News & Review 日本 日米安保新ガイドライン絶対阻止を(下) 集団的自衛権行使を軸とする安保法制粉砕

月刊『国際労働運動』48頁(0461号02面02)(2015/02/01)


News & Review 日本
 日米安保新ガイドライン絶対阻止を(下)
 集団的自衛権行使を軸とする安保法制粉砕

(写真 衆院選最終日の鈴木たつお候補の大演説会【2014年12月13日 荻窪駅北口】)


  目次
Ⅰ 78年ガイドライン
Ⅱ 97年新ガイドライン (以上前々号)、周辺事態法
Ⅲ イラク・中東侵略戦争、PKO派兵法
Ⅳ 対テロ特措法、イラク特措法、武力攻撃事態法(以上前号)、関連法
Ⅴ 米軍再編
Ⅵ 集団的自衛権行使・閣議決定、ガイドライン再改定、再改定に伴う安保関連法(以上今号)

 日帝・安倍は、2015年冒頭の「新年談話」で8月15日(敗戦の日)に「戦後70年談話」を発表すると宣言した。それは7・1閣議決定を上回る戦争宣言になることは必至だ。即座に米政府が反応し、村山談話や河野談話を継承することを求めた。中国や韓国の人民が激しく反応しているのは当然である。
 2015年前半は、「戦後70年談話」を軸に階級情勢が動いていくことは必至だ。
 こうした中で、1月7日の産経新聞は、日帝・政府の安全保障法制に関する基本方針が6日に判明したと報道した。それは政府と自民党の非公式協議で政府側が提示したもので、集団的自衛権の行使が必要となる事態を「存立事態」とし、武力攻撃事態対処法や自衛隊法を改正する案を軸に検討するというものだ。自衛隊の海外派兵恒久法に関しては、消極的な公明党に配慮して明示しなかったという。
 さらに基本方針としては、(1)武力攻撃に至らない「グレーゾーン」事態、(2)国際平和協力活動(PKO)など、(3)集団的自衛権の行使――の三つの事態に対処するため、主に自衛隊法や周辺事態法など9本の法律について改廃の必要性を検討するとした。
 政府・自民党は、7・1閣議決定に基づく安保法制の反人民性におびえ、4月統一地方選挙前に出すことによる人民の総反乱を恐れ、選挙後の5月に国会に提出するという。
 昨年末の衆院選における鈴木たつお候補の闘いは、安倍の戦争・改憲、原発、消費税の攻撃に対する労働者階級人民の怒りと結びついた。1~3月、国鉄決戦を基軸に闘い、4月統一地方選に勝利し、5、6月安保国会を圧倒的に闘い抜こう。東アジア、朝鮮半島、中国への戦争に走るための集団的自衛権行使の安保法制を粉砕しよう。日米安保ガイドライン改定を阻止しよう。
 前回は武力攻撃事態法案のところまでであった。今回はその続きと、米軍再編、7・1閣議決定弾劾を軸に述べていきたい。
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▼「武力攻撃の主体は国だけではない」
 さらにすでに引用した5月16日の政府見解の続きを見よう。
 「武力攻撃とは、我が国に対する外部からの組織的、計画的な武力の行使をいうものである。また、武力攻撃を加える主体としては、国だけではなく、国に準じる者もあり、攻撃の規模の大小、期間の長短や攻撃が行われる地域、攻撃の事態等も様々であり、武力攻撃の態様は一概に言えない」としている。
 これでは「武力攻撃事態」はとてつもなく広い範囲を含むものとなる。小規模なゲリラであっても、日本の船舶への攻撃であっても、すべて外国からの武力攻撃だとして、武力攻撃事態の発生とすることができる。
 周辺事態のところで、日米帝の北朝鮮への侵略戦争は周辺事態から日本有事へと直ちに発展していくことを述べた。その日本有事の認定・防衛出動の発動を最大限前倒しするところに武力攻撃事態法の核心がある。
 また武力攻撃事態法では、自治体・民間の戦争協力が周辺事態法よりはるかに強化された。
 有事関連3法案を確認していく。

