防衛省「有識者会議」 「原潜」導入を提言 総力戦体制の構築狙う日帝
防衛省「有識者会議」
「原潜」導入を提言
総力戦体制の構築狙う日帝
防衛省が設置した「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」が9月19日、計11回の会議を踏まえた報告書を発表した。原子力潜水艦の建造や国営工廠(しょう)の導入、軍事費増額の「便益」を国民に「伝える努力」に言及することなどを柱とするその内容は、日本帝国主義が中国侵略戦争―世界戦争を構えるにあたって、総力戦体制を構築するための具体的施策を列挙したものにほかならない。
「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」は昨年2月に設置され、経団連名誉会長の榊原定征を座長とし、前統合幕僚長や日本最大の軍需企業である三菱重工の名誉顧問に加え、読売新聞社社長やNTT社長なども参加してきた。軍事・経済だけでなく情報・通信の領域にまでまたがる会議体であり、まさしく総力戦体制の構築を目指した日帝肝いりの「会議」である。
核ミサイル配備も見据えた新潜水艦
その報告書の「提言」の中で特に目を引くのは、「垂直発射システム(VLS)」を搭載し長射程ミサイルを発射できる潜水艦に「次世代の動力を導入」するとしたことだ。事実上、これは原子力潜水艦の開発を意味しており、きわめて重大なことである。
2022年の国家防衛戦略策定を受け、VLS搭載型潜水艦の開発が本格化した。これ自体、敵の潜水艦の撃破を主眼として魚雷を主力兵装としてきた自衛隊の潜水艦運用のあり方を、長射程ミサイルによる攻撃を可能とするものへ転換することであり、自衛隊の侵略軍隊化を象徴する重大事だった。
VLS搭載型潜水艦は大型ミサイルの搭載などの点から大型化が避けられず、動力が問題となる。実際にアメリカなどが保有するVLS搭載型潜水艦は圧倒的に原子力潜水艦だ。
そして、原潜の導入は長射程攻撃能力にとどまるものではない。報告書は、日米安保体制の強化を日本が主導することを求め、米核戦力による「拡大抑止」を強化すべしと主張する。6月に米日の元高官らが笹川平和財団を通じて発表した提言で「非核三原則の見直し」=「核共有」=日本への米核戦力の配備が具体的に検討されていることを考えれば、新開発される原潜の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に核弾頭を搭載するプランも構想されていると見るべきだ。
全社会の戦争動員で隊員不足「解消」
しかし、「原潜の導入を強く望む」元海自潜水艦隊司令官・高島辰彦ですら「最大の障害は人的資源の確保......原子力潜水艦への移行には賛成できない」と言わざるを得ない(「軍事研究」24年1月号)のが日帝・自衛隊の現状だ。報告書はその解決策として、「AIや無人機、『部外力』の活用」を主張する。
部外力の活用とは自衛隊の「外」、すなわち社会全体を実質的に自衛隊の「一部」とすることだ。原潜で言えば、有識者会議の座長である榊原が同時に関西電力会長でもあることに示されるように、原潜の運用に必要な「人的資源の確保」を原発の再稼働・増設と一体で達成することを日帝は考えているのである。
報告書には「研究者が安心して防衛分野の研究開発に従事できる環境の整備」や「(自衛官に)社会全体として、敬意の念を目に見える形で示す」などの記述も並ぶ。これらの文言が示すのは、大学をはじめ反戦活動・意識を取り締まり、自衛隊の活動に「文句」を言えないような環境をつくりだすことにほかならない。戦前の大日本帝国のような総力戦体制を構築することこそが、「自衛隊の人員不足」の解決策なのである。読売新聞の社長が会議メンバーであることは、この点で象徴的である。
さらに報告書は軍事関連企業の集約や国営工廠=軍事工場の導入、武器輸出の積極推進を主張し、さらなる軍事費の強化とその「安定財源の確保」(=増税)に言及するとともに、「強い防衛力を持つことが経済活動や経済主体を守り、国際的な影響力を高めることにもつながる」と帝国主義まる出しの「便益」を国民に説明せよと求める。
こんなものは粉砕あるのみだ。反戦闘争の爆発で、帝国主義こそ打倒しよう!
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「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」報告書のポイント
①長射程ミサイルを搭載する潜水艦への原子力導入を示唆
②AIや無人機、民間などの協力を活用した省人化とともに自衛隊の組織構成の見直しを求める
③日米安保体制の強化を日本が主導し、米核戦力による「拡大抑止」と「オーシャン」構想推進を主張
④軍事関連企業の集約と国営工廠の導入、武器輸出の積極推進を主張
⑤軍事費増額の「便益」を国民に伝える努力を求める
⑥GDP比2%にとどまらない軍事力の強化を示唆