■特集 労働者の国際連帯で戦争阻止 戦後世界体制最後的崩壊の扉を開いたウクライナ情勢 Ⅱ 激化するウクライナの動乱 世界革命以外に解決はない

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月刊『国際労働運動』48頁(0454号03面02)(2014/06/01)


■特集 労働者の国際連帯で戦争阻止
 戦後世界体制最後的崩壊の扉を開いたウクライナ情勢 Ⅱ
 激化するウクライナの動乱
 世界革命以外に解決はない

A 今、何が起こっているか

 ウクライナの動乱が続いている。昨年11月下旬からの首都キエフでの大規模デモと独立広場占拠(「ユーロマイダン」)、同広場での治安部隊とデモ隊との激突、ヤヌコビッチ政権の崩壊と暫定政権の成立、覆面部隊のクリミア制圧とクリミアの住民投票・独立宣言、ロシアへのクリミア編入、帝国主義諸国の対ロシア制裁開始とNATOの追加配備・空中警戒・演習、ウクライナ東・南部の親ロシア派による政府庁舎占拠(ドネツク人民共和国などを宣言、自治権強化と連邦制導入あるいはロシアへの編入を要求)、暫定政権の軍・特殊部隊による親ロシア派強制排除=「反テロ作戦」、ロシア軍のウクライナ東部国境付近での大演習――。
 ウクライナの騒乱の内戦化、ウクライナをめぐる帝国主義間・大国間争闘戦の戦争的エスカレーションが進行している。米ロ激突―第3次世界大戦の危機が迫っている。これは東アジア情勢にも影響を及ぼし、戦後世界体制の最後的な崩壊へと時代を進めようとしている。
 スターリン主義崩壊後の諸国の問題、帝国主義世界経済の世界大恐慌への突入の問題、帝国主義間・大国間争闘戦の戦争的激化の問題――いずれの問題も世界プロレタリア革命による以外にいかなる解決もない。階級的労働運動と労働者国際連帯の力で大恐慌を世界革命に転化しよう。

B ウクライナ激動の経過と核心

⑴ 対EU交渉の決裂

 ウクライナ政変の直接のきっかけは、昨年11月21日、ヤヌコビッチ大統領が、それまで進めてきたEU加盟へ向けての「連合協定」(自由貿易協定などを含む)への署名をとりやめ、あらためてロシアとの関係強化を明らかにしたことだ。EUは、協定締結への条件として、従来にも増して構造改革と緊縮財政を要求し、さらに「政治犯の釈放」を加えた。これをヤヌコビッチが拒否したのだ。
 この「政治犯」とは、天然ガスパイプライン問題に絡み「国家への損失を与えた」罪で投獄されていたティモシェンコ元首相のことであり、オリガルヒ(寡占財閥)支配下のウクライナ政治において、反ヤヌコビッチ派にテコ入れして政治を操ろうというEU帝国主義の意図から出たものである。
 これに加えて、デフォルト危機が切迫しているウクライナにIMFが、これまで何回か行ってきた融資を出し渋っているのをみて、プーチンが150億㌦の融資を申し出たことにより、「EUかロシアか」という選択を突きつけられたヤヌコビッチが、「親ロシア」という選択をしたということである。
 オルガリヒ支配や歴代政権の腐敗に怒り、低賃金、失業などのなかで、EU加盟に望みを託していたウクライナ人民が、これをきっかけにヤヌコビッチ退陣とEU加盟を掲げ、首都キエフの独立広場(マイダン)に押し寄せた。連日10万人規模の人民が広場や政府庁舎を占拠し、いわゆる「ユーロマイダン」が始まったのだ。

⑵ 11月初旬のNATO大演習

 今回のウクライナ動乱のきっかけとなったもう一つの争闘戦的要因がある。それは、この直前、11月2日から9日まで、NATOが、全28加盟国に協力国を加えて、10年ぶりの大規模軍事演習を、バルト海、北海、ポーランドなどの広域で行ったことだ。「ステッドファスト・ジャズ2013」と称するこの演習は、6千人という比較的小規模ではあれ、陸海空軍にサイバー部隊や無人機が加わって行われた。「ボトニア」という架空の大国(これがロシアを指すことは明らかだ!)がエネルギー資源の争いからウクライナやバルト方面に侵攻し、これに対し、NATO軍が徹底的に反撃するというシナリオだ。ウクライナは、ヤヌコビッチ政権のもとNATO加盟路線をとりやめていたはずだったが、なんとこの軍事訓練に参加していたのである。
 ロシアのクリミア併合は、こうした米欧帝国主義の軍事的挑発に、まんまと乗せられたといえる。
 この二つの内外にわたる要素が、その後のウクライナ激動の展開を規定している。