 有事関連3法案

▼武力攻撃事態法案
▼安全保障会議設置法改悪案
 改悪案は、従来の一般的な「安保方針」や「国防計画」の審議機関ではなく、武力攻撃事態に対処する具体的な戦争方針・軍事方針を審議し策定する機関、首相を議長とし最高指導者とする戦争指導会議へ転換するものであった。
▼自衛隊法改悪案
 これは武力攻撃事態における自衛隊の権限拡大法案である。自衛隊行動円滑化法案ともいえる。
 以上の3法は03年6月6日に成立した。

 有事関連7法と3協定

 有事関連3法に続いて、国民保護法など有事関連7法・3協定は04年に国会に提出された。
▼日米物品役務相互提供協定(ACSA)改定
 ACSAは、周辺事態法によって自衛隊の後方支援において武器・弾薬を除く物品・役務を提供できるものとされた。武力攻撃事態においては武器・弾薬を含めて提供可能とされた。
▼米軍行動円滑化法
 武力攻撃事態において米軍は、日本を最前線基地として、物資などの補給基地として円滑に利用できることを政府、自衛隊、民間が保証することを定めた。米軍が必要な土地も提供するとしている。
▼自衛隊法改悪
 武力攻撃事態において、自衛隊基地に滞在する米軍などに対する自衛隊の物品・役務の提供を拡大できるいくつかのケースを規定している。
▼交通・通信利用法案
 武力攻撃事態において、重要な位置を持つ交通・通信手段について、強権をもって米軍の軍事的優先的利用を可能とするもの。
▼外国軍用品等海上輸送規制法案
 武力攻撃事態において、領海や周辺公海で防衛出動した海上自衛隊は停船検査と回航措置をとることができるとするもの。
▼国民保護法
 国民保護法第1条の「目的」は、「武力攻撃事態等における国民保護のための措置を的確かつ迅速に実施すること」だという。つまり武力攻撃事態、有事(戦時)における国や地方公共団体、国民の責務や協力を規定するものだ。日帝による戦争行為の一環として「国民の保護のための措置」の名を借りて、首相が全権限を握り、事実上の戒厳令を敷き、住民の避難、避難住民の救援、武力攻撃災害への対処、国民生活の安定、武力攻撃災害の復旧に関する住民への強制措置を行うことだ。
▼有事法制反対闘争
 02年「陸・海・空・港湾労組20団体」など3団体が呼びかけた5・24明治公園集会は4万人、「STOP!有事法制 6・16全国大集会」は全国から6万人を超える労働者人民が会場の代々木公園B地区を埋め尽くし、空前の熱気の中でかちとられた。
 闘いの中で、有事関連7法・1協定2条約案は04年6月16日に成立させられた。

Ⅴ 米軍再編・日米安保の実戦化

 米軍再編の位置づけ

 米軍再編は、米国防諮問委員会が1997年に発表した「国防の転換 21世紀の国家安全保障」において出された。この報告書は、RMA(軍事革命)に対応しきれていないとし、米軍の運用・編制・装備のすべてを改革する必要性を提唱していた。
 これを受けて01年9月に発表された「4年ごとの防衛計画見直し」(QDR2001)において、従来の「脅威ベースのアプローチ」から「能力ベースのアプローチ」への転換が発表された。
 これまでの米ソの対峙・対決構造のもとでワルシャワ条約機構などへの対決を目的としていたのに対し、世界各地で噴出する米帝の利害を損なう地域紛争に対して、いかなる時間・場所においても対処できる(能力を持つ)軍組織が目標とされた。
 QDR2001の発表直前に発生した9・11反米ゲリラ戦争の爆発により、米軍は「能力ベースのアプローチ」に基づいた米軍再編へ転換した。
 米軍再編は、戦争の民営化・外注化と一体で進められた。民間軍事会社が大量に生まれた。戦争それ自身をビジネス化するものだった。アフガニスタン、イラク侵略戦争は新自由主義の侵略戦争であった。
【軍事革命=RMA】アメリカで開発された。情報通信技術(インターネット)と高性能電子計算機、通信衛星、GPSなどのハイテク機器を軍事に適用した。世界各地の戦争に対して、必要に応じて適切な兵力を適切な場所に迅速に投入し、兵力の規模をスリム化しながらも実際の戦闘力を従来よりも圧倒的に向上出来るとした。米軍は、この戦略をイラクとアフガニスタン侵略戦争で実行したが人民の武装闘争、労働組合のストライキなどを始めとするあらゆる抵抗闘争により敗北した。

