スパイ防止法制定阻止を 「国家機密保護」掲げて反戦闘争の弾圧を狙う
週刊『前進』04頁(3423号02面03)(2025/11/24)
スパイ防止法制定阻止を
「国家機密保護」掲げて反戦闘争の弾圧を狙う
「台湾有事は日本の存立危機事態」と明言した高市は、中国への敵意をあおり戦時体制を一気につくろうとしている。その要の一つにスパイ防止法の制定がある。これは労働者人民の反戦闘争を弾圧する悪法だ。制定を絶対に阻止しよう。
高市は11月13日の参院予算委で、参政党の神谷宗幣の質問に答え、「スパイ防止法の制定は私自身が総裁選挙で訴えていたことでもある。外国勢力から日本を守る対応を検討したい」と答弁した。翌14日には自民党が国家情報局の設立とスパイ防止法の制定に向けて「インテリジェンス戦略本部」を立ち上げた。インテリジェンスとは諜報(ちょうほう)活動のことだ。国民民主党も同日、スパイ防止法の骨子案を明らかにした。10月1日には日本維新の会が「『インテリジェンス改革』及び『スパイ防止法』の策定に関する中間論点整理」をまとめている。
これらの動きの起点にあるのは、高市を会長とする自民党「治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会」が今年5月にまとめた「治安力の強化に関する提言」だ。それはスパイ防止法の制定を外国人排斥と一体で叫び立てた。自民と維新の連立合意にも、今年中にスパイ防止法の検討を開始し、早期に法を制定することが盛り込まれた。高市は今臨時国会に法案を提出し、あわよくば会期中に成立させることを狙っている。
戦争の不正義性を「機密」の名で隠す
高市と極右は、「外国のスパイ活動を取り締まる法律がないから我が国はスパイ天国だ」と叫ぶ。だが、守られるべき「国家機密」とはそもそも何か。それは日本帝国主義がアメリカ帝国主義とともに遂行する中国侵略戦争の具体的な作戦計画のことだ。現に行われた米日帝の軍事行動に関する情報も、それに当たる。米日帝は中国を締め上げて台湾に進攻せざるを得ないところに追い込み、「中国が先に台湾に侵攻した」という構図をつくって開戦に持ち込もうとたくらんでいる。中国への米日帝の挑発的軍事行動を「国家機密」に指定し、突然、中国が侵攻を始めたかのように言い立てて中国侵略に突き進みたいのだ。米日帝の側から先制的に攻撃を行いつつ、その事実を隠し通すことも十分にありうる。
不正義の侵略戦争を正当化するためになされる事実の隠蔽(いんぺい)が「国家機密」の核心だ。攻撃の最大の矛先は、帝国主義戦争の階級的性格を暴き、帝国主義打倒を呼びかけ、そのために闘う革命党に向けられる。ひいては、戦争に反対する人民のあらゆる行動が弾圧の対象になる。
人民に対する国家テロルの全面発動
高市は現在の内閣情報調査室を格上げして国家情報局を創設すると言う。維新の会の「中間論点整理」は、「文民秘密保全部門と軍事秘密保全部門の連携が不十分」「有事の戦争関連情報を収集分析する能力が不十分」だから国家情報局を創設するべきだと言う。同文書は、諜報活動には①諜報、②防諜、③非公然活動の3機能があるとする。諜報とは外国の機密を探知すること、防諜とは日本の機密を保持すること、非公然活動とは国の内外で世論操作や選挙介入を行うことを指す。国家情報局は国内階級戦争と国外侵略戦争を同時遂行するための総合諜報機関とされている。
当然にも、外国の秘密を探ることは、その国からすれば違法行為だ。戦争の引き金を引きかねない行為が、人民には秘匿されたまま行われるのだ。それは宣戦布告の権限を高市に白紙委任するに等しい。
スパイ防止法は国家のあり方を根本的に変える。同法制定を叫ぶ麗澤大学客員教授の江崎道朗は「正論」11月号で、スパイ活動等に対しては「非公開手続きや特別権限・多様な制裁を用いて『予防・抑止』を重視する」べきだと叫ぶ。現行の刑事裁判とは全く別の体系で、令状なしの捜索や拘束、国家テロルによる制裁を可能にする手段を設けろというのだ。それは憲法が禁じる「特別裁判所」の設置に他ならない。
支配の危機を示す国家主義の前面化
これが適用される最大の対象は労働者人民の反戦闘争だ。国家情報局による「非公然活動」も反戦闘争が標的だ。スパイ防止法がもたらすのは、国家による人民へのスパイ行為とでっち上げ弾圧の頻発だ。「国家機密」保持の法体系は、特定秘密保護法(2013年12月成立)、サイバーセキュリティー基本法(14年11月成立)、重要経済安保情報保護活用法(24年5月成立)などの形で進み、機密情報を扱う者への適性評価(セキュリティークリアランス)制度もつくられた。だが、公務員や軍需産業の労働者の一部を取り締まりの対象とするだけでは、戦時体制は完成しない。戦争に反対する者を「スパイ、売国奴」として迫害し血祭りに上げる包括的な弾圧法が必要なのだ。
中曽根康弘政権時の1985年に国会提出されたスパイ防止法案は、「外国に通報する目的で、又は不当な方法で国家秘密を探知・収集し、それを外国に知りうる状態にして、我が国の安全を害する危険を生じさせた者」への刑罰を、死刑か無期懲役に限定した。こうした過酷な弾圧に、高市は踏み込んできたのだ。だがそれは、革命の必然性を敵の側から示すものだ。
帝国主義は「国民の自由と人権は国家が存続して初めて守られる」と国家主義を叫び、人民を戦争に駆り立てる。だが戦時において自由や人権は空語になる。まして「国民」と認められない外国人は、真っ先に抹殺の対象にされる。しかも、「国益」とは帝国主義ブルジョアジー=支配階級の利益のことだ。侵略戦争をしなければ延命できない帝国主義こそ、労働者人民の手で打倒されるべきだ。
祖国防衛主義・国益主義を粉砕し、スパイ防止法制定を阻止しよう!