■News & Review 韓国 民主労総が4月先制的ゼネストに始動 朴槿恵政権の〝労働者殺し〟に反撃へ

月刊『国際労働運動』48頁(0462号02面01)(2015/03/01)


■News & Review 韓国
 民主労総が4月先制的ゼネストに始動
 朴槿恵政権の〝労働者殺し〟に反撃へ

(写真 双龍自動車解雇労働者が中心となった第2次五体投地行進【1月12日】)

(写真 LGユープラスとSKブロードバンドの非正規職労働者2人が15㍍の高さの広告板に高空籠城した【2月6日】)

ハンサンギュン執行部初の中執会議の論議

 民主労総が4月先制的ゼネストを決意している。民主労総2015年第1次中央執行委員会が1月29日午後2時、開催された。民主労総最初の組合員直選制で選出されたハンサンギュン執行部の初の中執会議であり2015年民主労総ゼネスト計画を論議するこの会議で徹底的な討論が進められた。まず産別および各地域本部代表者たちは「もっと易しい解雇、もっと低い賃金、もっと多くの非正規職」など労働市場構造改悪と年金改悪、公共機関第2段階の偽正常化対策など、朴槿恵(パククネ)政権の労働者殺しが露骨化する非常な情勢にゼネスト闘争が不可避であることを確認して共有した。
 また、財閥の庇護と庶民への重税に対する国民的抵抗が深まり、その結果として朴槿恵支持率が20%台に下落するなど国民的憤激が高まっていることを受け、民主労総が自信を持って、政権3年目でぐらつく朴槿恵政権に対するゼネスト闘争を展開し、全人民を結集した一大闘争に発展させていこうと決意した。
 このような情勢認識の下に各産別連盟と地域本部代表は、政治の日程に追われる守勢的な闘争ではなく、攻勢的な対政府闘争として、4月先制ゼネストに突入することを満場一致で決議した。
 ハンサンギュン委員長は中執の満場一致での4月ゼネスト決議を始まりに、2月5日民主労総中央委と2月12日定期代議員大会をとおして、より具体的で力のある全組合員ゼネスト決意をつくりあげようと訴えた。
 朴槿恵政権と全面対決し、労働者民衆の生存権を守るための新たな労働者大闘争の砲門が開けられた。
 このような中、昨年12月末から1月末にかけて「労働と世界」や「チャムセサン」が新執行部のハンサンギュン委員長、イヨンジュ事務総長、チェジョンジン首席副本部長にそれぞれインタビューして記事を発表している。その中でイヨンジュ事務総長は「チャムセサン」のインタビューの中で、今後の民主労総の闘いについて、正規職と非正規職が一つの力になって共に闘わなければならないと、重要で鮮明な方向を打ち出している。以下、「チャムセサン」のインタビューの一部を紹介する。