 「日米同盟・未来のための変革と再編」(中間報告)

 05年10月29日に「日米同盟・未来のための変革と再編」(中間報告)が公表された。
 アフガニスタン、イラク侵略戦争で泥沼に陥り、没落を深める米帝が、北朝鮮とともに中国との対峙・対決政策に踏み切り、日米同盟の圧倒的な強化に狙いを定めた。対中国を睨んで大規模な米軍再編を行い、さらに「同盟の変革」として日米安保同盟を強化するものであった。
 日帝は、日米矛盾を抱えながらも当面は日米安保同盟の強化の下で独自の軍事力の強化を図る方針からこれを積極的に受け入れた。米軍はこの変革を、日米両軍兵士が「一緒に訓練し、一緒に出兵し、生活を共にすることが可能となる」と位置づけた。
 97年ガイドラインの大改悪であり実戦化するものであった。
▼日米共通の戦略目標
 04年1月から「日米の戦略目標」をめぐる日米政府間の論議が始まり、05年2月19日に日米安保協議委員会で「日米共通の戦略目標」が公表された。
 日米共通の戦略目標(敵国)は、北朝鮮を挙げた上で、中国を名指しした。
 日米共通の戦略目標を踏まえて3点を確認している。
 1 日米共同作戦の範囲を「極東」をはるかに超えてアジア・太平洋―世界へ拡大すること
 2 朝鮮半島と台湾海峡(中国)有事を想定した戦争体制の構築
 3 日米同盟再編の目的を「新たな脅威や多様な事態に対応する同盟の能力の向上」としている
▼日米の「役割・任務・能力」
▽二つの重点分野
 日米安保の重点分野として日米安保の内容としてこれまであったAに新たにBを加えた。
 A「日本の防衛および周辺事態への対応(新たな脅威や多様な事態への対応を含む)」
 これまでの日米安保条約(日本有事と極東における平和と安全)に基づくもの。朝鮮半島有事、台湾海峡有事を日本有事と直結・一体化させた戦争体制づくりを指している。
 B「国際平和協力活動への参加をはじめとした国際的な安全保障環境の改善のための取り組み」
 これは、国連PKO活動、アフガニスタン、イラク侵略戦争への自衛隊の参戦、「不安定の弧」とされる地域全体での日米共同作戦、日米安保の世界大的な拡大を指している。「日米同盟のグローバルな性質」と称して日米安保の枠外に拡大しているものだ。
▽さらに、日米両司令部が共通の画面を見ながら米軍と自衛隊を一体的に指揮すること、司令部から日米一体化を進めること。
▽「秘密情報を保護するために必要な追加措置をとる」。これが13年秋の秘密保護法案の攻撃であった。
▽自衛隊三軍の統合運用への移行を踏まえた米日両軍の司令部の一体化。
 「自衛隊および米軍による施設の共同利用」で、元海兵隊司令官グレグソンは「そうすることによって一緒に訓練し、一緒に出兵し、生活を共にすることが可能となる」と言っている。
▼大規模な在日米軍の再編とそれと一体的に対応した自衛隊の再編が行われた。
▽キャンプ・座間に米陸軍第1軍団司令部が移駐
▽横田基地に日米統合司令部。空自航空総隊司令部が横田基地に移転
▽陸(座間)・海(横須賀)・空(横田)で日米司令部が一体化
▽BMD戦略(ミサイル防衛体制)を徹底的に強化
▽日本全土の基地化
 南西重視に転換。朝鮮半島と中国大陸に戦略配置を変えた。
・岩国に空母艦載機を厚木基地から移駐
・佐世保を米空母の準母港に
・横須賀に原子力空母「ジョージ・ワシントン」を配備
▽沖縄
 普天間基地移設先として辺野古新基地建設。巨大な要塞基地で、米軍基地の圧倒的な強化・拡大である。米軍沖縄基地が日米安保の最大の要であることが鮮明になった。
 沖縄の米軍基地の「整理・縮小」や米海兵隊の一部グアム移転は、沖縄の基地負担を何ら軽減するものではなかった。