⑶ ユーロマイダンの大爆発―キエフ独立広場を2カ月占拠

 昨年末11月21日から、今年2月22日のヤヌコビッチ解任に至るまでの足かけ4カ月にわたる「ユーロマイダン」は、当初は、「ヤヌコビッチ大統領辞任とEU加盟要求」にしぼられていたが、運動の進行のなかで、次第に、スターリン主義崩壊以来24年に及ぶ政権の腐敗・不正・汚職、極端な貧富の格差、オルガリヒの経済支配、言論・政治弾圧などへの積年の怒りの大爆発となり、デモ隊が日に日に膨れ上がり、また首都キエフから、ウクライナ全土に拡大していった。デモ参加者も、大学生などの中間層を始め、広範な大衆に及んだ。キエフでは、デモ隊が広場にテントを張り、食料を配布して抗議行動を長期継続した。
 ヤヌコビッチ政権は、11月30日に弾圧を開始し、運動の様相が変わり、12月初旬には、最大80万が首都の中心を埋め尽くした。デモ隊は、ヘルメットをかぶるなど自衛を始め、今年に入ると、1月17日に、デモ鎮圧法の制定に抗議する闘いとしてデモが一層激化し、治安部隊と衝突し、22日のデモ参加者に初の死者が出た。そして2月18、20日の両日で70人以上が死亡するなど緊張がピークに達した。
 こうした政治危機の打開を図るため、政権と野党は2月21日、大統領選の前倒しや、大統領権限の縮小を盛り込んだ合意文書に署名したが、翌22日、抗議デモの参加者が大統領府や省庁を占拠してキエフを掌握した。ヤヌコビッチ政権は閣僚が次々辞職、大統領が逃亡するなどして崩壊した。
 このように、「ユーロマイダン」は、その大衆的規模、激しさ、要求の切実さなどにおいて、2004年の「オレンジ革命」を上回る運動となった。「オレンジ革命」とは、同年11月の大統領選挙で当選した親ロシア派のヤヌコビッチに不正があったとして、再選挙となり、親欧米派のユーシェンコが、あらためて選ばれた際の大衆的運動の高揚を指す。【これは、2000年のユーゴスラビアのミロシェビッチ大統領を打倒した運動、03年のグルジア大統領選を不正だとして抗議しやり直させた運動に次いで3回目の政権打倒(交代)の運動だったが、いずれにも欧米政府や投資財団が抗議団体や指導者に資金提供し育成するなどの背景があり、「オレンジ革命」も、そのような性格を否定できない問題性を持っていた】
 今回の「ユーロマイダン」の(そして、現在のウクライナの階級情勢の)最大の問題は、かつてない大規模で、長期にわたる大衆運動を展開したにもかかわらず、この間の新自由主義攻撃を一身に受けてきた労働者が、個々の参加にとどまり、労働者階級として登場できていないこと、一個の独立した指導的政治勢力としての姿を、全社会に示すことができていないことにある。
 その結果、ヤヌコビッチ打倒の運動的軍事的ヘゲモニーをファシスト集団に握られ、政治的主導権を野党(ヤヌコビッチ反対派)に奪われてしまった、という決定的な事実である。

⑷ ファシストの登場と乗っ取り―スボボダと「右派セクター」

 「ユーロマイダン」に示されたウクライナ労働者人民の激しい怒りに恐怖したウクライナ支配階級、そして米欧帝国主義者は、ウクライナに根強く残存し、復活の機会をうかがってきたファシスト集団の抱え込み、育成に乗り出し、「ユーロマイダン」の乗っ取りを策動してきた。
 ファシスト集団の一つは、スボボダ、もう一つは「右派セクター」だ。
 スボボダ(自由)は、極右ウクライナ民族主義で、戦前ナチと協力したウクライナ民族主義者ステパーン・バンデーラを英雄視する。スボボダの創立は、1991年で、「ウクライナ社会国民(民族)党」を名乗ったが、あまりにナチと近いとフランスの極右、民族戦線(FN)のルペン党首(当時)に指摘され、「自由」と改称した。2010年1月には、ユーシェンコ大統領(当時)が、自分の「人気回復」をめざして、スボボダをウクライナ民族の英雄として顕彰したが、批判にさらされ、2011年1月、ヤヌコビッチ大統領のもとで裁判所によって取り消されたという歴史を持つ。
 昨年12月14日、ユーロマイダンの抗議行動が盛り上がるキエフに乗り込んだ米共和党上院議員で2008年の大統領候補ジョン・マケインが、スボボダ党首チャニボクと「祖国」ナンバー2で現暫定首相ヤツェニュクと会い彼らを激励した。
 スボボダは今年1月1日、ステパーン・バンデーラの生誕105周年を記念し、彼の肖像と鍵十字の旗を掲げてキエフで1万5千人のたいまつデモを組織した。第2次大戦時のドイツ軍のウクライナ人部隊だったときの軍服を着た者や「世界に冠たるウクライナ」「バンデーラよ帰ってきて秩序をもたらせ」と叫ぶ者がいた。またキエフ市庁舎の玄関内の正面にもバンデーラの肖像写真が掲げられている。
 もう一つは、極右ファシスト連合「右派セクター」だ。代表格のヤロシュは、ナチに協力して反ソ連パルチザン戦争を戦った解放軍の系譜を自認する。極右のスボボダを、リベラルで合法主義、議会主義だと批判し、「党派」としては、暫定政権には加わらず、反ロシア、反EUの極右民族主義を貫く。右派セクターは昨年来広場に登場し、広場で社会主義者や無政府主義者を見つけると襲いかかり、殴りつけ、たたきのめす右翼テロ集団として民衆から憎悪されている。
 キエフのユーロマイダンの拠点として使われていた労働組合会館に放火して使えなくしたのも右派セクターである。2月19日の広場での銃撃戦の合図となった狙撃の張本人は政府治安部隊ではなく右派セクターの方だった。
 旧政権打倒の最終局面における2月21日の政府と野党との停戦合意を破り、治安部隊との銃撃戦を展開したのが、この「右派セクター」だ。暫定政権は国家親衛隊や地域防衛大隊に右派セクターを雇い、東・南部で親ロシア派住民を襲撃させている。右派セクターが武装したまま合法化され治安組織に加わった。スボボダと右派セクターは、多数が内閣に入っている。これが暫定政権の性格を決定的に規定している。