イヨンジュ事務総長のインタビュー

〈現在までのゼネスト準備状況について聞きたい〉
 幾つかの産別、地域本部長に会って意見を打診している。民主労総が掲げた議題が当面の懸案と関連性がなくても共に闘うと決意する方もいる。現場ではこの2年間、社会がこんな状況にまで来たのに何で俺はなんにもしなかったのか、なぜ各個戦で闘わなければならないのかという苦悩が多い。分散した闘争ではなく中央で単一の声を出す闘争を願っている。まだゼネストがうまくいくかという質問が多いが、そんな質問をする時間はとうに過ぎた。ゼネストは昨年の選挙をとおした組合員の命令だ。これ以上延ばす必要はない。ゼネスト執行部は組合員たちが選択したゼネストを最大限早い時間内に組織して完遂する義務を持っているだけだ。
 組織することができる最大の労働者を組織する。2月12日の代議員大会を終えてから進めたのでは遅い。今すぐ来週から委員長と役員が各産別と地域本部を訪問する予定だ。地域本部別に代議員懇談会を開いて1次的学習と事前討論を行った後に、代議員大会で力強くゼネストを決議するという計画だ。代議員大会以後には中央に「ゼネスト勝利実践団」を、産別と地域本部に「現場ゼネスト勝利実践団」を組織するようにする。この方たちがすべての事業場を訪問して教育宣伝を担当して、ストライキ隊伍への参加勧誘とゼネスト基金1人当り1万㌆を組織するなどの活動をしていく。
〈最近、金属労組現代車支部―現代車非正規職支会間の組織葛藤が起こった。民主労総も24日に立場を発表したのだが、組織内での対立が起こった時、上級団体はどんな原則と立場を堅持しなければならないのか〉
 これまで産別労組で起こった組織内での対立に民主労総が関与した事例はないと承知している。しかし、これもまた間接選挙制だったからだと考える。金属労組にこの問題を一緒に論議しようと言った時、果たして民主労総が産別組織問題に関与してもいいのかという意見を聞いた。間接選挙制ではやることができないことだったかも知れないが、直接選挙制では金属労組組合員たちも私たちに投票したではないか。その要求を受け入れなければならない。関与して指導するのではなく組織の団結のためにどのように問題を解決するのか、論議の場を共につくらなくてはならないと思う。金属労組内部に大きな葛藤があり、この部分がゼネストにどんな影響をもたらすかと心配も多い。しかしお話したようにどんな問題でも組織防衛が、あるいは特定事業の利害関係が作動する瞬間、運動の原則が破壊され運動は力を得ることができなくなる。運動の原則をつかむことが組織が力を持つ動力だ。
 金属労組の件もそのように考える。これまでの歴史と伝統を持つ金属労組を信じる。この問題を解決できない組織であったり活動家たちだとは見ていない。民主労組の立場を堅持していけば充分に協議して解決していくことができると考える。民主労総が上級団体として判決して指示する観点ではこの問題を解決することはできない。問題解決のための協力者の役割をする。
〈委員長―事務総長―首席副委員長とすべて大工場正規職あるいは公共部門正規職労働者出身だ。非正規職闘争や未組織非正規組織化などについての経験と共感が不足だという限界を持ってはいないのか〉
 選挙運動の時にも非正規職労働者を候補に立てなければならないのではないかという指摘が多かった。しかしそれ自体が分裂的思考だと思う。政権と資本は正規職と非正規職を、公務員と非公務員を分離する政策を使ってきた。いつしか正規職であったら非正規職のことが分からないだろうという認識が生じた。しかし労働者の間に分け目は存在しないしすべて融合している。家庭でもお母さんが公務員、お父さんが正規職会社員、息子が非正規職ではないか。政権はわれわれを分裂させて、われわれは政権に洗脳された。大工場正規職が現在民主労総の中心ならば、大工場の正規職が非正規職撤廃闘争に立たなければならない。公務員、公共部門の闘争に成功しようと思ったら非正規職労働者たちが寄り添っていかなければならない。また、3~4月以後には大企業正規職労働者と公共部門労働者たちが非正規職闘争を一緒に闘わなくてはならない。すべての過程は労働者がひとつであることを確認する結果になるだろう。
 これとともに今年民主労総が最も大きな力を示せるのは、組織拡大だと思う。100万名を組織するための組合員加入申請を受ける。民主労総には特別な経路で加入するものだと考える人が多いが、実際にはいつでもたやすく加入することができる。特定の職場に居なくても民主労総を支持して、自分自身が民主労総だと考えて、ゼネスト隊伍を共にしたいすべての人たちが民主労総にすぐ加入することができるようにする。労働組合は市民団体、求職者、過去の労働者、未来の労働者などすべての人たちに開かれていなければならない。力が集まれば何でも可能だ。韓国社会が労働組合への加入を閉鎖的に妨げていたのも政権と資本の論理だ。労働組合加入がどんなに簡単なのかを知らしめる。(以上)