 〈その後の主要な動向〉

・06年12月 教育基本法改悪(第1次安倍内閣)
・08年5月 宇宙基本法に軍事分野の道を開く
・09年9月 海賊対策として自衛隊をソマリア沖に派兵
・11年3月11日 東日本大震災 福島原発事故、自衛隊と米軍が「有事体制」を発動、米軍は「トモダチ作戦」
  5月 初の自衛隊海外基地をジブチに開設
・12年1月 自衛隊、南スーダンに国連PKO派兵開始
  6月 原子力基本法に軍事目的を入れる
 2011年3月11日、戦後史を揺るがす東日本大震災と福島第一原発事故が起きた。福島第一原発事故は核事故であり、設置された原爆が爆発したのに等しい大災害であった。放出された膨大な放射能によって多くの原発事故関連の死者を生み出し、福島県民のこれまでの生活が一瞬にして奪われる大惨事だった。
 米軍は、この大災害への救援作戦を「トモダチ」作戦と名づけて自衛隊とともに有事作戦として展開した。
 アーミテージは(米元国務副長官)は、「アーミテージ・ナイ レポート」(12年8月)で、「集団的自衛の禁止は、この同盟にとって障害物である。3・11は、われわれの両軍が、必要な場合にはその能力を最大化できることを示した。われわれの軍隊が平和時、緊張、危機、そして戦争という安全保障の全領域で完全に協力して対応する」べきと言っている。
 さらに「平和維持活動」について、「日本が、必要な場合には武力をもって他国の平和維持要員だけではなくて市民をも防護するために、国際的な平和維持軍にあり得る法的許容範囲を拡大することを勧告する」と言っている。
 そして「日本は一流国になるのか、二流国に甘んじるのか」と安倍に突きつけた。
 安倍の7・1閣議決定にはこのすべてが含まれている。
 一方でアーミテージは、「政策の転換(集団的自衛権の行使踏み切り)には、司令部の統一や、より軍事的に攻撃的な日本、あるいは日本の平和憲法の変更を求めるべきではない」と改憲を狙う極右・反米の安倍に釘を刺している。
 米帝は、日帝が改憲し、核武装に進むことを恐れている。米帝に牙を向けることは断じて許さないとしているのだ。

Ⅵ 集団的自衛権行使7・1閣議決定、ガイドライン再改定、それに伴う安保関連法

 安倍内閣の成立

 2012年末に安倍政権が誕生した。「戦後レジームからの脱却」を掲げる安倍政権は、これまでの自民党政権の延長ではない。米帝を基軸とする戦後世界体制の中で、日米安保を基本政策としてきた日帝が、公然と反米極右・独自核武装路線で走り出した。根底にアジア・太平洋をめぐる日米両帝国主義の根本的な矛盾対立がある。
 安倍は、靖国参拝(13年12月)をしたが、その背景には「東京裁判史観反対」運動がある。これは「戦後レジーム」を否定するものであり、戦勝国・米帝主導でつくられた日米関係を否定するものである。
 さらに福島原発事故以来、安倍は「安全保障のために原発が必要」と称して、核武装路線を推進している。原発再稼働はそのためのものだ。
 敗戦帝国主義・日帝は、戦後70年を経て、世界大恐慌の絶望的危機の中で、その乗り切りをかけてアジアにおける「戦争放火者」として登場しようとしている。
 これと同じ動きはドイツでも始まっている。14年冒頭にドイツのガウク大統領が「これまでのドイツは過去の犯罪の影に隠れて、世界的な責任を十分に果たせなかった」「アメリカが対応できる問題は限られている」「ドイツは世界の列強として責任を果たす」と言った。
 そしてドイツは、現在のシリア、イラク侵略戦争で、クルド人組織への武器供与に踏み切っている。
 こうした世界戦争情勢が世界革命を引き寄せている。
 安倍内閣成立後の主な動きをまとめた。
〈13年〉
・改憲宣言
・11月27日 国家安全保障会議設置法成立
・12月14日 秘密保護法成立
・12月17日 「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」(中期防)を閣議決定
〈14年〉
・4月1日 武器輸出3原則撤廃、武器装備移転3原則に
・7月1日 集団的自衛権行使を閣議決定
・7月1日 安倍政権、辺野古新基地建設工事を着工
・10月3日 新ガイドライン中間報告