⑸ 2月22日「政変」

 「ユーロマイダン」を政治的に乗っ取ったのは、6大財閥などウクライナの支配階級内部の権力闘争において、ファシスト武装組織を動員して親ロシア派を打倒した親欧米派である。2004年のオレンジ革命を率いた野党勢力(祖国、スボボダ〔自由〕)に右派セクターやウダル〔一撃〕が加わっている。米帝やEUに援助されたネオナチの役割は決定的である。この野党による政権奪取に対し、ヤヌコビッチを支えてきたロシアは「ファシストによるクーデター」だと非難、暫定政権の正当性、合法性を認めず、ヤヌコビッチを正当な大統領だと主張している。
 与党第1党「祖国」は財閥を基盤とするブルジョア政党だ。議会の最大勢力、下野した地域党も東南部の財閥を基盤にしている。

⑹ 新政権(暫定内閣)の内容・階級的性格と政策

暫定政権の主な顔ぶれ

 ウクライナ暫定政権はどのような政権か。「祖国」とネオナチ=スボボダ(選挙の得票率は、わずか2%)とが連立政権を組んでいる。「祖国」の党首ティモシェンコは、ソ連崩壊後の資本主義化政策の猛インフレを利用して荒稼ぎをしたうえに、天然ガスなどの利権をせしめて大富豪になり、政界に出て副首相、首相を務めた。政敵ヤヌコビッチと変わらない腐敗の極みにある支配階級であり、完全に労働者階級の敵であり、打倒対象である。トゥルチノフ大統領代行とヤツェニュク首相は、ともにティモシェンコの側近だ。
 スボボダは、副首相、国家安全保障理事会会長、教育大臣、環境大臣、農務大臣の5ポストを占めた。検事総長もスボボダだ。その他、スボボダ・シンパや「超ナショナリスト」、さらに「右派セクター」の代表ヤロシュが、内務安全保障理事会副会長として、入閣している。重要ポストの保安庁(SBU)長官ナリワイチェンコもスボボダだ。彼は米中央情報局(CIA)のエージェントとして10年間活動してきたとロシア当局が暴露している。
 暫定政権はEUに加盟することを国家目標に掲げている。またNATOと緊密に協力してロシアに備えようとしている(反ロシア)。ウクライナ民族主義の立場から当初、ロシア語を公用語の一つとするヤヌコビッチ政権の法律を廃止すると宣言した。後にこれを覆したが、それは東・南部のロシア系住民の分離独立運動が激化して収拾がつかなくなったからだ。
 5月25日に大統領選と同時の住民投票実施、自治権拡大、連邦制も実施する様子も示している。またIMFなどの金融支援を受ける条件として緊縮政策を開始した。6大財閥のなかから2人の総帥を東・南部の州知事に任命した。この二つの事実が示すように、資本主義化(「市場経済化」)路線、新自由主義路線を貫こうとしている。

軍・治安部隊にネオナチを加えて再編

 暫定政権は3月13日、正規軍の不足を補うために内務省の管轄下に「国家親衛隊」を創設した。16日には正規軍の予備役2万人を招集すると発表した。
 同17日には最高会議が正規軍と国家親衛隊で計4万人を増員する計画を承認した。
 国家親衛隊は民間から最大6万人の志願者を集め、月3万円の報酬を支払う。非合法に武装した自警団や極右民族主義集団「右派セクター」を政府内に統合し合法化する。右派セクターは西部の政府武器庫の機関銃を含む大量の武器を奪取して完全武装している。これが完全に合法化され公式権力となるのだ。
 4月初めのNATO外相理事会ではウクライナ軍の訓練・強化の方針が決定された。
 4月30日、暫定政権のトゥルチノフ大統領代行は志願制の「地域防衛大隊」を創設する意向を明らかにした。
 暫定政権は、役に立たない特殊治安部隊に代えて、「愛国者」を募り、地域防衛大隊とし、右派セクターはこれに参加する方針を明らかにしている。

