侵略戦争は不可分一体なのである。
 しかし、米労働者階級は不屈に闘い抜いている。ワシントンやシカゴをはじめ全米で移民摘発の強化と州兵の派遣に反対する大デモが爆発し、大軍需企業ボーイングでも長期ストが続いている。米労働者階級とともに米日帝を打倒し、中国侵略戦争を阻止しよう。
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