 7・1安倍の閣議決定を徹底弾劾する

 昨年7月1日、日帝・安倍は、集団的自衛権行使を閣議で決定した。この日に沖縄の辺野古新基地建設工事が着工されたことも重大である。いずれも戦争への決定的な踏み切りである。
 安倍は、「戦争放棄の国」から「戦争する国」への歴史的大転換を強行しようとしている。ここには日帝・安倍の絶望的な危機がある。新自由主義の大破綻である大恐慌と7・1の安倍に対する労働者階級人民の怒りは天地に充満し、根本的に安倍を打倒したのだ。衆院選は安倍の延命のための絶望的な賭けであった。そして選挙結果は、労働者階級人民の怒りの深さをさらに示すものになった。
 東京8区・杉並区で立候補した鈴木たつお候補は「労働者が主人公になる新しい社会をつくろう」「新しい労働者の政党をつくろう」と訴え、広範な労働者人民の自己解放的な決起と熱い支持が寄せられた。
 革共同は、2015年『前進』新年号の政治局アピールで、「大恐慌・戦争を世界革命へ」と訴えている。世界大恐慌が深化し、世界経済は「恐慌の中の恐慌」に突入している。新自由主義の破綻が、資本主義の最後的な没落・打倒へ通じる世界戦争に向かっている。この世界戦争を世界革命で必ず阻止しなければならないと提起している。
 こうした東アジアの危機に対して、世界の帝国主義の中で一番焦り、戦争に向かっているのが日帝である。
 安倍は、アメリカ頼みではなく、日本が自力で戦争をやるのだと絶望的な野望をもって集団的自衛権行使の7・1閣議決定に踏み込んだ。
 没落する米帝は、世界支配力が衰退する中でも共和党が「戦争で世界を制圧する」と主張し凶暴化している。
 すでにウクライナ、中東のシリア・イラク、東アジアの3正面で戦争が現実化している。その最大の危機が東アジアである。日帝・安倍は、朝鮮半島で、中国を相手に米帝とともに実際に戦争をやろうとしているのだ。
 「国際安全保障環境の悪化による脅威にさらされている」と言いながら、絶望的な侵略戦争に突入する日帝の宣言が7・1閣議決定である。全世界に戦争の脅威をふりまくのが日帝であるということだ。

▼7・1閣議決定
 「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」
 前文
 1 武力攻撃に至らない侵害への対処
 2 国際社会の平和と安定への一層の貢献
 3 憲法第9条の下で許容される自衛の措置
 4 今後の国内法整備の進め方

 7・1閣議決定は、前文と4項目で構成される。
 まず「表題」で言う「国」とは、新自由主義の下で1%のブルジョアジーが99%の労働者階級人民を支配する日本国のことである。1%のブルジョアジーが富と権力を行使している国だ。人民が打倒するものであっても守るべき「国」ではない。
 前文に「我が国は複雑かつ重大な国家安全保障上の課題に直面している」との文言がある。「我が国」とは「我がブルジョアジーが支配する国」という意味である。ブルジョアジーは労働者人民に愛国心を吹き込むために意図的にこの言葉を使っている。
 次に「政府の最も重要な責務は、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うするとともに、国民の命を守ることである」とある。
 政府とはブルジョアジーの階級利害を貫徹するための政治委員会である。「我が国の平和と安全」「その存立」とはあくまでも「ブルジョアジーの私有財産の平和と安全」のことであって、それは常に日本と世界の労働者階級人民への階級支配に基づく抑圧と犠牲の上に成り立つものである。こんな敵階級の「政府」に「国民の命」などを「守る責務」を与えては絶対にならない。