⑺ 新政権がEUと連合協定

 新政権は3月21日、EUと「連合協定」を締結。これによって、ウクライナはEU加盟への道を歩み、EUとIMFによって要求される新自由主義政策を、内外政策、防衛政策にわたって強行していくことを決定した。「ユーロマイダン」に当初決起したウクライナ労働者階級人民に対する階級戦争の宣戦布告である。
 欧米日帝国主義は、ウクライナ政府のデフォルト(債務返済不履行)回避のため暫定政権に金融支援することを決めている。4月11日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議も「ウクライナ経済注視」を共同声明で採択、多額の対ウクライナ債権を抱えるロシアもウクライナ経済の再建と欧米日、IMFによる財政支援とそれによる債務返済を期待し、共同声明に賛成した。
 米欧日、IMFは3月、今後2年間で総額270億㌦の金融支援を行うことを決めた。IMF理事会は4月30日、2年間で総額170億㌦(約1兆7千億円)の金融支援枠を設けることを承認した。
 ウクライナはIMFの支援を受ける形で金融政策の見直しや金融システムの安定化、財政健全化などの改革を課される。
 暫定政府は、2013年に国内総生産(GDP)比4・5%だった財政赤字を2016年までに2・5%程度に引き下げ、経済を持続的な成長軌道に乗せる非現実的な戦略を描いている。そして①年金などの社会保障給付やエネルギー補助金など約43億㌦分の歳出削減、②企業への補助金削減③タバコ・酒税の引き上げ――などの緊縮策に踏み切る方針だ。
 ウクライナはかねてから財政と貿易の二重の赤字を抱え、外貨準備高は3月末時点で150億㌦(約1兆5千億円)まで減少した。これは輸入の2カ月分を下回る。通貨フリブナの対ドル相場は3カ月で34%下落した。国家債務は年初の時点でGDPの約40%に上り、今年だけで80億㌦を返済しなくてはならない。トゥルチノフ大統領代行はかねてから3年間で350億㌦の国際支援が必要だと訴えてきた。これに対し、IMFは直ちに32億㌦を出した。これはウクライナの財政健全化に回される。ロシアが天然ガス滞納金として支払いを求めている35億㌦にも満たない。ロシアのメドベージェフ首相はウクライナが天然ガス債務を返済しない場合、供給が止まる可能性があると警告している。ロシア国営ガスプロム社は4月から天然ガス価格を80%も引き上げた。前払い制への移行を提案している。
 内戦化した情勢のなかで緊縮財政による財政健全化、経済成長による貿易赤字縮小はきわめて困難だ。IMFの融資は2カ月ごとに改革などの履行状況を検証した上で実行される。融資が止まる可能性も高い。過去に2度停止したことがある。
 ウクライナが財政危機に陥った最大の理由は構造改革の先送りだ。これは労働者人民の生活を脅かすもので、強行できないできた。特にロシアから高い価格(国際相場より低い)で天然ガスを輸入し、国内燃料価格を政府補助金で低く抑える構図を続けてきた。年金基金も赤字で、歴代政権の金権体質、国家機構の腐敗と放漫支出が体質化してきた。政府は5月1日から国内ガス価格を50%引き上げた。財政健全化をめざす姿を見せている。
 米帝はたった10億㌦の債務保証しか提示していない。これはウクライナの財政が赤字になったとき10億㌦融資するという約束であり、いま融資するというわけではない。米帝自身が巨額の財政赤字で幾度も債務上限を引き上げてかろうじてのりきりを図っている現状であり、簡単にはウクライナを援助できない危機に陥っているのだ。
 米帝は世界の盟主としての役割を果たせなくなっている。米帝は21世紀に入ってイラク戦争とアフガニスタン戦争の二つの大戦争に巨額の戦費を負担、財政赤字を膨張させ疲弊してしまった。そこに世界大恐慌が起き、その激浪にたたきこまれている。もはや「世界の警察官」として行動することができなくなっている。こうした危機が、米帝をますます凶暴化させているのである。