非正規職完全撤廃を求める五体投地行進

 第3次五体投地行進が2月5日に出発した。2月7日までの3日間をかけて青瓦台(大統領官邸)に向かう。この第3次五体投地行進は2チームが途中で合流して青瓦台に向かう。五体投地行進は「非正規法制度全面廃棄」を掲げて行われる。今回の五体投地行進はSK―LG通信非正規職とスターケミカルの解雇問題を中心に置いて、好き勝手な解雇と非正規職を量産する財閥に対する抗議の目的で進められた。
 「五体投地行進」とは仏教の巡礼者などが最上の敬虔さをもって釈迦に帰依する様式を借りたもので、10歩歩いたら地面に両手と両膝、額を当てうつ伏せになり、再度立ち上がって10歩歩いてうつ伏せるということを繰り返して進むものである。
 この五体投地行進の第1次行進は昨年末12月22日から25日の5日間をかけて、キリュン電子の労働者が中心になって行われた。キリュン電子の会社が夜逃げして、社屋で籠城闘争を続けて358日目、空っぽになった現場を守ってきた労働者たちが1年ぶりに街頭に出たのだ。
 キリュン電子の労働者たちはひとつの職場の闘争だけでは非正規職問題を解決することができないとの判断のもとに新しい社会的闘争、非正規職闘争をつくっていくことを決意したのだ。五体投地行進は非正規職を完全撤廃する闘いのための第一歩だ。
 第2次五体投地行進が1月12日に「双龍車解雇者全員復職、整理解雇撤廃」を掲げて双龍自動車解雇労働者が中心になって行われた。第2次五体投地は第1次五体投地の最終地点から青瓦台まで約500㍍さらに前進した。チェジョンジン民主労総首席副委員長は第1次に続いて第2次の五体投地行進に参加した。チェジョンジン首席副委員長は「今民主労総の新執行部の任期開始から1週間たったが、この場所でたくさん泣いた。民主労総は非正規、整理解雇労働者の闘争を抱いて闘う。この15日に民主労総主催で初の集会がある。恐れと躊躇する心は民主労総が抱えていく。ゼネストは始まった。朴槿恵政権の暴走を私たちが防ぐ」と述べた。
 キムドゥクチュン双龍車支部長は「私たちの五体投地は行政部に泣訴したり訴えるのではなく、整理解雇問題に対して立場を明らかにせよというものだ。この闘いでは諦めるということはないのだから敗北というものはないのだ」と述べた。
 今後も五体投地行進は新たな非正規職闘争をつくり出す起爆剤となる運動として力強く進展していくだろう。

LG、SKの非正規職2人が高空籠城に突入

 2月6日、LGユープラスとSKブロードバンドの非正規職労働者2人が、非正規職労働者の生存権および労働基本権保障を要求して、15㍍の高さの広告板に登った。
 LGユープラス全南、西光州顧客センター所属のカンセウン組合員(46)と、SKブロードバンド・仁川桂陽幸福センター所属のチャンヨンイ組合員(43)は6日明け方、ソウル・ソンゴン路所在の韓国銀行向かい側の中央郵便局の15㍍の広告板での高空籠城に突入した。
 彼らは昨年末に解雇撤回をかちとったケーブル通信C&Mの非正規職労働者と同じ希望連帯労組に所属して共に闘っている非正規労働者だ。
 彼らは「本当の社長であるLG―SKが通信非正規職の問題を解決せよ」「LGグループのクボンム会長、SKグループのチェテウォン会長が非正規職を解決せよ」などの懸垂幕を垂らして広告板の上に籠城した。元請け会社であるSKとLGが間接雇用通信非正規職労働者たちの生存権および労働人権を保障せよという要求だ。
 高空籠城のニュースが知らされるとSKブロードバンドとLGユープラスの非正規職労働者600余人は午前10時ころから高空籠城の場所に集結した。第3次五体投地行進団も日程を変更して高空籠城場所に緊急集結した。
 希望連帯労組SKブロードバンド非正規職支部とLGユープラス非正規職支部は「問題の当事者であるSK―LG元請けたちは出て来ないまま、むしろ時間稼ぎで労組の無力化に出ている情況が確認されている」とし、「これと併せて問題解決の責任がある雇用労働部は長期ストライキ事態解決に出ない。昨年5月に提起した『勤労基準法違反』についても時間稼ぎのために結果を発表せずにいる」と批判している。(大森民雄)