▼「自衛の措置」を口実に武力行使=戦争を解禁
 最大の核心は「3 憲法第9条の下で許容される自衛の措置」の部分である。
 その内容は、憲法9条を完全に骨抜きにし、憲法9条は自衛の措置を採ることを禁じていないと強弁している。
 そもそも、憲法9条はその第1項で「国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は......永久にこれを放棄する」とし、続く第2項で戦力不保持と交戦権否認を明記している。
 これはどう読んでも、武力行使が可能だと「解釈」する余地など一切ない絶対的規定であり、個別的自衛権や集団的自衛権を問わず一切の戦争と武力行使を放棄する以外にないものだ。
 これは帝国主義国の憲法としては本来あり得ない条項だが、日本とアジアで爆発した戦後革命の闘いは、米日帝をそこまで追いつめたのだ。これが日本の戦後史を規定した階級的原点である。
 これを安倍は、「憲法9条はその文言からすると、国際関係における『武力の行使』を一切禁じているかのように見えるが」と憲法9条を踏まえているかのように言う。
 だが直後に「憲法前文で確認している『国民の平和生存権』や憲法第13条が「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は国政の上で最大の尊重を必要と定めている趣旨を踏まえて考えると、憲法9条が、我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置(戦争)を採ることを禁じているとは到底解されない」とどんでん返しを食らわす。
 それも「国民の平和生存権」「生命、自由、幸福追求権」などと日帝が今まさに人民から奪い、踏みにじっていることを憲法9条骨抜きの材料に使っている。まったく許しがたいことだ。
 福島原発事故によって膨大な放射能を拡散させ、福島県民を始め全国、ひいては全世界の人民の「平和生存権」「生命、自由、幸福追求権」を奪い去った日帝・安倍の言うことを誰が信じるのか。原発事故では安倍ら支配階級どもの「原発安全神話」の大うそが完全にばれてしまい、政府の言うことなど誰も信じていない。
 そして新自由主義の破綻の極致であるアベノミクスは、資本家階級のために税金を湯水のごとく注ぎ込み、法人税を減税し、人民からは8%の消費税を強奪する。そして防衛費を増額し、軍事産業を優遇している。労働者を非正規職化し、失業に追いやり、雇用を不安定化し、賃金を大幅に下げ、労働時間を増やし、結婚も子どもを産むこともできない、生きられないようにしている。
 憲法9条の核心は日本国家のありとあらゆる戦争の禁止である。国家の「自衛の措置」を認めたら、それは果てしない侵略戦争と世界戦争への道を開くことになるというのが、第2次世界大戦の教訓である。憲法9条は、戦後革命の嵐の中で、その敗北の代償としてかちとられたものだ。労働者人民の誰もがもうあのような戦争は絶対に繰り返してはならないと思い闘ったのだ。それを安倍がひっくり返そうとしてもそんなことは絶対に許さない。
 7・1閣議決定は、戦争反対の憲法9条を抹殺する大反革命だ。「国の存立を全うするためには自衛の措置が採れる」ことを強制しようとするものだ。
 次に「今後他国に対して発生する武力攻撃であったとしても、その目的、規模、態様等によっては、我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得る」と、他国への武力攻撃の発生に大飛躍させている。
 そして「(1)我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、(2)これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他の適当な手段がないときに、(3)必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されると考えるべきであると判断するに至った」と集団的自衛権の行使を言っている。
【(1)(2)(3)は筆者が挿入。これが武力行使の新3要件と言われる】