⑻ クリミア独立宣言とロシア連邦への編入

 EU・NATO拡大やウクライナ政変に追い詰められたプーチンは、ウクライナのNATO加盟が不可避と判断し、クリミア半島奪回・黒海艦隊基地確保の先手を打った。
 セバストポリ軍港はロシアにとって唯一の不凍港であり、黒海艦隊が黒海に展開し地中海に出るための最重要基地である。NATO傘下のウクライナに押さえられるという悪夢は絶対的に避けなければならない。しかもクリミアとセバストポリはロシアの幾たびかの戦争の争点となった拠点だ。ウクライナ・クリミアを奪回する戦争の用意があることをプーチンは2008年に公然と語っていた。2月のウクライナ政変で慌てて思いついたことではない。
 クリミア半島のシンフェロポリ空港にロシア軍の兵員輸送機が降り立ったのは暫定政府が発足した2月27日だった。直ちに記章をはずした覆面特殊部隊(ロシアは「地元の自警団」と称する)が首都シンフェロポリや特別市セバストポリに進駐・展開、ウクライナ軍の施設や兵舎を包囲し武器を押収した。そのなかでロシア系住民たちがクリミア独立とロシア編入を求める大規模なデモを行い、議会や政府庁舎を占拠した。ロシア人議員が議会を制圧して前首相を解任し、アクショーノフを新首相に選び、3月16日の住民投票に持ち込んだ。
 アクショーノフは少数政党の目立たない議員だった。マフィアともいわれる正体不明の人物だ。3月16日、クリミアの6割を占めるロシア人が主要に投票に行き、96%がクリミア独立とロシア編入に賛成したと発表された。先住民族のクリミア・タタール人は黙らされ、多くが投票をボイコット、3千人がウクライナ本土に移住した。タタール人指導者の1人は何者かに拉致され、殺された。
 プーチンはこうしたクリミア編入を「クリミア住民の意思」と強弁して正当化した。
 ウクライナ軍はまったく無力だった。覆面部隊に包囲されると、兵舎に閉じ込もったまま、無抵抗を通した。暫定政権の指令でもあるが、現実にそうする以外になかった。暫定政権が新たに任命した海軍司令官はロシアの側に寝返った。クリミア駐留のウクライナ軍1万8800人のうち4300人(23%)がウクライナ軍での業務継続を希望し、77%がロシア軍に投降した(毎日新聞3・16付)。
 ウクライナ陸軍は公式には4万1千人(13万人ともいわれる)だが、実戦配備できている部隊は6千人しかいなかった。ほとんどの戦車や装甲車がさびついて動かなかった。兵士たちは訓練もされていなかった。
 ソ連崩壊時、ウクライナ軍は70万人の兵力を有していた。それが10分の1まで劣化し弱体化した。ソ連崩壊後の独立国家ウクライナの資本主義化の失敗、経済崩壊と窮乏化、財政危機の深刻化の結果である。歴代政権の腐敗がもたらしたものでもある。他方、ロシアの兵力はソ連崩壊直後290万人で、現在100万人を維持している。ロシアはウクライナ軍の惨状を熟知して行動している。

経済制裁で帝国主義間の争闘と対立

 覆面部隊のクリミア制圧、住民投票実施決定などをロシアの介入とみなした米日帝国主義は3月6日、対ロシア経済制裁発動を決めた。経済制裁は戦争の第一歩だ。経済制裁は報復合戦を招き、互いを疲弊させると同時に対立と緊張を激化させ、戦争への道を促進する。
 米帝やEUは3月20日に、クリミアの住民投票を「違憲」として認めず、「武力を背景に領土を奪った」としてロシアを激しく非難し、ロシアの政府関係者や銀行への制裁を発動した。日本を含む主要7カ国(G7)は3月24日、緊急会議を開き、ロシアで6月に開催が予定されていた主要国(G8)首脳会議へのロシアの参加停止を決めた。
 ロシアはもはや影響力を持たないG8よりも中国やインド、ブラジルなどを加えたG20の方が重要だとして意に介さない姿勢を示した。
 その一方で制裁をめぐり米、EU、日本の足並みはまったくそろわない。制裁に積極的な米帝に比して明らかに独仏英伊日は消極的であり、言葉だけでクリミア併合を非難し、なんら実効性のない制裁でお茶を濁そうとしている。ドイツを始め欧州諸国はロシアとの経済的な結びつきが強いため、事を荒立てたくないのだ。
 欧州諸国のロシア産天然ガスへの依存度は3割に達する。100%の国もある。最大の輸入国はドイツだ。ドイツはウクライナを迂回しバルト海の海底を通るノルドストリームというパイプラインでロシアと直接つながっている。ノルドストリームの子会社の役員を務めるシュレーダー元首相とドイツの東方外交を推進したシュミット元首相は公然とロシアのクリミア併合を擁護した。ロシアで活動するドイツ企業は6千もある。フランスはミストラル級ヘリ空母(強襲揚陸艦)2隻をロシアに輸出する。1隻あたり10億㌦前後だ。1隻目は昨年10月、ウラジオストクに配属された。これらをご破算にするわけにはいかない。欧州の対ロ貿易額は米国の10倍である。大恐慌のなかでロシア市場を失うことは致命的だ。イギリスもロシアの財閥企業や大富豪のシティーでの金融取引や高級住宅購入をあてにしている。
 独仏は米帝主導のNATO配備強化・空中警戒に賛成しつつ、欧州安保協力機構(OSCE)の監視団のウクライナ派遣を対抗的に提案し、実施している。メルケル独首相は毎日プーチンとドイツ語で電話協議している。
 日帝は、天然ガスなどエネルギー資源の輸入などでロシアへの依存度を急速に増しつつあり、また「北方領土」返還を追求しているため、プーチンとの「友好」関係を壊したくない。制裁発動の「ふり」と言うべきほどの軽微な制裁にとどまった。反米極右の性格を強める安倍政権は米中韓との首脳会談を内閣発足以来実現できず(ようやく4月24日に日米首脳会談を行ったが、日米争闘戦の激化を示した)、友好関係にある主要国首脳はロシアのプーチンだけだ。ウクライナ問題で口先で米欧と協調することで関係修復に躍起となっている。
 大恐慌下の争闘戦激化で帝国主義諸国の国際協調行動はますます不可能になっている。それぞれが独自の利害と生き残りをかけて争い、戦争に向かっているのだ。

