韓国労組法改正 〝本当の社長出てこい〟 元請けに交渉義務、損賠請求禁止
週刊『前進』04頁(3413号03面02)(2025/09/15)
韓国労組法改正
〝本当の社長出てこい〟
元請けに交渉義務、損賠請求禁止

(写真 「大統領就任100日、非正規職差別解消に取り組め」。公共運輸労組の非正規職労働者が大統領室前で記者会見【9月8日 ソウル】)
韓国国会で8月24日、労働組合法2・3条改正案(改正労働組合法及び労働関係調整法)が可決した。全国民主労働組合総連盟(民主労総)をはじめとする労働組合の破壊のために資本が行ってきた損害賠償請求が禁止され、非正規職労組による元請け企業との交渉が可能となる。これは、ユンソンニョル政権打倒まで上り詰めた韓国労働者階級の闘いの成果だ。
「非正規職を撤廃しろ!」「本当の社長が出てこい!」——韓国の労働者が長年叫び続けてきたスローガンだ。
社内下請け労働者が資本の搾取・収奪に耐えかねて労働組合を結成すると、1カ月後に会社の門が閉ざされ、メール1通で解雇された。これは、韓国・亀尾(クミ)で闘う金属労組旭支会が2015年に直面した事態だ。解雇直後、元請けの旭硝子(現・AGC)本社に解雇撤回を求める直接交渉のため来日したが、旭硝子は交渉を拒絶し続けた。労組がストライキや職場占拠・籠城(ろうじょう)で闘うと資本は巨額の損害賠償を労組のみならず組合員一人一人に請求し、そのために労働者は命まで奪われてきたのだ。
この労組法改正案はユン政権下でも可決されたが、ユンソンニョルが大統領拒否権を発動し続けた。
幾多の犠牲の上にかちとった法改正
改正労組法、通称「黄色い封筒法」の主な改正内容は次の通りだ。①元請け使用者は、勤労契約書を結んでいなくても下請け労組と交渉しなくてはいけない(ただし、元請け使用者は、下請け労働者の労働条件を実質的かつ具体的に支配・決定する範囲で使用者となる)。②経営上の決定でも、勤労条件に影響を及ぼせば争議行為の対象となる。これには整理解雇や構造調整など使用者の経営上の決定が含まれる。③労働組合活動に対する損害賠償請求の禁止。使用者は、労組法に従い、団体交渉・争議行為、労組活動により損害を負う場合、労組・労働者に賠償を請求することができない。
「黄色い封筒法」の名の由来は、2009年にサンヨン自動車で工場を占拠し無期限ストを闘った組合と組合員が47億㌆(約5億円)の損害賠償請求に苦しむ中、ある市民が給料袋を模した黄色い封筒に、47億㌆の1万分の1にあたる4万7千㌆を入れて労組あてに送ったことだ。ここから広範な支援活動が始まった。
民主労総は、「今日の成果は崇高な犠牲による歴史的成果だ」と歓迎した上で、「依然として多くの労働者が法の外に置かれており、使用者の巧妙な回避と政府の不十分な対策が残っている」として、「『本当の社長との交渉を勝ち取る闘争本部』を立ち上げ、来年3月の改正法施行の瞬間から、その力を現場で生き生きと発揮させる。2026年を『非正規職・特殊雇用の権利を勝ち取る元年』とするため、交渉権保障・労働者性拡大へ総力闘争に立つ。法の条項ではなく、労働現場で権利を生きたものにする」と宣言した。
経済団体は「遺憾の意」を表明したが、法改正を見越して現代自動車が金属労組現代自動車非正規職支会と組合員に対する計3億6800万㌆の損害賠償請求訴訟を取り下げ、現代製鉄、ハンファオーシャン(旧・大宇造船海洋)などが続いている。
労働者踏みにじり抑圧する日帝資本
しかし、女性労働者が600日という世界最長の高空籠城を闘った韓国オプティカルハイテックをめぐっては、元請けである日本企業・日東電工が労働者の雇用継続に応じず、4億㌆を超える損害賠償請求を行っている。日東電工も2004年、旭硝子同様に土地の50年間無償貸与と各種税金の減免という特恵を受けてクミ工業団地に進出した。ここに今も「宗主国」であるかのように韓国労働者を抑圧する日本企業の許しがたい姿がある。イジェミョン政権はその日本帝国主義・石破政権におもねり、日米韓軍事同盟による中国侵略戦争の先兵となっている。民主労総をはじめとする韓国労働者人民と連帯し、中国侵略戦争絶対阻止へ闘おう。