 つまり「憲法9条のもとでも自衛の措置」を採れるなら、それが、他国が武力攻撃を受けて、「国の存立」が脅かされるなら、「自衛の措置」=武力行使をすることができると一挙に集団的自衛権の行使までエスカレートさせている。
 そしてその「自衛の措置」を採れる範囲を無限に拡大しているのだ。
 例えば、日本から遠くペルシャ湾に機雷が敷設された場合でも、「国の存立」を盾に「自衛の措置」が採れる、武力行使ができるとしようとしている。
 衆院選挙で鈴木候補が「戦前の日本の戦争は自衛のためと称してやった」と訴えた。「自衛戦争」が朝鮮半島から中国大陸へ、アジアへの侵略戦争となり、ついにはアメリカとの太平洋戦争、世界戦争になっていった。「自衛戦争」など絶対に認めてはならない。
 安倍は、「中国が攻めてくる」「北朝鮮が攻めてくる」「国を守る」と言いつつ、東アジアで、朝鮮半島、中国への戦争をやろうとしている。
 それは、大恐慌の深化、帝国主義がもはや生き延びる道がない時代に、最後の絶望的な手段として、新自由主義的帝国主義は世界戦争に突進していく。
 その時、ブルジョアジーの「国を守れ」の呼びかけは、日本とアジアと世界の労働者人民の命と生活の一切を奪い取る呼びかけなのだ。そんなものに屈してはならない。労働者階級は、いまや帝国主義を打倒するチャンスを迎えたのだ。ウソと欺瞞と腐敗に満ちた帝国主義の政府を打倒し、労働者が主人公の社会を建設する時が来たのだ。
 国とは、ブルジョアジーの支配する国家である。労働者階級は、全世界の99%である。労働者が階級的に団結して、資本と闘い、政府と闘い、国際的に連帯して団結すれば戦争を阻止できる。
 階級的労働運動と国際連帯が勝利の道だ。この中で日韓米の3カ国の労働者連帯が大きく前進している。ここに世界革命の展望がある。

▼「1、武力攻撃に至らない侵害への対処」について
 この項の最大の狙いは、「グレーゾーン」を持ち込んだことだ。
 有事の前に、「純然たる平時でも有事でもない事態」(グレーゾーン)を設定して、自衛隊を治安出動や海上自衛隊を海上警備行動に出動させ、ここから戦争に突入していくことを狙っている。そして国内を「切れ間なく」続く戦時体制に入れていくとしているのだ。
 日帝の狙いは、あれこれの脅威を叫びたて、全国の隅々に警察と自衛隊の監視網をつくり、外への侵略戦争のためのガチガチの治安弾圧国家をつくりあげることだ。秘密保護法、そして盗聴法の改悪・司法取引・匿名証言などの「新捜査手法」の導入、さらに4度目の「共謀罪」と一体の攻撃である。
 さらに、「自衛隊と米軍部隊が連携して行う平素からの各種活動に際して、米軍部隊に対して武力攻撃に至らない侵害が生じた場合」に、米軍武器の防護のために自衛隊が武器を使用することができるように法整備するという。
 具体的に想定しているのは米軍艦船である。平時においても米軍艦船になんらかの侵害が起きた場合に自衛隊が防護(武器使用)ができるようにしたいということだ。
 しかし、発端はどうあれ自衛隊の武器使用は武力行使そのものになる。「武器使用」という言葉で、「武力行使をしてはならない」という憲法9条の規定をすり抜けて武力行使に走ろうとするものだ。自衛隊艦船の「武器使用」は艦砲射撃までも認められているというのだ。「切れ目なく」有事=戦争に発展することを予め想定しているのだ。