C ロシアにとってのウクライナ

 ウクライナなど旧ソ連地域を勢力圏とみなすロシアは、欧米帝国主義がウクライナへの影響を強めることを強く警戒してきた。ロシアのプーチン大統領は旧ソ連圏を再統合し、「ユーラシア経済同盟」を樹立することをも目標に掲げており、そこへのウクライナの加盟を図ってきた。このためヤヌコビッチを支援しウクライナのEU加盟やNATO加盟を阻止しようとしてきた。そのヤヌコビッチが打倒されたことは痛手であり、失地回復を狙った第一の行動がクリミア併合だったのである。
 プーチンは旧ソ連地域をロシアの勢力圏として固めようとしてきた。その具体的な構想が「ユーラシア経済同盟」である。その道筋としてウクライナをやアルメニアを含む「CIS自由貿易協定」が2011年に締結された。さらに「ユーラシア関税同盟」の形成が進み、それを基礎にして2015年1月1日には「ユーラシア経済同盟」が発足する予定だ。これにはロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス、タジキスタンが加わる予定だ。「親ロシア」のヤヌコビッチ政権のもとでウクライナも候補だったが、同政権は打倒されてしまった。ウクライナ抜きのユーラシア経済同盟など考えられない。プーチンは、頑固な親欧米派ウクライナ暫定政権のEU―NATO加盟を力ずくで阻止する以外になくなった。
 クリミアを併合した3月18日、上下両院議員が一堂に会したクレムリンでの演説でプーチンは、ウクライナとロシアは単なる隣人ではなく、「一つのナロード(国民、人民)」であり、「キエフはロシアの母なる都市」であり、「古代のルーシはわれわれの共通の祖先である」と語った。
 しかし、プーチンがいくらウクライナとロシアの一体性を強調しても、クリミアを力で編入したロシアにウクライナは反発し、ますます欧米を志向するようになっている。ウクライナを含まなければ「ユーラシア関税同盟」も「ユーラシア経済同盟」も意味がない。クリミア併合はプーチンの支持率を8割にまで引き上げたが、これは「成功の幻惑」でしかない。ウクライナ抜きではゼロ成長に落ち込んでいるロシアの経済はもちこたえられない。何よりも天然ガスパイプラインを通して得られるウクライナや欧州諸国からの収入が安定しないのは痛手だ。編入したクリミアの経営もロシアの大きな負担になる。
 ロシアからの資本の海外逃避が急増している。1~3月で637億㌦にも上り、昨年の700億㌦に迫っている。

D ウクライナの経済構造―大財閥が支配

猛インフレと財閥形成

 1991年にソ連邦から独立したウクライナは92年から資本主義化政策を開始した。それは新自由主義的な「ショック療法」のやり方をとった。
 まずロシアと同じようにウクライナでも価格自由化が強行された。補助金による政府財政赤字を減らし、企業に自立を促すためだが、インフレ率はCIS諸国中で最高だった。92年1527%、93年4735%、94年891%、95年377%だった。二桁になったのは96年からである。
 94年に始まった民営化=私有化は国有財産(企業、工場)をごく一部の者にただ同然で売り飛ばす過程だった。汚職と不正が蔓延し、労働者は貧困と失業にたたき込まれ、その一方でオリガルヒと大富豪がウクライナ経済を牛耳り、その果実をすべて吸い取るようになった。
 ウクライナのGDPは99年まで下がり続け、91年の半分になり、2013年になっても75%程度に低迷している。やみ経済が広範に存在するため真のGDPははるかに大きい。

東部の鉄鋼業を中心に財閥形成

 ウクライナの最大の産業部門はガス・石油であるが、ウクライナ国内でガス・石油が産出されるわけではない。主にロシアから輸入した資源を加工・輸送・販売して利益を上げている。次に鉄鋼、電力、運輸、農業・食品、小売、通信、機械、石炭、卸売が続く。
 外貨の稼ぎ頭は鉄鋼である。ウクライナ東部で採れる鉄鉱石と石炭を利用してドネツク州、ドニプロペトロウシク州、ザポロージャ州、ルガンスク州で鉄鋼が生産されている。2010年、ウクライナの鉄鋼輸出は世界第3位、生産高は第8位だった。同年、ウクライナの商品輸出の32%を鉄鋼・鉄鋼製品が占めた。ただし技術的には遅れており、主要国で廃棄された平炉による粗鋼生産の比率が26%も占める。品質、付加価値が低い半製品を大量にスポット輸出することで鉄鋼業が成り立ってきたが、世界大恐慌で世界の鉄鋼が過剰となり、一時は多くの高炉が止まった。
 この東部はウクライナの鉱工業の最大の中心地である。旧ソ連においてもそうだった。親ロシア勢力が分離運動を強めている地域であり、同時に6大財閥(オリガルヒ)の基盤でもある。彼らは鉄鋼・金属、電力、石炭、機械・鉄道車両・自動車製造などの部門を所有している。株価時価総額順に並べると、①システム・キャピタル・マネジメント(SCM)=アフメトフ総帥(鉄鋼王)、②プリバトグループ=コロモイシスキー総帥、③ファイナンス&クレジット=ジェバホ総帥、④ドンバス鉱業連合(ISD)=タルタ総帥、⑤エネルギー・スタンダード=フリホリシン総帥、⑥イーストワン(インテルパイプ)=ピンチューク総帥となる。
 オリガルヒはユーロマイダンの最中には与野党どちらにも資金を提供してあいまいな立場をとっていた。暫定政権のもとでタルタがドネツク州知事に、コロモイシスキーがドニプロペトロウシク州知事に任命された。アフメトフも暫定政府を支えるために政治的に動いている。
 鉄鋼資本は国際的再編が進み、ウクライナ1位のクリビーロフが世界1位のアルセロール・ミッタルの傘下に入った以外は、ロシア資本とウクライナ資本とに二分された。ウクライナ東・南部はロシアにとって死活的な重要地域だ。