▼「2、国際社会の平和と安定への一層の貢献」
 次に「国際社会の平和と安定への貢献」である。
 これは、日米同盟に対して「グローバルな性質」という規定をして日米同盟を強盗同盟として全世界に拡大しようとするものだ。
 具体的には国連PKO活動、「海賊」対策、アフガニスタン支援特措法、イラク支援特措法などの活動を指している。
(A)後方支援と「武力行使の一体化」についての変更
 政府は、周辺事態法を国会に提出した時には、米軍の戦闘の「後方支援」は「武力行使にはあたらない」と言い張った。これはとんでもない屁理屈だ。戦争は後方支援なくしてできない、むしろ後方支援の力が戦争の勝敗を左右するのだ。
 こうして日帝は、「武力行使と一体化」しない「後方支援」というものをつくりだした。
 そしてイラク特措法でのイラク派兵における自衛隊の他国軍への後方支援は、「武力行使と一体化」しないように「非戦闘地域」に限定されていた。
 7・1閣議決定は、これまでのこうした地域を特定するやり方ではなく、支援対象とする他国軍隊が「現に戦闘行為を行っている現場」では、支援活動は実施しないと変更するという。
 つまり自衛隊の後方支援は、「現に戦闘が行われている場所」以外なら、あらかじめ場所を限定することなくできると自衛隊の活動範囲を大きく広げた。
 自衛隊は、イラク南部のサマワに宿営していた。ここは「非戦闘地域」ということになっていた。ところがイラク武装組織の迫撃弾の攻撃を受け、隊員は一歩も外に出られなくなった。現実のサマワは戦場だったのだ。この決定は自衛隊を「積極的に」戦争現場に送り込むことになる。自衛隊員に「お国のための」流血を強制しようとするものだ。
(B)国際的な平和協力活動に伴う武器使用
 政府は、初の海外派兵である92年国連PKOでのカンボジア派兵の時に、自衛隊を武装する際の屁理屈を考えた。
 そこで政府は、「自己保存のための自然権的権利」として「隊員個人の生命・身体を守るための必要最小限の武器使用は、憲法の禁じる武力行使にはあたらない」という統一見解を出した。
 日帝は、これを「隊員の自己保存型の武器使用」と称して、「武力行使」と「武器使用」を分けて自衛隊の海外派兵における武器使用を合法化してきた。
 7・1閣議決定は、「隊員の自己保存型の武器使用」を超えて、これまで自衛隊はできないとされてきた「駆けつけ警護」や「任務遂行のための武器使用」「邦人救出のための武器使用」についてできるとした。
 これについての条件について「閣議決定」はいろいろ言っているが、要するに上記3件の場合に自衛隊の武器使用を認めるということであり、武器使用は武力の行使であり、それは戦争そのものである。
 イラク戦争は米帝の侵略戦争である。過酷な戦場を経験した米兵の多くは帰還してもPTSD(外傷後ストレス障害)やTBI(外傷性脳損傷)になり就職することができない状態に陥った。
 サマワから帰還した自衛隊員の多くにも米兵と似たような症状が発生し、自殺者は28人とされている。
 「駆けつけ警護」「任務遂行」「邦人救出」のための武器使用は、自衛隊を帝国主義軍隊として積極的に人民虐殺の軍隊にする大攻撃である。

 97ガイドライン見直しを決めた13年日米安保協議委

 2013年10月3日、日米安保協議委員会(SCC=2+2)は、「より力強い同盟とより大きな責任の共有に向けて」を共同発表した。
 そこで日米帝は、97年ガイドラインの見直しを決め、防衛協力小委員会(SDC)にこの作業を2014年末までに完了させるよう指示した。このガイドラインの見直しは、日本政府の側からの働きかけで始まった。対北朝鮮、中国戦争を意識し、集団的自衛権の行使を盛り込むことを前提にしたものだった。そして、安倍は7・1閣議決定の暴挙に走った。
 安倍の計画では、昨年秋の臨時国会に安保関連法案を提出し、年末にガイドライン改定をする予定であった。ところが、今年4月統一地方選を控えた公明党との協議が難航し、統一地方選後に安保法制の国会提出、その頃のガイドライン改定とスケジュール変更を余儀なくされた。

 「日米防衛協力の指針見直し 中間報告」

 2014年10月3日、「日米防衛協力の指針見直し中間報告」が発表された。
 すでに述べた理由から「中間報告」には、7・1閣議決定がほとんど反映されていない。内容も多くは項目にとどまっている。すなわちガイドライン改定阻止は、安保法制粉砕闘争と一体である。
 2015年、世界情勢は一変している。世界大恐慌が戦争を一挙に現実のものとしている。ウクライナ、シリア、イラク、そして東アジア。その途端に全帝国主義が一斉に戦争に向かって走り出している。
 これを阻止するのは国鉄決戦である。階級的労働運動である。国際連帯である。世界の労働組合の階級的団結である。2010年代中期階級決戦、ロシア革命100年を日本革命、世界革命の年としよう。
 5~6月安保国会闘争を巨万の規模で闘い、安保法制を粉砕しよう。日米新ガイドラインを阻止しよう。
(終わり)
(宇和島洋)