エネルギー資源はロシアからの輸入に依存

 ウクライナはエネルギー資源を自給できず、大部分をロシアからの輸入に依存している。ソ連崩壊後、ロシアから天然ガス・石油の輸入代金の支払いをドルで求められて苦しんできた。
 ウクライナのエネルギー(電力)自給率は51%だ。その内訳は石炭と一定量の天然ガス、原発(ただし核燃料のほとんどはロシアからの輸入)。残りの49%の大半はロシアからの輸入である。エネルギー安全保障のためにロシアへの依存を減らそうとしても、パイプラインによるガス供給を前提とした産業構造・設備を変えることは容易ではない。逆にロシアに譲歩すれば、国際市場価格より相対的に低い価格でエネルギー資源が買え、欧州への輸出トランジット料収入を得られる。ウクライナはパイプライン依存をやめられない。

パイプラインの地政学

 近年までロシアの欧州向け天然ガス輸出の80%がウクライナ経由だったが、最近では66%だ。ウクライナ国内で消費されるガスのうちロシアからの輸入は58%である。ロシア国営ガスプロムによるウクライナへの輸出とウクライナを通過するパイプライン輸送をめぐってたびたび「天然ガス戦争」が起きている。
 2006年1月と09年1月、ともにユーシェンコ政権時代のことだ。10年に成立したヤヌコビッチ政権は、09年にウクライナにとって不利な条件で契約を結んだとしてティモシェンコ元首相を、「国家的損失を与えた罪」で起訴、投獄した。釈放されたのは、この2月である。背後に、天然ガス輸入をめぐる利権がからんでいるうえに、親欧米ユーシェンコ政権を屈服させるという政治的動機があった。そもそもウクライナはソ連時代からパイプラインから抜き取りをしていた。
 ロシアは、ヤヌコビッチ政権には天然ガス債務と黒海艦隊基地賃貸料とを相殺し、25年間の基地使用権延長を獲得することで折り合った(2042年まで)。それでもヤヌコビッチは天然ガス価格が高すぎると言ってきた。ヤヌコビッチがプーチンからの天然ガス価格3割引きと150億㌦の金融支援の申し出を断れるはずがない。欧州やIMFは天然ガス価格を割り引いてくれないし、金融(財政)支援を受けようにも厳しい構造改革を課してくる。ウクライナが経済・財政面でロシア寄りに傾くのは必然だ。
 ロシアはウクライナに信頼が置けなくなったのでベラルーシにシフトした。ベラルーシのパイプライン運営権を買収したり、新規パイプラインを建設したりした(ガスプロムはウクライナからもパイプラインを買収しようとしている)。ロシアはトランジット国を介さずに海底にパイプラインを敷設して欧州市場に直接輸出する戦略を強めている。北ではバルト海の底を通りドイツにつながるノルドストリームを2011年に完成させ、稼働中だ。南では黒海の底を通り、ブルガリアにつながるサウスストリームはEUとの関係で不調に陥っている。ウクライナにとってロシア、欧州と協調してウクライナ経由パイプライン輸送を維持する道は捨てきれない。

貿易と外国直接投資

 ウクライナの輸出入の相手国としてはロシアが圧倒的な1位で、中国、ドイツが続くが、地域的にはロシア、ロシア以外のCIS、欧州、アジアの順だ。
 品目別輸出額は、鉄鋼・金属がトップで33・7%、鉱物資源(石炭、鉄鉱石)が13・1%、機械・設備が11%と続く。穀物・同製品などさまざまな食料品を合計すれば19・3%で第2位だ。
 外国直接投資のトップ国はキプロスだ。ウクライナ、ロシアの資本がタックスヘイブンのキプロスに資金を逃避させ、そこから(あるいはオランダ経由で)ウクライナに投資をしている。ウクライナに還流しない逃避資金の方が圧倒的に多い。ウクライナ労働者は搾取されっぱなしだ。次はドイツだ。EU加盟で外国直接投資が経済成長を促進した中東欧に比べて断然少ない。ドイツはウクライナのEU加盟による市場開放、投資機会の増大を狙っている。

穀物大国化の幻想

 ウクライナは2000年以降、穀物大国として台頭してきた。大規模農家の増加、高品質の種子利用や肥料投入量の拡大、税制優遇によるトウモロコシの生産が急増している。13年の生産量は3090万㌧で過去10年の5倍、輸出量は1850万㌧、世界シェアは16%で米国、ブラジルに次ぐ世界3位だ。小麦でも生産量は2228万㌧、輸出量は1000万㌧で世界第6位だ。輸出先はエジプトを始めとする中東・アフリカ諸国である。しかしウクライナは種子、肥料、農薬、農業機械など生産資材の大部分を輸入に依存しているため、通貨安による生産コストの上昇で春の作付けが抑制されると予測される。相対的に生産コストの高いトウモロコシから、小麦、ひまわり種などへの作り替えも考えられる。
 近年のウクライナのトウモロコシや小麦の生産量、輸出量の急速な伸びは、米帝の巨大アグリビジネスから資材・資金供給を受けて生産する農業経営が持ち込まれた結果だと考えられる。「穀物大国ウクライナ」で潤っているのは米帝アグリビジネスだけだ。
 ウクライナの経済はソ連崩壊後の資本主義化政策と新自由主義のもとで新興財閥と外国資本に支配されている。東・南部鉱工業地帯を中心にロシアとの結びつきも強い。特に軍需産業におけるロシアとの相互依存関係は、密接だ。パイプラインでも緊密に結びつけられている。そのもとで労働者は旧ソ連諸国と比べても極端な低賃金に苦しめられ、農民も資本の搾取・収奪の対象とされている。

E 新段階―何をなすべきか―第3次世界大戦の危機をプロレタリア世界革命へ

 ウクライナの親ロシア派の動きは、クリミアで終わらず、西部よりロシア系住民の比率の高い東部の諸都市では、4月6日のドネツク州庁舎占拠を皮切りに、親ロシア派住民や武装集団が政府庁舎や警察署を次々と実力占拠している。親ロシア派勢力はドネツク、ハリコフ、ルガンスク、オデッサ各人民共和国を宣言し、自治権拡大、連邦制導入、ロシアへの編入などを求めている。ウクライナでは州知事も市長も中央政府の任命制だ。暫定政権は6大財閥総帥のうち2人を州知事に任命した。
 米、ロシア、EU、暫定政権は4月17日、外相級4者協議を開き、不法な武装集団の武装解除や庁舎明け渡しを盛り込んだジュネーブ声明に合意した。合意をどう解釈するかで開きが大きく、その後も親ロシア派の庁舎占拠は拡大しているし、右派セクターも武装解除を拒否している。
 これに対して暫定政権のウクライナ軍とその特殊部隊は4月15日、22日、5月2日と3回にわたる「対テロ作戦」を行い、親ロシア派強制排除に乗り出した。しかし特殊治安部隊による2回は失敗。3回目は陸軍空挺部隊による大規模作戦を実施した。親ロシア派勢力の最強拠点スラビャンスク市では3日、ウクライナ軍攻撃ヘリコプター数機が地上を攻撃し、5人の住民が殺された。親ロシア派勢力は携帯ミサイルでヘリ2機を撃墜、ウクライナ兵2人が死んだ。ウクライナ軍はヘリコプターの空からの攻撃で支援を受けた装甲車部隊がスラビャンスクの検問所を攻撃し、全検問所を制圧、市を包囲したが、肝心の市の中心部には入れていない。
 オデッサ州の首都オデッサでは2日、ウクライナ統一派1500人と親ロシア・分離派数百人とが正面衝突した。双方の銃撃で7人が死亡した。その後、ウクライナ統一派が親ロシア派が避難した労働組合会館に火炎瓶で放火し、閉じ込められた親ロシア派活動家ら39人が焼死あるいは一酸化炭素中毒死した。暫定政府派には右派セクターが多数加わり、襲撃の先頭に立った。ウクライナの警察部隊は終始傍観していたうえに親ロシア派150人を逮捕した(4日、半数が釈放)。
 親ロシア派勢力と暫定政権・ウクライナ統一派との対立・衝突はほとんど内戦と化している。親ロシア系住民の死亡を理由にロシア軍が「ロシア人保護」の名で国境を越えて進軍する危機が高まっている。すでに2月末からロシア軍の4万人の大部隊がウクライナ東部国境で演習を繰り返しつつ備えている。プーチンは4月17日、ジュネーブ声明に関して「ロシア上院は(3月1日)私に、ウクライナ領でロシアの軍事力を使用することを授権した。私がその権限を使用しなくて済むことを望む」と述べた。戦争の用意があるということだ。プーチンは3月4日の会見で「クリミア編入は考えていない」と述べたが、2週間後にそれを覆した。
 ロシア軍のウクライナ侵攻に対しウクライナ軍とNATO軍が反撃に出れば第3次世界大戦に発展する可能性もある。
 職場に基礎を置いた階級的労働運動を復活させ、あらゆる抑圧・分断をのりこえて、労働者階級が国際連帯をめざす独自の政治勢力として登場することこそが、帝国主義・大国間の世界大戦を阻止することができる。まさに、反帝・反スターリン主義プロレタリア世界革命が、ウクライナを始め、ロシア、そして全ヨーロッパ、全世界の労働者階級人民の未来を切り開くことができる。